あらすじ
高校生・田井中広一は黙っていても、口を開いても、つねに人から馬鹿にされ、世界から浮き上がってしまう。そんな広一が「この人なら」と唯一、人間的な関心を寄せたのが美術教師の二木良平だった。穏やかな人気教師で通っていたが、それは表の顔。彼が自分以上に危険な人間であると確信する広一は、二木に近づき、脅し、とんでもない取引をもちかける――。2019年ポプラ社小説新人賞受賞作。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
面白かった。大多数の人と違う部分を持っいて、当人にとっては大事な心の一部だとしたら、それを避難しないでいる自分でいたいと思う。
大多数に紛れ込むために、周りの反応を見て大多数の方に手を挙げている自分だと悲しくも再認識できた。
Posted by ブクログ
自分の生きにくさをどう捉え生きていくかのヒントがありました。
全体的にあまり気分のいい内容ではなくて救いを求めながら読んでしまったけど、二木先生の態度や言葉からは、諦めとそれでも生きていかねばならないという決意と希望を最終的に感じられてよかった。
"人には誰にも見せられないことをする場所が必要だ"
"自分に嫌われたらお終いだよ。自分にはそいつしかいなくて、そいつはいつでもこっちをジッと見てて、死ぬまで離れてくれない訳だから"
Posted by ブクログ
最近読んだ本の中で私的には久々にヒットの作品。特別でありたい自分と皆から浮いてしまい、皆と一緒の感覚でいたいという相反する感情に揺れ動く主人公の様子に感情移入した。若い時の自分を見ているようでした。
Posted by ブクログ
少しずつ、自分が何が好きだったのかがわからなくなっていった。それでいい、と思った。こうして元の自分が消えてしまえば、きっともう少し息がしやすくなる。
それでも、中学に入り、卒業する頃になっても、空気は薄いままだった。(p.29)
人を見下して心をなだめる自らを蔑む気持ちと、その心理を知っているという自負、そうした自意識がキャベツやレタスの層になって、心を襞だらけにしていた。(p.31)
…理解不能なものをこうして「そういうものだ」と押しつけられると、こっちが、明文化されていないものに関しては何が本当で嘘なのかを見抜くのが不特手なことに付け入れられている気がして、不快で、不安だった。そしてなぜ、いつの間にか二木がこの場を仕切り始めているのだろうか。(p.86)
しばしの機能停止なのか、眠りなのか境界があやふやな白い意識の中で、最後に残った思考のかけらが、ひとつの真実をなぞって消えていった。
二木に結局、千円を返し忘れていた。(p.89)
授業中の生徒の脳に分泌される「他のことやりたくナルレナリン」のような物質があるのかもしれないと広一は思った。(p.90)
窓から差す西日が二木の体を照らしている。本来陽の当たる場所にいてはいけないはずの二木の姿が、オレンジ色の光に包まれていた。(p.97)
まだ悠長に構えていていい、と、白い紙ではなく、藁半紙でできた用紙も言っているような気がした。(p.102)
目を通しながら口元に浮かべていた苦笑は、自由帳の三冊目に差し掛かる頃には消えていた。
自分がいったいどんな表情をしていたのかはわからない。少なくとも、それを意識できる自分は、その時、どこにもいなかった。(p.128)
溶岩のような熱さと粘りを持った何かが、ゆっくりと体の中心を降りていき、腹の辺りに落ちるとそこで、ぼっと咲いた。(p.150)
頭の中に温度の低い液体がすっと流れ込んできた。怒りの成分が冷たいということを初めて知った。(p.185)
本当に大事なことは、現実から離れた場所に隔離しておくべきだ。その方が傷付かずに、自由になれる。(p.192)
「挑戦しないと後悔するって予感だけはあるから、決意はとっくにしたはずなのに、気付いたら何度も機会を見送ってたり。そのたんびに自分の意思の弱さが嫌になるけど、逃げたことを正当化するのも上手になっていくんだよね。またそこに自己嫌悪して、しまいには、逃げた自分にちゃんと自己嫌悪すること自体が精神安定剤みたいになって」(p.211)
「あのね、勘って、オカルトじゃないよ。目とか耳から入ってきた情報で、確かに気付いてるんだけど、それをまだ言葉にできないのを、勘って言うんだと思う」…二木も前に直感という言葉を使って、こっちが彼に執着する理由が、義憤や、ただの憂さ晴らしではないと見抜いたことがある。勘は、十分アテになる。だからこそ自分は、人の勘というものが、怖い。(p.217)
