夏木志朋のレビュー一覧
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「他人と違う」ということを気にしている主人公。
人とコミュニケーションがうまく取れなかったり、クラスメイトが話題にしている流行に関心がもてなかったり、「変な奴」としてクラスで浮いています。
「他人とは違う特別な自分」であることに価値を感じる気持ちと、「他人と同じになりたい」という気持ちの間で葛藤し、生きづらさを感じる日々。
高校二年のとき、担任の美術教師・二木の秘密を知ったことでその生活が大きく変わっていきます。
人には理解されない自分の「核」にあるものは何か、それを捨てることなく、また振りかざすことなく周囲に同調したように見せて過ごすという新しい生き方を発見する。
教師の秘密を握って脅すという特殊な設定と合わせて、自分の世界を作り上げてゆこうともがく主人公の姿から目が離せない作品でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「ミッチョさん?」
話しかけられる前から、たぶんそうだと思っていた。遠目に目があったことでこちらが待ち合わせの相手だと確信したらしいチトセが、オレンジ色のキャリーケースの車輪をゴロゴロ鳴らして近づいてきた。
現実感がないまま互いに相手が間違いないかを確認して、近くにあるチェーンのコーヒー店へ向かった。
「オタク同士でオフ会する時は、結構、カラオケルームとか使う時もあるんですけど」
道中でチトセはずっと喋りつづけていた。その間を周助のか細い相槌の声が縫う。
「ちょっと歩くんですけど、すみません」
「はい」
「ミッチョさん背高いですねぇ! 一七五くらい?」
「はい」
「羨ましいっす。しかし暑いですね!」
「はい、めっちゃ、暑い」
「オフ会マジで初めてなんですかですか?」
「はい」
「もしかして緊張してます?」
「はい」
「私もです! てか、」
歩きながら、チトセが宙を嗅ぐような仕草をした。
「この辺めっちゃ、海の匂いしません? いや海なんですけど、ビッグサイトのあたりよりも、なんか独特の匂いがするっていうか」
「汽水なのかも」
周助は言った。
「キスイ?」
「海と川が合流して、海水と淡水が混じってる状態のことを汽水って言うんです。ここら辺は汽水域で、だから独特の匂いがするのかも」
「そうなんですか?」
「わかりませんが」
「わからんのかい」
チトセが笑った。急に言葉尻を変えた突っ込みに少し面食らったが、気さくさに救われた気持ちになる。彼女の鼻が検知したのは潮の匂いではなく自分の臭いではないだろうかという不安を頭の隅に追いやりながら、少し前を歩く彼女のコンバースを眺めた。
初めて会ったチトセは、事前に知っていた通り小柄で、想像していたよりも、快活だった。でもその明るい声のトーンには、クラスの一軍と呼ばれる女子たちの声にはない濁りのようなものがあって、ああ、オタクなんだな、と安心した。 -
Posted by ブクログ
見事にひっくり返してくれるし、とてもよく出来た話だと思います。さらに「どこか変」や「行動にはしない気持ち悪い性癖」はそれだけで悪なのか?罪なのか?というストーリーはもともと好みの筈なのに、何故か途中までは上手く乗り切れず。まあ、最後には乗ってきましたが。。。。
裏口から入って、話の正面に辿り着くまでしばし時間がかかる事。委員長やゆりっぺなど、少し夾雑物が多すぎた事。それらが上手く乗り切れなかった理由かもしれません。主人公をいじめる同級生・吉田が何とも苦手で、しかも彼に関してはケリ(逃げたでも、やられたでも)がつかないまま終わった事も消化不良感があります。
夏木志朋さんは初めて。
名前や男子高校生の描き方のうまさから、すっかり男性だと思ってたら、なかなかおきれいな女性でした。 -
Posted by ブクログ
こんなにクソな主人公ははじめてだ(笑)
主人公の高校生の田井中はどっかズレてる。本人も自覚してるけど、ズレてるし卑怯だ。そりゃ、イジメられる。一方の二木先生はロリコンだが、それをうまく隠している。そんな二人が邂逅したお話。
とにかく主人公の性格が悪い。やんちゃとかでなく人間として悪い。なのでまったく共感とかできない。
二木先生はいいキャラクターだと思うので、二木先生視点で生徒や同僚の悩みを解決するような連作にしてもよさそう。
本作はポプラ社小説新人賞の「Bとの邂逅」を改題して、「ニキ」として出版したもの。その後、文庫化にあたり「二木先生」としてさらに改題。装画を大きく変更したことでヒットした。タイトルとか装画って大事だと改めて認識した作品。