逢坂冬馬のレビュー一覧
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ビリヤードに関して「台の上のすべてを把握しようというのは傲慢だし、自分の打つボールが波及するという意識をもたない人間にはゲームに参加する資格はない。しかしだれかが最初の一打(=ブレイクショット)を打たなければならない。打つ意志と狙いを持った人間だけが、恐れずに堂々とそれを打つしかない。」
本作で何度か登場するビリヤードに関するこの発現に、本作のエッセンスが凝縮しているように思う。
自動車の組立工程で部品が落ちたことに気付き、報告が一歩遅くなってしまった期間工。彼には正社員登用の話が聞かされており、後からでも報告せず見て見ぬふりをすることもできた。しかし、遅れてしまいながらも勇気を出して報告し -
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ネタバレ生まれ育った村で、ただ母親や村の人たちと静かに暮らしていくはずだった女の子が、ナチス軍によって全てが崩壊し復讐に駆られて狙撃手になる話。
セラフィマが狙撃手としての心や技術を身につけていく過程で、狙撃の魅力にハマっていき倒した数を自慢する描写は衝撃的だった。
戦争という建前があれば人は人を殺せてしまうということを私たちは体験してこなかったがゆえに、こういった作品で戦争の異常性を知る機会があったのは非常にありがたかった。
最後にセラフィマが女性を守るという目的のために唯一の村人の生き残りであるミハイルを撃つ描写には心を掴まれた。セラフィマはイリーナという存在により一貫して女性の狙撃手となり得 -
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ネタバレ全人類に読んでほしい作品
車の車種としてのブレイクショット、ビリヤードとしてのブレイクショットがかかっている。
全く関係のない様な出来事も、実は繋がっている。
それはすなわち、一つの出来事が連鎖的に何かを波及して影響していくということ。
最終的に、主人公…と言っていいか分かりませんが善人である彼らが報われてよかった。
ルールの裏をかくのではなく、ルールのなかで正々堂々と戦うこと、そしてルールに不満があるならそれを変えるために動くことというシーンが熱かった。
自分のちょっとした発言や行動が、良い意味で誰かや社会に対して影響を与えていけるといいなと思った。
伏線回収がめっちゃ気持ちいい。
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久しぶりに、心が揺さぶられました。
単純に、すごい物語でもあるのですけど、そこから想起させられることがあまりにも重くて深くて、歴史って何だろうか? と考えざるを得なくなります。
特殊な時代、特殊な思想の下、普通の人々の多くは漠然と何が起きており、何がおかしいのか分かっていながらも、体制に迎合し、「喜んで騙される」ことを選択するのです。
その結果、事実は歪曲され、本質は封印され、歴史にはファンタジーも含まれていくのでしょう。
歌われなかった歌、語り継がれなかった言葉、その中にこそ、本当の歴史は埋もれているのかもしれません。
決してミステリ小説ではありませんが、お見事な伏線と回収もあり、思わ -
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ネタバレ圧巻だった。この物語を男性が書いたことが私には衝撃だった。
物語としての展開が面白いのはもちろんのことだが、女性を守るために戦うセラフィマの姿が胸に突き刺さる。
女性であるというだけで受ける屈辱は自分にも覚えがある。その究極の体験とも言える出来事が戦争中には当たり前となってしまうことに絶望が湧き上がる。しかし、セラフィマは幼なじみではなく女性に連帯した。
男性の機嫌をとり、迎合して生きることは楽だと思う。その方が幸せなのかもしれない。しかしその生き方を私は選びたくない、そうはっきりと思わされた。
自分のこれからを考えるうえで、女性として生まれた意味を考えることを忘れないでいようと思える、そ -
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読もうか迷っている人宛に書きます。
①この本を読むなら「今」です
本書は2025年3月発売。私が読んだのは2026年2月ですが、この「リアルタイム感」は今しか味わえない。例えば5年後にこの物語を読んでも面白いだろうけど、「ああこんな感じだったなー」と少し遠く感じてしまうかも。
②『同志少女よ……』とは全く別物です
題材も、構成も、物語の面白いポイントも、全く違います。どっちが優れているとかも比較はできないと思います。下手に前作の印象を抱えたまま「あれを超えられるか!?」という読み方をするよりは、一旦忘れて0から読んだ方が楽しめるはず。その上で、どっちが好みとかはもちろんあると思いますけどね -
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ネタバレセラフィマの故郷は、ドイツ軍によって壊滅した。
母や村人は惨殺された。赤軍兵士・イリーナに拾われたセラフィマは、復讐のために狙撃兵になることを決意する。立派な狙撃兵となって、独ソ戦の最前線へと華々しく赴く。その先に見えたものとは…。2022年本屋大賞受賞作。
狙撃かっけぇえぇぇぇ。
涼やかにクレバーに、サイレントな一撃必殺。イリーナ教官の過酷な訓練で一人前の狙撃兵となった同志少女たちの熟練感がエグい。雄々しく野卑な歩兵集団の喧騒の中で、魔女たちは凛として気品があった。命中の一瞬に全てをかけるので、戦闘描写はとても短い。塹壕や銃眼の影で待って待って待つ。忍耐と静寂の戦いの中で光る職人技に思わず -
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第二次世界大戦下、ナチス・ドイツがソ連領に侵攻した独ソ戦を背景に、故郷の村が襲撃を受け母親を含む村人を虐殺された少女セラフィマがソ連赤軍の女性狙撃兵として復讐を胸に戦場に立つ姿を描く物語。戦争小説のフィクションですが独ソ戦という史実を基にしており、ヒトラーやスターリン、実在した伝説的女性狙撃兵リュドミラ・パヴリチェンコなどの名前も。
第5章 決戦に向かう日々ではセラフィマを含む幾度の凄惨な戦場を経験した女性狙撃兵たちがリュドミラの講演に参加し質疑応答をする場面がある。「これまでプロパガンダとして国内外のインタビューに答えてきたが、当然ドイツ側も記事を見ることになるから真に胸の内を語ったことはな