舞い上がろうとする気持ちを、石が押さえる。その重みのせいで高く飛べない。
半信半疑という名の低空飛行で、広一は残り四か月のの道のりを、よろよろと進み始めた。(p.229)
ギロチンのような台詞だった。殺人的という意味ではない。自分は今、なるべく素早く、痛み少なく、引導を渡されたのだと直感した。(p.239)
「ふりをするのは簡単じゃない」
「わかってる」
広一の言葉に二木はシリアスな顔をした。
「自分を装い続けるのは、すごく精神的に負担が大きいことだ」
…
「覚悟してる」
「覚悟なんかじゃ駄目だ。そんな頼りないもので、演技なんか続けていたら、人は壊れるよ」
「じゃあどうしたらいいんだよ」
「きみには、まだ、足りないものがある」
噴飯ものの台詞だった。足りないものだらけなのは重々承知している。なのに、二木の言葉はまるで、足りないピースはあとひとつだけ、だとでも言いたげだ。
「へぇ。教えてくれます?」
「自分を好きになることだよ」(p.246)
そんな風に、自分は、誰かを哀れんだり、共感する情を確かに持っている。けれど、フィクションの登場人物には優しさを持てるのに、現実の人間に対しては驚くほど薄情なのはなぜだろう。(p.281)
諦めの色が乗っていた。どこか吹っ切れている様子にすら見える。きっとこの人はこうして起きてしまったことを無理に肯定していくものなのだろう。…母はずっと、ありのままで生きていけと言っていた。委員長の父親は、子供らしくなれと言った。そして二木は、クローゼットの中に自分を隠して生きていく方法もあると言った。あの言葉を聞いた時、自分は初めて、救われたのだ。(p.300)
広一は高揚と同時に、自分の背骨をワイヤーに使って、一基のエレベーターが下降していくような感覚を抱いていた。これで学校生活は前よりもっと悪くなる。むしろ、終了だ。(p.304)
教室中に、水色の水彩絵の具をさっと塗ったような雰囲気が走った。(p.306)
高校生の田井中広一は、周囲とのズレを感じていた。母は、あなたが特別だからと言うが、自分に突出してできるものもなく、何も無いと思っていたところに、先生が特殊性癖を持っていることを知る。ニキは、大人目線から上手く広一を交わし、貶したかと思ったら、上手く生きるためのアドバイスをする。美術教師と言うとミステリアスなイメージがあるが、私が描く教師像そのままだった。半分子供×大人の頭脳戦みたいな感じで2人の頭の良さと、構成の緻密さと、上手く言えない感情の表現が的確で読んでいて、何度もWAO⁉︎と声が出てしまった。
自分を好きになることという会話のところは鳥肌がたったほど。クローゼットの中に自分を閉じ込める生き方もある。負の部分をうまく隠しながらなんて、人を騙しているようで、恥じて下を向いてしまいそうだが、自分が生きるためにその生き方も肯定してもらえる。もう少し、このままでいいのかな、自分のままを受け入れてくれる人がいるかもしれない。そう思えた本。
Posted by ブクログ
「広一は気が付けば手を挙げていた。内心の激しさとは裏腹に、少し肘ひじを曲げた遠慮がちな挙手だった。」
この文に作者の才能の全てが込められていると言っても過言ではない。文字にすればほとんど変わらない2つのシーン。しかし、そこに至るまでの過程、内心の激しさの理由、そして誰の名誉のために手を挙げるのか。
ぜひ最後まで読んでほしい1冊。
Posted by ブクログ
“変人”や“奇人”に分類される大人は、大抵の場合”普通の人”のフリをして世間をうまく渡る術を会得しているが、子どもは”普通の人”になるために”普通”を勉強している最中である。そんな”変人”である大人と子供が対等に向き合う話。
二木も広一も、実生活で周りにいない特殊なタイプだから、一挙手一投足に意識を奪われた。
彼らの次の発言や行動を早く見たくてページを捲る手が止まらなかった。
異論の余地が無いほど、比喩が的確。
ほんとうにおもしろかった!
余談やけど、「自分の飛躍した発言に周りが面食らった反応をするが、自分の中では筋道がきちんとある。」という部分を読んで、共感した。
バイトで、”周りの人への配慮”や”効率”を重視するあまり、周りからは謎行動をしているように見える時がある現象に似ていると思った。
Posted by ブクログ
人とうまくコミュニケーションがとれない
高校生と
小児性愛者という秘密をもつ教師とのバトル。
これはホラーなのか?
