柏木伸介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
柏木伸介『革命の血』小学館文庫。
この作家の作品を読むのは3冊目であるが、ハードボイルド作家というイメージは余り無かった。本作では全面的に『ハードボイルド』を打ち出しているようだったので、読んでみることにした。
最初は主人公が軽い感じがしたのだが、読み進むうちに堂場瞬一の小説にも似た公安物の正統派のハードボイルド小説と言っても良い作品だと思った。1989年とその30年後の2019年を行き来するという構成で、主人公の沢木了輔が1989年では『僕』、2019年では『私』というように一人称を変えているのは著者の心遣いだろうか。
舞台となる1989年には既に共産主義を標榜する学生運動や反政府の過激派活動は下火になっていたように思う。確かに1980年代前半の首都圏の大学キャンパスでは革マルや中核の文字の入ったヘルメットを被った危ない若者を多数見掛けたが、地方の大学ではそういう若者の姿は皆無であった。中にはネクラのオタクっぽい、もしかしたら爆弾でも作っているのではないかというアブナイ風貌の学生も居たし、何年間、大学に通ってあるのかというようなオッサン学生も居た。
現代の日本は経済的にも疲弊し、もはや後進国と呼んでも良い状態であり、社会保障の負担はより一層、国民一人ひとりの肩に重くのしかかっている。不平不満は口にすれど、反体制的な過激な活動は目にすることが無い。本書では今では絶滅危惧種となった革命を夢見る様々な戦士たちが、生き延びるために誰かを犠牲にし、体制に与していく姿を描いているようだ。
2019年、神奈川県警の元公安刑事の吾妻仁志が自宅付近で爆殺される。犯人は吾妻が生前に追い掛け続けていた過激派組織である日本反帝国主義革命軍のメンバーではないかと思われた。しかし、日反は爆弾闘争を繰り広げた果てに幹部らの中東への逃亡や内部分裂により休眠状態であった。学生時代に吾妻から公安のスパイにスカウトされ、現在では自らも公安刑事となった沢木了輔は様々な手を尽くし、事件の捜査に奔走する。
30年前の1989年に横浜総合大学の学生だった沢木了輔は公安刑事の吾妻仁志からの指示で、大学内の日反組織に潜入していた。そんな中、担当教官が沢木の目の前で、桝田邦麿という日反のテロリストにより爆殺される。沢木はさらに吾妻からの命令で桝田の娘とされる月原文目に接近し、文目も巻き込んだ潜入プロジェクトに深入りするが、悲劇的な結末を迎える。
公安刑事となった沢木は30年間の日反絡みの疑問を解決するために形振り構わず、捜査を続けるが、そこには国家レベルの陰謀が待ち受けていた。
本体価格900円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
ゴリゴリの「スパイもの」であり、殺人は普通に起きるわ、
派手な銃撃戦もあるわ...の割には、
不思議と「洒脱な」印象を受ける。
松田優作より伊勢谷友介が似合う感じか(^ ^
前作に続き、話がでかすぎて(^ ^;
国際情勢に疎い私は、付いていくのが大変(^ ^;
米兵による中国人少女レイプ事件に端を発し、
報復殺人、空き缶爆弾、中国艦隊が...と続く米中対立。
現在を舞台に、二大大国を巻き込む「横方面」の広がり。
のみならず、「全共闘」「70年代安保」の残影を引きずり、
警察と公安、警視庁と神奈川県警の根深い対立という
「縦(時間軸)」のスケールもでかい(^ ^;
さらにそこにマトリが絡んでくる上に、
中国残留孤児とか、危険ドラッグの蔓延とか、
ネタとしては「これでもか」のてんこ盛り(^ ^;
片手間に読んでると消化しきれない内容の濃さ(^ ^;
それでも破綻なく、読み物として成立している。
これぞ著者の「筆力」というものなのでしょう(^ ^
「読み応え」という意味では、文句なく一級品(^ ^
ただ、続けて読む気にはならないかも(^ ^;
「次は軽めのものを読むかな...」と(^ ^; -
Posted by ブクログ
ネタバレ生活保護で優遇なんかされてない。
受給率が高いのは、それだけ在日のレベルが低いからだ。
日本に差別がある証拠だよ。
このセリフ自体は、ストーリーに大きく関わるわけではありません。
けど、これを読んだ時、頬を引っぱたかれたような強い衝撃がありました。
勤めを果たしていない人、税金も支払っていない人……帰る国がある人に対して、使われるのはすごくやるせない気持ちだし、嫌だと思う。
もちろん本当に酷いことをする人もいるのでしょう。
でも、今私にうっすらとある「嫌だな」というこの気持ちは、どこから来ているんだろう。
実際に自分が加害されたわけではないのに。
これを読んだ後、本当にこれは私の感情?と疑問の気持ちが抑えられませんでした。
物語の結末が、あまりにも急だという感想を見ました。
私はこの終わり方がとても好きです。
そうだ、個人というものはあまりにも小さくて、世界が敵に回った時、あっという間に潰されてしまうんだなと言う恐怖と、そこにあった真心の尊さが消えてしまう悲しさを感じたから。
主人公は自分が選んできた道に最後阻まれて。彼は選ばざるを得なかった先であの結末にいたり。
因果応報とでも言うんでしょうか。
それでも、言いたい。
あなたの居場所はどこにも無いなんて、そんな辛い話、あっていいもんか! -
Posted by ブクログ
作中で言及されませんがタイトルの「ヘンチマン」は子分、手下、側近、家来みたいな意味の言葉なので、県政のフィクサーともいわれるベテラン県議の手下(名目上は秘書)として動く主人公をさしているんでしょう。
本編ですが、中学生の娘を残して失踪してしまった母を主人公が捜索するの主軸です。ほとんど手がかりな無い中、かすかな点を拾い集めて真夏の松山市を主人公が駆け回ります。捜索の過程でタイトルにある本陣村の伝説が浮上します。基本的には足で稼ぐタイプの探偵譚。タイトルから想像すると閉鎖的な村が舞台みたいですが、舞台は完全に市街だし、いたって現実的。オカルトに行きそうで行かないので、ややタイトル詐欺的なところもあるかな。 -
Posted by ブクログ
古書店で、何の予備知識も無く購入。
「このミス大賞」の本だから、まぁ面白いだろう、程度(^ ^;
内容は...公安で凄腕のスパイ狩りとして知られる男が、
「一週間後に起こる」とだけ情報が入った
北朝鮮のテロを阻止できるかどうか...というのが大筋。
世界の諜報部員を相手に、腹を探り合いつつの情報戦。
警察内部の者すら信用せず、独断専行で動く主人公。
無理やりバディを組まされた美女との丁々発止のやり取り。
上にゴマをすることしか眼中に無い無能な直属上司。
まぁ、こういうハードボイルドの「お約束」を踏まえ、
王道ど真ん中を進みながら、内容はかなりヒネくれている。
主人公ではないが、本当に「誰を信用していいのか」状態(^ ^;
読み終わってみても、全てのナゾが解決する訳ではない。
結局は「釈迦の掌か」的な、諦念、無力感も残る。
が、その分、リアルはこんなもんなんだろうな...とも(^ ^;
世の中は、狐と狸と狢とモモンガァの化かし合いである。
あと、言うだけ言うと、作者は「女性」に神秘を求めすぎか(^ ^;
所々「DTの妄想」っぽい部分も見受けられるような...(^ ^;