逢坂冬馬のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『ことばの白地図を歩く』。若者向けにゲーム仕立てでおもしろく読みやすいけれど、内容は驚くほど専門的。書いたのはどんな人なんだろう?と気になって経歴をみると紫式部文学賞を受賞した『夕暮れに夜明けの歌を』の著者であり、あの『同志少女』『歌われなかった海賊へ』の逢坂冬馬さんと姉弟だと知り驚いたり納得したり。
「有里先生」と「逢坂さん」。3歳ちがいのおふたりは対談の中でお互いをこのように呼び合い、「文学」「作家という職業」、「戦争や武器」について、専門家同士としてリスペクトしつつ、存分に語り合う。ご両親のエピソードも紹介されるがこれがまた
言葉かけと言い距離感といい、「親の背を見て子は育つ」の諺どおり。さて、私達も感心してばかりではなく同じ時代に生きているものとして、こんな社会だからこそきちんと次世代に伝えていく努力をしていかなければ。 -
Posted by ブクログ
純血主義や優生思想、ポスト・トゥルース、監視社会、マイクロアグレッションなど、近現代社会に蔓延る諸問題を牧歌的なイメージを持たれている犬の違う角度を通して描こうとしている連作中篇で、ハッとさせられた場面も多くとても面白く読みました。一方で前作と同様、ひとつの小説としては情報が少し詰め込まれている印象はあって、それが“読むことで勉強させられている”感に繋がっているように私には思える。勿論フィクションを通して何かを知り、自分を更新していくことはとても大切なことで諦めてはいけないことではあるのだけれど、小説とこちらの間にある僅かな余白の領域だけは、読み手を信じて残しておいて欲しい。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ戦争と犬。時代を超えて戦争が起こした犬と人間の関係について書いた四つの話。最初の野良犬の話がとても好き。野良犬ちゃんたちのテリトリーがあって、なにかあれば異常あり!と吠える。日本が築いてきた犬との関係性がみえる。外国は犬を人間にとって有用にしようとしているのに対して、日本は自然なままの犬たちを生活に受け入れてたのがわかる。野良犬がウロウロしているのは怖いかもしれないが実際に外国人教師は窮地を助けられ、愛玩犬は野良犬たちと行ってしまった。書いてある通り、愛玩犬たちは自由を求めていたのかもしれない。集団としての人間と犬の関係が戦争や外国を取り入れることで変わっていく。その変換が読んでて苦しかったし犬の自由ってなんなんだろうなって考えてしまった。その話の続きとしてドーラクにつながるのも胸熱だった。戦争ってつらいね、ハチ公のところでは実際にはなにが真実かはわからない、ドーラクでは犬を殺すことで戦争に貢献しよう、リッキーでは戦争に怯える少女。加えて無意識的な人種差別に悩む男の子。犬を通じて時代背景における犬と人間の関係を知ることができた。本当に興味深く読ませていただきました!
-
Posted by ブクログ
ふと、小説はときに、小説という馴染んだ方法をもってして、これまで考えもしなかった歴史の側面を教えてくれる道具なのかも知れないと思った。
逢坂冬馬さんの作品はこれまですべて拝読しており、例に漏れず今回も書店で見かけて迷わず購入。前作『ブレイクショットの軌跡』を読んだ際までは、この著者の魅力は「緊迫感」の描き方だと思っていたが、本作を読んで考えが一新した。
著者は、現代の日常では思ってもみないような視点、それも暗い視点を我々に投げかけ、「ほら、こんな側面もあるんだよ」と、存在感の大きな警鐘を鳴らす。この色が押し付けがましいとただの教科書になるのだが、これがどっこいフィクションとのバランスが抜群に巧みなところが、私が今回改めることになった著者の魅力だった。
本作では特に3編目『犬たちの戦争』が重い。故に好みだったが、印象深い台詞は2編目にあった。
─── それを聞いて私は感心しました。事実に即して物事を整理するのではなく、美しき物語を受容するためにあらゆる努力を惜しまない人間のあり方について、です。─── -
Posted by ブクログ
「犬」を軸に語られる、明治から今和の日本を舞台にした「戦争」と「個人」にまつわる物語。
犬とは会話ができないから、何を思って行動しているか、本当のところは犬にしかわからない。