人間同士の成長ドラマなのか?
はたまた敵か味方か、悪か正義か?
その不安定な揺れに
どんどん物語にひきこまれる。
最後は
クラス全体を巻き込んでのコメディや
立場を越えた友情のようなものもあり
「爽快青春小説」とか
一言ではあらわせない複雑な面白さがあった。
Posted by ブクログ
読んでよかった。
変人生徒と変態教師が出会った。
大衆とは違う自分を隠す教師と、隠せない生徒。
教師側は自分の信条を宗教と言い、死ぬその日まで守りきる、その覚悟を持って生きている。
そんな先生と生徒の徐々に関係が出来てくるのは、見てて良かった。
途中のイジメは胸糞悪かった。生徒も先生も変であっても、他人に危害を与えていない。1人の人生を必死に生きているだけなのに、人と違うことに指を指してきたいじめっ子は罰が当たってほしい。
Posted by ブクログ
個性的な高校生と、美術教師の奇妙な関係が描かれている
一般的な感性との違いにより周りから浮いてしまうことに悩む高校生
特殊な性癖を隠して良い大人を演じ続ける教師
一見相入れない2人だが、認め合っていくのはお互いマイノリティだからか?
人はそれぞれ、他人に言えない秘密を持っているのかもしれないが、それを飼いならすことで生きていっている
それが当たり前のことかもしれないが、その秘密を打ち明けることができる人がいれば心が解き放たれるのだろうか?
そんなことを感じさせられた
Posted by ブクログ
多数派になろうとする気持ちはよく分かる。
自分が特別だと思い込む気持ちもよく分かる。
他を寛容的に受け入れることよりも自分自身を好きになることを、まずは大切にしていきたい。
Posted by ブクログ
ちょっと変わったテーマというか、関係性だけど、そこがまた新鮮でした。勢いよく読めて面白かったです。主人公にも共感できるし、二木先生が謎めいてるけど筋が通ってる感じがして、2人のやりとりも良かったし、個性的でセンスある作品だなと思いました。
Posted by ブクログ
これはどうなっていくんだろうとページをめくる手が止まらず。
最後の教室のシーンは、没頭しすぎて、なんなら目が血走っていたかもしれない。
人それぞれ違うはずなのに、多数が正義になることの危うさを感じる。
でも、二木先生の抱えているものが大きすぎて、それを知ったらやっぱり私は受け入れられるのだろうかと考えさせられてしまった。
広一の小説はどうなったんだろう。
吉田との関係はどうなったのかな。
気になることはあるけれど、なんとなく上手く収まったような。
今も余韻をひきずっている。
Posted by ブクログ
表現は、少し汚いかもしれないですが
「ブッ飛んでいる」
読みはじめてすぐにこんな言葉がパッと浮かんだ。出てくる主人公、今まで出会ったことがなく新鮮でした。好き嫌いはあると思いますが、私は好きだったので☆4にしました
Posted by ブクログ
最初主人公はしょうもないなと思っていたけど読むにつれて好きになっていくな。本が好き故の語彙力の多さと面白い話の意図を捉えられないことくらいでいろんなこと分析してだいぶ頭が回る方だと思った。
一気読みしてしまうくらい楽しめたのは人の秘密をどんどん知っていく面白さで悪趣味だなと思ったけどどんどん多様性についての話になっていく。
最悪な関係から良い関係になっていく様が良かった。先生も主人公のやりとりはどれも楽しく読める。
好きなワード「君の血管には尿でも流れてるの?」なかなかこんなユニークな返しできない!
設定からして面白い。作者の一冊目なんてすごい。次の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
変って思っている子が、自分の周りにもいた。
普通じゃない。子どもらしくない。
普通や、らしさっていうのはどういうことなんだろう?
必要なことなのか?
改めて考えてみても、物事と同じく表も裏もある。
多数派に属さなくても、自分の心の大事な一部分を愛し、自分自身でいられることの強さを保てる人でありたいたと感じた。
Posted by ブクログ
田井中がやばいくらい空気読めなくて
共感性羞恥ギャンギャンだった。
なんでそーなるんだよー
なんでそー思うんだよ〜
ちーがーうーだーろー!!
