夏木志朋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
どこから手をつけて感想を書こうか、と悩む。はじめは田井中にぎゃふんと言わせる流れを期待。ほんと嫌なやつ。話が進むにつれて、田井中に感情移入したわけではないが、やはり吉田にぎゃふんと言わせる流れを期待。結果どれも不発。吉田が圧倒的に勝ち組描写だったので残念だったがそれは仕方なし。吉田的にはぎゃふんだったかもしれないが。
正欲、流浪の月、ときてこれ。流行ってるのかたまたまの巡り合わせか、マイノリティ嗜好の話に最近出会う。共通するのは、当事者の苦しみと周囲の無理解。いずれも「社会に迷惑をかけない」という矜持を持っていることは覚えておきたい。マジョリティの方がよっぽど社会に迷惑かけている。異質だから大きく取り上げられるし、マジョリティから危険視されている。二木先生とマツコデラックスは、自分を主語にしない。マイノリティと括っても代弁者になることが無責任。 -
Posted by ブクログ
めっちゃ良い!
最後の3.4ページで泣く。途中は⭐︎4かなと思ってたが読み終えてから⭐︎5に変えた。
本の厚さはあるけど約360ページだからあっとま(てかポプラさん、もう少し紙を薄くしてほしいです。指切りました。。)
あっとまな程、先が気になる話。というか構成とかのスキルか?AとB、二と一、第三の案、本音と建前、外面と素、一号二号、アルファベットが1文字抜けた、などなど。
また読み返したい、紙がもう少し薄ければ。。(笑、内容もヒリヒリ、物理的にもヒリヒリ)
あ、あと、勘て、記憶と記憶のマッチングだと思う。
あ、と、そんな達観してる高校生いるかな、とは思うけど、
とにかく期待以上だった。夏木さん、ありがとうございます。
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匿名
購入済み普通じゃない皆んなから変わってると言われる少年とごく平凡な教師に見えるけれど、とんでもない闇を抱えてる先生。すごく難しいテーマで、自分でも受け入れられるか何度も考えたけれど答えが出ない。
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Posted by ブクログ
少しずつ、自分が何が好きだったのかがわからなくなっていった。それでいい、と思った。こうして元の自分が消えてしまえば、きっともう少し息がしやすくなる。
それでも、中学に入り、卒業する頃になっても、空気は薄いままだった。(p.29)
人を見下して心をなだめる自らを蔑む気持ちと、その心理を知っているという自負、そうした自意識がキャベツやレタスの層になって、心を襞だらけにしていた。(p.31)
…理解不能なものをこうして「そういうものだ」と押しつけられると、こっちが、明文化されていないものに関しては何が本当で嘘なのかを見抜くのが不特手なことに付け入れられている気がして、不快で、不安だった。そしてなぜ、いつの間にか二木がこの場を仕切り始めているのだろうか。(p.86)
しばしの機能停止なのか、眠りなのか境界があやふやな白い意識の中で、最後に残った思考のかけらが、ひとつの真実をなぞって消えていった。
二木に結局、千円を返し忘れていた。(p.89)
授業中の生徒の脳に分泌される「他のことやりたくナルレナリン」のような物質があるのかもしれないと広一は思った。(p.90)
窓から差す西日が二木の体を照らしている。本来陽の当たる場所にいてはいけないはずの二木の姿が、オレンジ色の光に包まれていた。(p.97)
まだ悠長に構えていていい、と、白い紙ではなく、藁半紙でできた用紙も言っているような気がした。(p.102)
目を通しながら口元に浮かべていた苦笑は、自由帳の三冊目に差し掛かる頃には消えていた。
自分がいったいどんな表情をしていたのかはわからない。少なくとも、それを意識できる自分は、その時、どこにもいなかった。(p.128)