人間は犬を愛しながらも、特にそこまで好きではないとしても、嫌いだとしても、どうしても人間の都合で考える。「忠犬誕生」は、それが暴走したような世界。もちろんあの忠犬の話。ただの犬であったハチに託されてしまった物語が、あの時代、戦争に向かっていく時代のなかでどう消費されていったかが描かれていて、目線を変えて考えること、「考える」それ自体の意味を痛感した。
世界が大きくうねる時代にあっては、その時代の空気によって犬への見方も接し方も変わる。犬を通して、人間がいかに「個」として生きるかを問うような作品だった。
個人的には「犬と戦争」が一番、読後の重さがあって、そこからの最終章「スランプ」への流れが素晴らしく良かった。
人間が犬と「良き友人であろう」とする態度、そういう態度で生きようとしたら、争いは、少しでも減らすことができるかもしれない。
大好きな作家さんの4作目、期待大で読み始めたが、期待し過ぎたかも。それを差し引いてもだいぶ面白いんだけど。。 -
Posted by ブクログ
逢坂冬馬さんの新作は4話構成の連作短編集。明治初期から令和までの4つの時代を辿り、日本と戦争の関係を背景にしながら、犬と人間の関わりを描いています。
逢坂さんは、これまでも独ソ戦でのロシアの女性狙撃手、ドイツのナチ体制に敵対した若者たち、戦争を背景にした現代日本を描いていますが、本作でも繰り返される戦争が映し出されます。
・明治初期、開成学校(後の東京帝大)に赴任した農学指導者の英国人が直面する異文化。急速に近代化が進む反面、野犬排除が…。犬への認識の対比。
・昭和初期、渋谷駅で主人の帰りを待つ老犬(ハチ公)。新聞記事の美談に始まり、様々な人の思惑や時代背景に呑み込まれていく実像とのズレ。
・太平洋戦争期、戦局の悪化で行われた「犬の供出運動」。軍国少年の視点で描く、愛犬を国に差し出す理不尽さ、苦悩と抗い。
・令和の時代の高1女子と飼い犬。前3話のテイストと異なる印象で、不登校の遠因には戦争の恐怖が背景に…。若者と犬の苦しさと回復。
ゆるくつながる連作なのですが、第1話の開成学校での牧羊犬の能力に、学生が驚愕する描写が新鮮で、この話だけで長編を読んでみたい気にもなりました。また、第4話もより若者ウケするであろう物語で、長編にする面白さを勝手に想像しました。
犬は人との親和性が高く従順ゆえに、人を癒し愛されもしますが、その能力を利用されてもきたのですね。犬が人間の歴史に翻弄され、人間によって命運が左右されてきた事実に想いを馳せます。
どの話も、傷ついた者同士(人間と犬)が寄り添う描写から思うのは、互いの幸せな共存の在り方で、人はいつの時代も己の傲慢さを晒してしまう生き物なのだと痛感します。戦争もまた然りですね。 -
Posted by ブクログ
明治初期から令和の夏まで、時代を超えて綴られる日本人と犬の物語。時代とともに少しずつ変化していく、人間と犬との関係性が実に面白い。
個人的に度肝を抜かれたのは、最初の短編。文章から当時の様子がありありと伝わってきて、日常に常に漂う緊張感は、現代を生きる自分にとって、まるで異世界のよう。そんな時代の日本人にとって、犬は今のような身近な存在ではなかった。犬をペットとして可愛がる英国人教師の目を通して描かれる日本人の姿も興味深い。海外の文化を受け入れながら、少しずつ変わっていく日本人の意識。犬という存在を軸にしながら、当時の日本社会そのものが浮かび上がってくるのが面白かった。
戦争を題材にした作品で知られる逢坂冬馬さん。本作も戦争と無縁ではないけれど、これまでとはまた違った切り口で、人間と犬の歴史に挑んでいる。犬の物語でありながら、そこに映し出されるのは日本人の価値観や社会の変化、そして時代に翻弄される人々の姿でもある。
逢坂さんの新たな一面を垣間見ることができた一冊。犬好きはもちろん、歴史や日本人の意識の変遷に興味がある人にも読んでほしい。 ★4.0 -
Posted by ブクログ
ネタバレセラフィマ
セラフィマ・マルコヴナ・アルスカヤ。イワノフスカヤ村に住む少女。愛称フィーマ。村一番の狩人。最高司令部予備軍所属、狙撃兵旅団、第三九独立小隊。
アントーノフ
セラフィマの隣人。
エカチェリーナ
セラフィマの母。
エレーナ
セラフィマの近所のボルコフ家の娘。
ゲンナジー
村人。
ミーシカ
ミハイル・ボリソヴィチ・ボルコフ。エレーナの兄。村で唯一セラフィマと同い年の男の子。砲兵士官。イワノフスカヤ出身。曹長。少尉。
ナターリヤ
アントーノフの妻。
フリードリヒ