お母さんも苦労してる。
病院にまで行っていっその事病名が欲しいと。
その位ボーダーなんじゃないか。
二木も結構自制出来てるようで
やっぱりギリギリだと思う。
漫画描いてる描写は無かったけど
その描いてる時の顔はやばくなってると思う。
そうして捌け口にしてるんだろうけど。
逆に学校という絶対的な監視下の元に
自分を置いておいた方がいいんじゃ無いかと
思うラストだった。
田井中のイジメも止んではいないけど
なんか田井中なら飄々と乗り切れそう。
何もかも解決してなくて
委員長も田井中に対して半ば
カミングアウトしてしまった様なもんだし
心証悪い中終わってしまった。
でもなんか読後感は良い。
何でだ、謎だ。
Posted by ブクログ
変人の広一が美術教師二木先生の秘密、ロリータでオタクでエロ漫画作家である事を知って脅迫するところから物語は始まる。二人の関係の強弱が変化する様子が面白い。クラスのイジメも普通にあって何ら解決されないところも、救いがある様で全くないところも小説らしくなくて良かった。
Posted by ブクログ
面白かった。思っていたのとは違う内容と結末だったが、純粋に面白かった。ただ、ニキはそんなにヤバくない。
帯から想像するのは、広一とニキとのやり取りがもっとドロドロとしたものだったが、思っていたよりずっと青春小説の色が濃い仕上がりだ。
広一は周りに馴染めないちょっと変わった高校生。そんな広一が唯一分かり合えると思って近づいたのが教師のニキ。ニキの秘密を知る広一はニキを脅しつつも、ニキの提案で小説を描き始める。
お互いに秘密を知る2人は、窮地に追い込まれるが、その時2人のとった行動は・・・。
自分が思い描いていた内容とかけ離れたものだったが、むしろこの結末は素晴らしい。そしてこれが新人のデビュー作とは驚き以外ない。スッキリしないところも多いが、むしろそれが完成度を上げる効果がある。読後感も爽やかな青春小説だ。
Posted by ブクログ
こっとんさんの本棚で見つけました
2019年ポプラ社小説新人賞受賞作
20歳の受賞!
デビュー作とは思えませんね。
巧み過ぎて。
読者をぐいぐい引き込んでいく力量には感嘆です。
ただ婆さんにはハードルが高かったです。
(だったら年相応のものを読めばいいのですが うふふ)
若者の中から生み出された葛藤に竦んでしまいました。
まだまだすごいものを書いていかれることでしょう。
楽しみです。
≪ 絶壁の 生徒と教師の 闇の色 ≫
Posted by ブクログ
文庫版の二木先生と中身は一緒ということで。
あちらのほうがカバーがセンセーショナルなので興味を引きますね。
思ってた話とちょっと違って、あーなー最近こういうテーマ増えてきたけど、こういう角度でくるのか。
個人の嗜好や思想は自由、だが他人を巻き込むな迷惑かけるな、隠し通して墓まで持っていけ、ではあるんだがな~~。
そこを正義感や多数派や普通であることが踏みにじって暴いて晒していくのはね…。
悪意と善意がほんと表裏一体であり、怖い話ですよ。
結末がまた様式美とかなんとなくいい着地点とかでないのがなんとも。
Posted by ブクログ
先が気になって、どんどん読み進め、一気に読み終わってしまった。
というくらい、おもしろい話だった。
が、ミステリーだと思って読んでいたが、ヒューマンだった。という、勝手な私の思い込みによる拍子抜け感があり、最後は物足りなさがあった。
Posted by ブクログ
買って、1年積読していた本でした。
誰かが高評価していたことと、帯に惹かれて買ったのですが正直とても良かったです
後半になるにつれて読んでいる自分の呼吸が早くなりページをめくる手が止まりませんでした。
2時間半程で一気読みしました。
予想外の展開と濃くて狭い人間関係に胸が苦しくなる場面も多々ありましたが一読の価値はあります。
Posted by ブクログ
こんなにクソな主人公ははじめてだ(笑)
主人公の高校生の田井中はどっかズレてる。本人も自覚してるけど、ズレてるし卑怯だ。そりゃ、イジメられる。一方の二木先生はロリコンだが、それをうまく隠している。そんな二人が邂逅したお話。
とにかく主人公の性格が悪い。やんちゃとかでなく人間として悪い。なのでまったく共感とかできない。
