佐野広実のレビュー一覧
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市内にある複数の高校に届いた脅迫状。
警察は捜査に乗り出すが、ただ一校だけは脅迫状は届いてないと言う…
何故なのか?
届いてないという長澤高等学校が母校である加賀美刑事は、直接学校へ行き校長に会うことに…。
違和感が残る。
見えないモヤモヤが何なのか。
これまでの校長の経歴を辿ったり、学校内での事件・事故などを探っているうちに見えてきたものは…。
西山玲子校長が、とんでもない人物だということがわかる。
言いなりになる配下を使って邪魔な者を排除していく。
学校の方針に従わない者がいるのが我慢ならないとは、これが上に立つ者なのかと怖気を感じた。
校長がというよりも、それ以前に母であったということも驚きである。
母校という言葉を使うことは滅多になく、悲しいかな、小・中・高と校長先生の記憶はない。
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『母校』という言葉は、大体、その時代に良い思い出がある人が使う言葉だと思っている。
私は、大学以外の学校生活に良い思い出を思い出せない人間だから、母校という言葉を使ったことがあったかなとタイトルを見た時に、ふと考えた。
佐野さんの作品は、『誰かがこの町で』『氾濫の家』と、人間誰しも抱えている後ろ暗さが、表面に出てしまった人間を描いた作品を描くのが上手な方だと感じていて、好きで楽しみにしていた。
私は凄く好きな作品だった。
受け取る言葉の表裏に何の疑問を持たず、言われた通りに動くことは楽なのかもしれないけれど、何も考えずに動くことの怖さに気付かない集団を外から見た時の怖さが素晴らしかった。
学校を出たら社会。
搾取されるばかりで終えたくない。
ただ暗いだけではなく、その中でも繋がりが上手く描かれていて、気分良く読み終えた。 -
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佐藤広実『シャドウワーク』講談社文庫。
最近、気になっている作家の1人である佐藤広実によるミステリー小説。
2025年11月から某有料衛星放送で5回完結のドラマになるらしく、主演を務める多部未華子の写真の付いたオーバーカバーが付いていた。多部未華子の役は夫の暴力から逃れ、ようやく安全なDVシェルターに辿り着いた宮内紀子なのだろうか、それとも自らも同じ警察官の夫の暴力に悩まされながら溺死した女性の事件を追う女性刑事の北川薫なのだろうか。
前半こそは、夫のドメスティック・バイオレンスに悩まされる女性たちと、それに関連する不審死事件を追う正義感の強い女性刑事を描いたミステリー小説かと思うのだが、読み進んで行くと、頭の片隅から消えていた『シャドウワーク』というタイトルを思い出し、その意味が少しずつ見えてくるのだ。そして、いよいよ後半からは20年も続く『持ち回り』と呼ばれる『シャドウワーク』について描かれる。
サスペンスフルな見事なプロットと、よく思い付いたなと感心するような設定で、非常に面白いミステリー小説に仕上がっている。さらには一筋縄では終わらない驚愕の終盤……
繰り返される夫の暴力から命がけで逃れ、運び込まれた病院の看護師である間宮路子の紹介で、江ノ島の近くにあるDVシェルターに潜り込むことが出来た宮内紀子。そこは志村昭江と間宮路子が共同運営する4人を上限に製パン会社の社員寮を装った秘密のDVシェルターであった。
一方、夫である警察官の北川晋一から日常的に激しい暴力を受けていると訴えたことで、警察組織からは裏切り者と糾弾され、所轄署に飛ばされた刑事の北川薫は、今井美佳子という女性の溺死に疑問を持ち、新人刑事の荒木と共に捜査を行う。薫は、美佳子の元同居人である松原幸次に接触し、事情を聴くが、その松原も死亡してしまう。
さらに捜査を進める薫は、美佳子が間宮路子の紹介でDVシェルターで暮らしていたことを突き止め、そのDVシェルターに暮らす美佳子の知り合いに事情を聴こうとするが、自宅近くで何者かに襲われ、重傷を負う。
本体価格870円
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祖母の形見は血塗られたシャネルスーツ。
ココ・シャネル、エヴァ・ブラウン、アドルフ・ヒトラー、そしてひとりの日本人女性――
占領下のパリに秘された謀略とは?
祖母が遺したのは、血に染まったシャネルスーツの謎を解くため、フリーライターの結城真理は疎遠だった母とフランスに赴く。祖母は第二次世界大戦中、外務省一等書記官の娘としてナチ占領下のパリにいた。その足跡を辿ると、驚愕の事実が。歴史上のある人物を巡る謀略が浮かび上がったのだ。
約80年の時を経て、祖母が胸に秘めていた秘密が明らかになっていく歴史ミステリー。
とても面白い、一気読み間違いなしの1冊(*^^*) -
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祖母が遺した血に染まったシャネルのスーツ
このスーツの謎を追い、疎遠だった母とフランスに飛ぶ結城真理
祖母の久能千沙は第二次世界大戦中、外務省一等書記官だった父と一緒にナチ占領下のパリに住んでいたのだった
はい!大好きな歴史ミステリー♪
しかもシャネルスーツの謎を追う2014年の真理のパートと第二次世界大戦中のパリに暮らしていた祖母、千沙のパートが交互に進む〜
ニヤニヤ…(笑)
さらに、ココ・シャネル、ヒトラー、エヴァ・ブラウン、早川雪洲…
もう興味がない訳がない
物語後半、ヒトラーの愛人エヴァ・ブラウンがいるオーバーザルツブルクにあの人が登場した時には思わず声を上げちゃったよ~
どうしてこんなことを思いついちゃうわけ?
