逢坂冬馬のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読まなきゃいけないから読むという本ではなく、引き込んで読ませる。
ファンタジーでは戦う意義を見出せるが、実際のところは、この世界に、悪人は誰なのか、という答えすらない。戦場では死ぬとただの無であるし、理不尽しか存在しない。
文字なのに、めちゃくちゃ怖いものが迫ってくる。
しかし、読者だからで、実際は怖いとすら思う前に、死んでいく。1回の狙撃にしかならず、特に撃ってごめんとか、辛いとかもない。撃たれる意味も撃つ意味もない。
やってることは同じになのに、平和な世の中に人を殺すのと、戦争している時に人を殺すのは、全く意味が違うと感じる。ファンタジーのように終わりもなく、戦友が1ミリの油断でいな -
Posted by ブクログ
国産SUV車「ブレイクショット」を軸に話が展開されていく現代版の青い壺のような小説。伏線の張り方と回収が見事で、ナインボールのようにブレイクショットが手球となって個々の話を繋げひとつの物語となっていく。
それぞれの話はSNSの炎上やそれによる私刑ともいえる断罪、集団詐欺、グレーなマルチ商法的サロン、過剰なノルマ主義など世相を反映した話題が取り上げられる。そしていずれも天国か地獄かを決めるのは紙一重で、善良さを保つか忘れるかによることが描かれる。匿名性が高いときやグレーゾーンなときは言動や行動が過激になりがちで自分を見失ってしまう。
善良な人たちがすべてハッピーエンドを迎えるエピローグは圧 -
Posted by ブクログ
いやー、もう最高!騙されるのって気持ち良い!
でもまぁ、騙されるって表現は語弊があるかも。
勝手に物語に熱中しすぎて、勘違いしてただけだから。
架空の車、ブレイクショットの因縁が多方位にわたり、人生を繋げて行くストーリー。
いやー、エピローグは本当、微笑みながら、これもあれも?という感じだった。
ページ数も多く、途中暗い話だし、しんどいなぁと思うところもあったかもしれないが、読後の爽快感が半端ない。伏線とかって、不自然だったり、見え見えだったりすると冷めるけど、これは全くなかったなぁ。
作中にでてきた、門崎と後藤のやりとり。
「ダチ公」、、、
これを目指すべきだったんだよなぁ。
鈴木世 -
Posted by ブクログ
人は何の為に戦うのだろう?
多くは、何かを守る為だと思う。
その何かは、大切な家族だったり、自分の住む故郷、
、あるいは誇りといった所だろう。
第二次世界大戦の独ソ戦が舞台。
主人公である少女セラフィマは愛する家族と仲良くなっての良い村人と平和に暮らしていた。セラフィマは将来は外交官を夢み、今は戦闘状態でもあるドイツとも仲良くなれる。そんな、希望を描いていたのだが、
その希望はナチスドイツの突然の侵略に打ち壊される。両親も殺され自身の命も危うい中、自国ソ連の軍隊の登場により、急死に一生を得る。
そして、その舞台を指揮するイリーナ。
彼女は唯一生き残ったセラフィマに対し、優しい言葉をかける、、 -
Posted by ブクログ
フィクションとして手に取った作品であったが、実在の女性狙撃兵や史実に基づく描写が随所に折り込まれており、物語の背景に広がる現実の重みを強く感じさせる作品であった。
戦中の出来事を善悪や正誤といった単純な枠組みでは扱いきれず、価値観が揺れ動き、時に歪められていく様子が印象に残った。極限状況下で人間が変質していく過程や、そこで生まれる複雑な感情の連なりが丁寧に描かれ、その異常さが胸に迫る。
本作を通じて、これまで十分に光が当てられてこなかった女性兵士の存在や、戦時下における女性の置かれた境遇が改めて可視化されたように思う。単に“女性が戦った”という表層ではなく、その背後にある歴史的背景や社会のま -
Posted by ブクログ
【短評】
二冊目となる逢坂冬馬は、早川書房創立80周年記念作品にして山本周五郎賞及び直木賞候補作に選出された意欲作だ。先日読んだ『同志少女よ、敵を撃て』の印象が強く、戦記物を主戦場とする作家という先入観を抱いていたが、現代物もイケることを証明してくれた。相応のボリュームのある作品だが、かなり早めに読み終わったのが、その証左であろう。
架空のSUV車「ブレイクショット」を巡る8つの物語。
それは「ブレイクショット」の生産工場に勤める期間工の物語であり、マネーゲームに興じるヘッジファンド役員の物語であり、地球の裏側で銃把を握る少年兵の物語である。物語は複雑に交差し、混迷を深め、思いも寄らない形で -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルだけは聞いたことがあって、てっきりファンタジー系か比喩表現としての「撃て」だと思っていたら、ガチなやつでびっくりした。
独ソ戦(第二次世界大戦)のロシアの女性狙撃手の話。
かつ、戦争系でよくある人格が壊れてしまったという話ではなく、(いや、そうなんだけど、視点が違う?)女性の社会での立場や扱いについてを考えさせられる話だった。
本書にでてきた「戦争は女の顔をしていない」も読みたくなってしまった。
この作者は女性なんだろうか、男性なんだろうか。
この題材でそこに視点を持っていくとは…と若干驚いた。
ただ、セラフィマが自分が戦う目的を「女性を守るため」とした理由が希薄にも感じて、ちょっと唐 -
Posted by ブクログ
エピローグで泣いた。後書き読んで参考文献読んでリュドミラって本当にいたの??ってなった。
最後の要塞の戦いで泣いた。ユリアンとマクシム隊長でグッときた。セラフィマとの旅。イリーナの愛。戦争の虚しさ。ミハイル。。。
個人的にはオリガがマジで好き。カッコいい。そして悲しい。優しい。
イェーガーとの戦い。ユリアンの芸がいきるあたりの演出からオリガまで、エンターテイメントとしてのフィナーレ。そこからミハイル、エピローグまでの、私たちが本当に心と頭に刻まなければならぬ真実のこと。
とにかく進むにつれてめくる指が止まらなくなった。
英雄が英雄であるのは世の中がそれを求めるときだけ。英雄もまた1