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Posted by ブクログ
佐野広実『誰かがこの町で』講談社文庫。
佐野広実の小説を読むのは第66回江戸川乱歩賞受賞作の『わたしが消える』と『戦火のオートクチュール』についで3作目となる。『わたしが消える』が非常に面白く、『戦火のオートクチュール』も高いレベルの小説であることに驚いた。
さて本作はどうだろうか。近々、某有料衛星放送でドラマ化されるらしく、味のある表紙イラストを隠すかのように俳優たちの写真のオーバーカバーが掛かっていた。
本作は地域の同調圧力をテーマにした見事で読み応えのあるサスペンス・ミステリーであった。程度の差はあれど、日本のどこの地域でも起きている同調圧力の嫌な現実が描かれている。良く言えば地元愛なのだが、地域の住人たちが結託し、盲信的に地域を守るということに執着する様子には背筋が寒くなった。
弁護士の岩田喜久子の法律事務所で調査員として働く真崎雄一は名古屋での仕事を終え、事務所に戻ると岩田から直々に奇妙な依頼を受ける。19年前、岩田が渡米していた時に一家で失踪した同級生の望月良子の娘を名乗る望月麻希という女性が岩田の事務所を訪ね、自分の家族の行方を知りたいと言うのだ。真崎は望月麻希が本当に望月良子の娘であるかを調べるために半年前まで麻希が暮らしていたという施設を訪ね、麻希にも直接事情を確認する。
突然、場面は変わり、木本俊樹と千春の5歳になる子供の貴之が行方不明になり、何者かに殺害され、変わり果てた姿で見付かる。この事件は望月麻希と関係があるのか……
真崎は望月家が埼玉の与久那町鳩羽地区の高級住宅街に暮らしていたことを聞き、現地へと向かう。その頃、麻希も自身の家族のことを調べるためにその住宅街を訪れていた。真崎が高級住宅街のことを調べるうちに19年前に起きた木本貴之殺害事件を切っ掛けに、その住宅街での住人たちの歪んだ行動が続いていることを知る。
作中に描かれるゴミ出しルールを監視するというのは自分もかつて経験したことがある。30年以上前に東北の田舎町の新興住宅地に家を買い、住み始めて数年後、ゴミの分別ルールが厳しくなった。今では当たり前に燃えるゴミとプラゴミ、燃えないゴミとアルミ缶、ペットボトル、新聞紙、段ボールなどの曜日毎の分別である。その地域には元々20軒くらいが暮らしていて、そこに100軒余りの新築住宅が立ち並んだのだ。分別が厳しくなると、新興住宅地が出来る前からの住人で区長が勝手にゴミ袋への記名を決め、住宅地内のゴミ停に出されたゴミの袋を開け、チェックし始めたのだ。そして、ゴミの分別の違反があると住人に直接注意するなどし、新興住宅地の住人からは問題視されていた。その後、市が桜の木の植樹を決めていた団地の中にある公用地を区長が勝手に早い者勝ちで自家菜園の用地にするなどしたことで、ついに住人たちの不満が爆発し、リコールされた。
その新興住宅地は様々な所からの移住者が集っていたので、極めて民主主義的に自治が行われ、住人同士も普通に交流していた。問題は昔からその地域に住んでいる住人たちだ。外からの移住者を余り良しとはせず、何かにつけて先輩面をして新興住宅地の住人を支配した上に、排他的な態度をあからさまに見せていたのだ。
今はその家も手放し、全く違う土地に移って、ポツンと一軒家に暮らしているので、嫌な思いをせずに住んでいる。
本体価格870円
★★★★★
Posted by ブクログ
500世帯ほどの新興(高級)住宅地の町。
造成時から関わった町の有力者を中心とした町の自治、安心安全な町造りという当初の目的が、防犯の名のもと、意にそぐわない住民を陰湿な手を使って村八分に追い込み、失踪殺人事件に関わっていくストーリー。
声の大きな者に従い、異を唱えることに耳も口も閉じ、正しさの判断が出来なくなって、考えることをやめてしまった住民たち。
ハブる、無視、仲間はずれ、根拠を持たない歪んだ正義感で同調圧力をかけ、既得権益にしがみつく住民たち。
想像力の欠如は倫理をも踏み越えてしまうのだな。
住宅街というコミュニティだが、規模の違いはあれ、同様なコトが、教育、企業、ネット等々、あらゆる社会コミュニティに潜在化しているのではないか、と思った。
真の事実を知らず、根拠も知らず、同調することを良しとする風潮、私は、俺は、そんなことは、ちゃんとわかってるから大丈夫、と胸を張って言えるだろうか。。。
読んでいて、住民たちの行動に胸糞悪さを覚えたが、住民側の立場に俺が居たら、毅然とした意志意思を出せるだろうか。。。
己の行動を振り返りたいと考えさせられた読後感。
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