そして当時の実在した人物や時代背景についての下調べに心が震える!
物語はフィクションだけど、もしかしたら実際にこんなことあったんじゃない?って思っちゃう…
やっぱり作家さんってすごい!
そしてこれぞ歴史小説の醍醐味〜
歴史に翻弄されながらも、自分の信条を貫いた女性たち
一着のオートクチュールを巡るラストには涙した…
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佐野広実『誰かがこの町で』講談社文庫。
佐野広実の小説を読むのは第66回江戸川乱歩賞受賞作の『わたしが消える』と『戦火のオートクチュール』についで3作目となる。『わたしが消える』が非常に面白く、『戦火のオートクチュール』も高いレベルの小説であることに驚いた。
さて本作はどうだろうか。近々、某有料衛星放送でドラマ化されるらしく、味のある表紙イラストを隠すかのように俳優たちの写真のオーバーカバーが掛かっていた。
本作は地域の同調圧力をテーマにした見事で読み応えのあるサスペンス・ミステリーであった。程度の差はあれど、日本のどこの地域でも起きている同調圧力の嫌な現実が描かれている。良く言えば地元愛なのだが、地域の住人たちが結託し、盲信的に地域を守るということに執着する様子には背筋が寒くなった。
弁護士の岩田喜久子の法律事務所で調査員として働く真崎雄一は名古屋での仕事を終え、事務所に戻ると岩田から直々に奇妙な依頼を受ける。19年前、岩田が渡米していた時に一家で失踪した同級生の望月良子の娘を名乗る望月麻希という女性が岩田の事務所を訪ね、自分の家族の行方を知りたいと言うのだ。真崎は望月麻希が本当に望月良子の娘であるかを調べるために半年前まで麻希が暮らしていたという施設を訪ね、麻希にも直接事情を確認する。
突然、場面は変わり、木本俊樹と千春の5歳になる子供の貴之が行方不明になり、何者かに殺害され、変わり果てた姿で見付かる。この事件は望月麻希と関係があるのか……
真崎は望月家が埼玉の与久那町鳩羽地区の高級住宅街に暮らしていたことを聞き、現地へと向かう。その頃、麻希も自身の家族のことを調べるためにその住宅街を訪れていた。真崎が高級住宅街のことを調べるうちに19年前に起きた木本貴之殺害事件を切っ掛けに、その住宅街での住人たちの歪んだ行動が続いていることを知る。
作中に描かれるゴミ出しルールを監視するというのは自分もかつて経験したことがある。30年以上前に東北の田舎町の新興住宅地に家を買い、住み始めて数年後、ゴミの分別ルールが厳しくなった。今では当たり前に燃えるゴミとプラゴミ、燃えないゴミとアルミ缶、ペットボトル、新聞紙、段ボールなどの曜日毎の分別である。その地域には元々20軒くらいが暮らしていて、そこに100軒余りの新築住宅が立ち並んだのだ。分別が厳しくなると、新興住宅地が出来る前からの住人で区長が勝手にゴミ袋への記名を決め、住宅地内のゴミ停に出されたゴミの袋を開け、チェックし始めたのだ。そして、ゴミの分別の違反があると住人に直接注意するなどし、新興住宅地の住人からは問題視されていた。その後、市が桜の木の植樹を決めていた団地の中にある公用地を区長が勝手に早い者勝ちで自家菜園の用地にするなどしたことで、ついに住人たちの不満が爆発し、リコールされた。
その新興住宅地は様々な所からの移住者が集っていたので、極めて民主主義的に自治が行われ、住人同士も普通に交流していた。問題は昔からその地域に住んでいる住人たちだ。外からの移住者を余り良しとはせず、何かにつけて先輩面をして新興住宅地の住人を支配した上に、排他的な態度をあからさまに見せていたのだ。
今はその家も手放し、全く違う土地に移って、ポツンと一軒家に暮らしているので、嫌な思いをせずに住んでいる。
本体価格870円
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フリーライターの結城真理は、母の大学時代の友人である松村弘子に母が古いシャネルスーツを持ち込んで本物かどうか、戦前に作られたものかどうかを調べてほしいと頼まれ、その件を調べにフランスへ行ってほしいと言われる。
それは、祖母が遺した血に染まったシャネルスーツで、その遺品の謎を解くために母とフランスに赴く。
そこで知ったことは、若かりし祖母と曽祖父のこと。
祖母は、外務省書記官の娘としてナチ占領下のパリにいて、ココ・シャネルと出会っていた。
大戦末期と現代を交互に物語は進む。
謎と驚愕の繰り返しの連続である。
祖母・母・娘の三代系譜の物語だが、それぞれ仕事に生き、芯の強い女性であることがわかる。
そして共通するのはシャネルもそうであったのだろう。
祖母が遺したのが血に染まったシャネルスーツであったこと…それは、娘に、孫に、語りたいことがあるという隠された事実だったのかもしれない。
母娘がけっして仲良くわかり合える間柄ではなかっただけになおさら切なさが尾をひく。