溶岩のような熱さと粘りを持った何かが、ゆっくりと体の中心を降りていき、腹の辺りに落ちるとそこで、ぼっと咲いた。(p.150)
頭の中に温度の低い液体がすっと流れ込んできた。怒りの成分が冷たいということを初めて知った。(p.185)
本当に大事なことは、現実から離れた場所に隔離しておくべきだ。その方が傷付かずに、自由になれる。(p.192)
「挑戦しないと後悔するって予感だけはあるから、決意はとっくにしたはずなのに、気付いたら何度も機会を見送ってたり。そのたんびに自分の意思の弱さが嫌になるけど、逃げたことを正当化するのも上手になっていくんだよね。またそこに自己嫌悪して、しまいには、逃げた自分にちゃんと自己嫌悪すること自体が精神安定剤みたいになって」(p.211)
「あのね、勘って、オカルトじゃないよ。目とか耳から入ってきた情報で、確かに気付いてるんだけど、それをまだ言葉にできないのを、勘って言うんだと思う」…二木も前に直感という言葉を使って、こっちが彼に執着する理由が、義憤や、ただの憂さ晴らしではないと見抜いたことがある。勘は、十分アテになる。だからこそ自分は、人の勘というものが、怖い。(p.217)
舞い上がろうとする気持ちを、石が押さえる。その重みのせいで高く飛べない。
半信半疑という名の低空飛行で、広一は残り四か月のの道のりを、よろよろと進み始めた。(p.229)
ギロチンのような台詞だった。殺人的という意味ではない。自分は今、なるべく素早く、痛み少なく、引導を渡されたのだと直感した。(p.239)
「ふりをするのは簡単じゃない」
「わかってる」
広一の言葉に二木はシリアスな顔をした。
「自分を装い続けるのは、すごく精神的に負担が大きいことだ」
…
「覚悟してる」
「覚悟なんかじゃ駄目だ。そんな頼りないもので、演技なんか続けていたら、人は壊れるよ」
「じゃあどうしたらいいんだよ」
「きみには、まだ、足りないものがある」
噴飯ものの台詞だった。足りないものだらけなのは重々承知している。なのに、二木の言葉はまるで、足りないピースはあとひとつだけ、だとでも言いたげだ。
「へぇ。教えてくれます?」
「自分を好きになることだよ」(p.246)
そんな風に、自分は、誰かを哀れんだり、共感する情を確かに持っている。けれど、フィクションの登場人物には優しさを持てるのに、現実の人間に対しては驚くほど薄情なのはなぜだろう。(p.281)
諦めの色が乗っていた。どこか吹っ切れている様子にすら見える。きっとこの人はこうして起きてしまったことを無理に肯定していくものなのだろう。…母はずっと、ありのままで生きていけと言っていた。委員長の父親は、子供らしくなれと言った。そして二木は、クローゼットの中に自分を隠して生きていく方法もあると言った。あの言葉を聞いた時、自分は初めて、救われたのだ。(p.300)
広一は高揚と同時に、自分の背骨をワイヤーに使って、一基のエレベーターが下降していくような感覚を抱いていた。これで学校生活は前よりもっと悪くなる。むしろ、終了だ。(p.304)
教室中に、水色の水彩絵の具をさっと塗ったような雰囲気が走った。(p.306)
高校生の田井中広一は、周囲とのズレを感じていた。母は、あなたが特別だからと言うが、自分に突出してできるものもなく、何も無いと思っていたところに、先生が特殊性癖を持っていることを知る。ニキは、大人目線から上手く広一を交わし、貶したかと思ったら、上手く生きるためのアドバイスをする。美術教師と言うとミステリアスなイメージがあるが、私が描く教師像そのままだった。半分子供×大人の頭脳戦みたいな感じで2人の頭の良さと、構成の緻密さと、上手く言えない感情の表現が的確で読んでいて、何度もWAO⁉︎と声が出てしまった。
自分を好きになることという会話のところは鳥肌がたったほど。クローゼットの中に自分を閉じ込める生き方もある。負の部分をうまく隠しながらなんて、人を騙しているようで、恥じて下を向いてしまいそうだが、自分が生きるためにその生き方も肯定してもらえる。もう少し、このままでいいのかな、自分のままを受け入れてくれる人がいるかもしれない。そう思えた本。