二木先生はいいキャラクターだと思うので、二木先生視点で生徒や同僚の悩みを解決するような連作にしてもよさそう。
本作はポプラ社小説新人賞の「Bとの邂逅」を改題して、「ニキ」として出版したもの。その後、文庫化にあたり「二木先生」としてさらに改題。装画を大きく変更したことでヒットした。タイトルとか装画って大事だと改めて認識した作品。
Posted by ブクログ
普通の人と違う部分がある、だなんて、その手の悩みを持ったことがない人間には、のっけから共感しにくい話だろう。
もちろん、誰にでも、私にも普通の人とは違う部分があるけど、ここまでの生きづらさは感じたことがない。もし、自分がそうだったらこんな悩みをいただいたのか、と読んでいて苦しかった。物語にはぐいぐい引き込まれたけど、後味はすっきりしない。主人公と二木先生を攻撃する吉田が「世間」だとしたら、こんなにも胸くそ悪いことをしているのかとぞっとするが。考えさせられる作品ではあった。
Posted by ブクログ
前評判がいいだけに、想像以上の展開を期待してしまった。ただ、すごく共感できることが多かった。
一般的な感覚とは違う感性をもっているからこそ、生きづらさを感じる。もちろん感性だけじゃなくて、価値観や考えとかいろんなものがあるけど、世間とずれていると居心地が悪い。特に日本はそれが顕著な気がする。
親に病院に行かされ、障害ではないと診断された、いわゆるグレーゾーンな子ども。母親の心情吐露のシーンが苦しくもあり、親としての責任も感じた。
誰かに合わせるか。個として生きるか。それだけではなく、もっと柔軟な生き方もできる。二木先生自身が、それに思い悩み、苦しんだからこそ、田井中の心情が分かるんだろうな。
田井中は「普通」を学ぶ機会として、人との関わりを増やしていったことが、社会に順応しようと努力していて尊敬できた。
暗い展開かと思いきや、小説に青春を懸けた話に傾いてびっくりだった。
主人公が小説の才能があって、賞を狙えるくらいの才能の持ち主という裏設定はちょっとズルいなとは思ったけど、自分の生き方の指針を見つけて、進むべき方向を見つけられて良かった。
自分は才能もないし、器用に立ち回ることもできない。でも、無理せず、出来ることをすればいいんだなって感じた。
Posted by ブクログ
人とは違うという想い、多かれ少なかれ多分に誰にでもあるのではないかと思う。その想いの重さとか、自分でそれに気付いているのかとか。それを自分で抱え込む人、完全スルーの人、人と共有できる人、色々なんだろうけど、ただそのはけ口がどこに向くのか向かうのか。家庭環境というのも少なからず影響していると思うし、難しい話なんだと思う。少しずれると犯罪と言う方向に走らないとも限らないし。本の趣旨とは違うかもだけど、マイノリティで悩んでいる人へ向けてのメッセージ性のある物語なのかなぁと思ったり。
Posted by ブクログ
『二木先生』と改題し、文庫化された今作。細心の注意を行き届かせながら、かなりディープなところまで二人の主要登場人物の設定が施されている。だからこそ、時に反感を抱き、時に共感しながら、二人の言動に最後まで揺さぶられてしまうのでしょう。二人とも、どうか健やかに。
Posted by ブクログ
んな高校生いねーだろ、と思いながら読んだけど、読書体験としては良かった。
意外とこういうのが忘れられない一冊になる。
周りの人と違うこととどうやって凌いでいくのか?
平々凡々な自分には想像もつかない。
外見や所謂個性を強く意識すると、自分とは何かを考えてしまって益々隘路にはまり込むのか。
特に性癖や性向へのレッテルに怯える日々はストレスになるのだろうな。
作品紹介・あらすじ
高校生・田井中広一は黙っていても、口を開いても、つねに人から馬鹿にされ、世界から浮き上がってしまう。そんな広一が「この人なら」と唯一、人間的な関心を寄せたのが美術教師の二木良平だった。穏やかな人気教師で通っていたが、それは表の顔。彼が自分以上に危険な人間であると確信する広一は、二木に近づき、脅し、とんでもない取引をもちかける――。嘘と誠実が崖っぷちで交錯し、追い詰めあうふたり。生徒と教師の悪戦苦闘をスリリングに描き、読後に爽やかな感動を呼ぶ青春小説。2019年ポプラ社小説新人賞受賞作。