セラフィマが教育を受けた高校の教師。亡命ドイツ人で元ドイツ共産党員。
ヒトラー
ヒンデンブルク
軍人。
リュドミラ・パヴァリチェンコ
ドイツ兵を二百人殺した女性。セヴァストポリ要塞で戦っている女性の狙撃兵。イリーナのパートナー。
マルク
セラフィマの父。内戦終結後、一九二三年に帰還し、翌年に死んだ。
イェーガー
額に傷のある男。エカチェリーナを撃った狙撃兵。
ドイツ軍士官
イリーナ・エメリヤノヴナ・ストローガヤ
女性兵士。上級曹長。中央女性狙撃訓練学校の教官長。
元狙撃兵。リュドミラのパートナーである狙撃兵として戦っていた。迫撃砲で右手の指を失った。
フランツ・クラーマー
シャルロッタ・アレクサンドロヴナ・ポポワ
モスクワの工場労働者の娘。イリーナの一番弟子。狙撃訓練学校生徒。青少年射撃大会モスクワ王者。最高司令部予備軍所属、狙撃兵旅団、第三九独立小隊。
オリガ・ヤーコヴレヴナ・ドロシェンコ
狙撃訓練学校生徒。ウクライナ出身。コサック。NKVDの手先。
ヤーナ・イサーエヴナ・ハルロワ
狙撃訓練学校生徒。生徒の中では最年長。最高司令部予備軍所属、狙撃兵旅団、第三九独立小隊。
バロン
ジャーマンシェパード。
アヤ・アンサーロヴナ・マカタエワ
狙撃訓練学校生徒。カザフ人。山岳地帯の猟師。ものすごく人付き合いが苦手。最高司令部予備軍所属、狙撃兵旅団、第三九独立小隊。
ポリーナ
狙撃訓練学校生徒。最初の脱落者。モスクワ出身。電信隊へ転属。
スタハーノフ
狙撃訓練学校生徒。
イワン
狙撃訓練学校の近所に住む。牧畜を営んでいる。
ノーラ・パヴロヴナ・チェゴダエワ
本校の先生。女性の狙撃兵教官。中央狙撃兵訓練学校の校長。
ハトゥナ
NKVD。秘密警察(チェーカー)。
ニコラーエフ
少佐。ミハイルの上司。
ミハイル・トゥハチェフスキー
赤軍近代化の立役者にして輝かしい戦功を持つ軍事的天才。処刑された。
アレクサンドル・スヴェーチン
卓越した戦術理論の研究者。処刑された。
スターリン
ドミートリー
ミハエルの部下。
イーゴリ
歩兵大隊長。少佐。
ゲオルギー・コンスタンターノヴィッチ・ジューコフ
上級大将。革命戦争以前からの名将。元帥に昇格。
イオン・アントネスク
ルーマニアの独裁者。
タチヤーナ・リヴォーヴナ・ナタレンコ
ターニャ。第三九独立小隊の一員。看護師。
ワシーリー・チュイコフ
スターリングラードを守る第六二軍総司令官。中将。
マクシム・リヴォーヴィッチ・マルコフ
上級曹長。第六二軍第一三師団、第一二歩兵大隊長。優男。
ボグダン
第六二軍第一三師団、第一二歩兵大隊付き督戦隊。
フョードル・アンドレ〜ヴィッチ・カラエフ
第六二軍第一三師団、第一二歩兵大隊上等兵。大男。妻帯者。
ユリアン・アルセーニエヴィッチ・アストロノフ
第六二軍第一三師団、第一二歩兵大隊上等兵。狙撃兵。
サンドラ
スターリングラード市民。二〇代半ばの女。水を汲んで、被占領地まで帰っていく。
セリョーシャ
サンドラの夫。
ニコライ
六歳ほどの男の子。
マーシャ
六歳ほどの女の子。
ヴェーラ・アンドレーヴナ・ザハロワ
工科大の学生。
アンナ・アンドレーヴナ・ザハロワ
工科大の学生。ヴェーラの妹。
マンシュタイン
ドイツ軍の元帥。
フリードリヒ・パウルス
敵第六軍の司令官。将軍。
ハンス・イェーガー
ドイツ国防軍人。
クルト・ベルクマン
ニコライ、ボグダンを撃った狙撃兵。
ヴァシーリィ・グリゴーリエヴィチ・ザイツェフ
ユリアンに狙撃を教えた。凄腕の狙撃兵で、元はウラル山脈の狩人。
ニキータ・セルゲーヴィチ・フルシチョフ
エリョーメンコ大将付き政治委員。
ワシーリー・チモフェーヴィチ・ヴォリスキー
第四機械化軍司令。少将。
アデレ
ドイツの女給。
ヤーコフ・パヴロフ
第一三歩兵師団。軍曹。
クルーゲ
中央軍集団司令官。
ツァイツラー
参謀総長。
イリヤ・エレンブルグ
詩人。
イワン・レオニードヴィッチ・スミルノフ
曹長。
エリザヴェータ
パヴリチェンコの女性護衛兵。
エレノア・ルーズベルト
フランクリン・D・ルーズベルト大統領夫人。
ユルゲン・ナイマン
ドイツの狙撃兵。
マルク
セラフィマの父。
レオニード・ウラジーミロヴィチ・ピチュクノフ
護衛部隊所属伍長。
ヨハン
パンツァーファウストでセラフィマを撃とうとした子。
ダニイル
イワノフスカヤ村の十歳の少年。
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