あらすじ
高校生・田井中広一は黙っていても、口を開いても、つねに人から馬鹿にされ、世界から浮き上がってしまう。そんな広一が「この人なら」と唯一、人間的な関心を寄せたのが美術教師の二木良平だった。穏やかな人気教師で通っていたが、それは表の顔。彼が自分以上に危険な人間であると確信する広一は、二木に近づき、脅し、とんでもない取引をもちかける――。2019年ポプラ社小説新人賞受賞作。
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Posted by ブクログ
自分の生きにくさをどう捉え生きていくかのヒントがありました。
全体的にあまり気分のいい内容ではなくて救いを求めながら読んでしまったけど、二木先生の態度や言葉からは、諦めとそれでも生きていかねばならないという決意と希望を最終的に感じられてよかった。
"人には誰にも見せられないことをする場所が必要だ"
"自分に嫌われたらお終いだよ。自分にはそいつしかいなくて、そいつはいつでもこっちをジッと見てて、死ぬまで離れてくれない訳だから"
Posted by ブクログ
「広一は気が付けば手を挙げていた。内心の激しさとは裏腹に、少し肘ひじを曲げた遠慮がちな挙手だった。」
この文に作者の才能の全てが込められていると言っても過言ではない。文字にすればほとんど変わらない2つのシーン。しかし、そこに至るまでの過程、内心の激しさの理由、そして誰の名誉のために手を挙げるのか。
ぜひ最後まで読んでほしい1冊。
Posted by ブクログ
人とうまくコミュニケーションがとれない
高校生と
小児性愛者という秘密をもつ教師とのバトル。
これはホラーなのか?
人間同士の成長ドラマなのか?
はたまた敵か味方か、悪か正義か?
その不安定な揺れに
どんどん物語にひきこまれる。
最後は
クラス全体を巻き込んでのコメディや
立場を越えた友情のようなものもあり
「爽快青春小説」とか
一言ではあらわせない複雑な面白さがあった。
Posted by ブクログ
読んでよかった。
変人生徒と変態教師が出会った。
大衆とは違う自分を隠す教師と、隠せない生徒。
教師側は自分の信条を宗教と言い、死ぬその日まで守りきる、その覚悟を持って生きている。
そんな先生と生徒の徐々に関係が出来てくるのは、見てて良かった。
途中のイジメは胸糞悪かった。生徒も先生も変であっても、他人に危害を与えていない。1人の人生を必死に生きているだけなのに、人と違うことに指を指してきたいじめっ子は罰が当たってほしい。
Posted by ブクログ
これはどうなっていくんだろうとページをめくる手が止まらず。
最後の教室のシーンは、没頭しすぎて、なんなら目が血走っていたかもしれない。
人それぞれ違うはずなのに、多数が正義になることの危うさを感じる。
でも、二木先生の抱えているものが大きすぎて、それを知ったらやっぱり私は受け入れられるのだろうかと考えさせられてしまった。
広一の小説はどうなったんだろう。
吉田との関係はどうなったのかな。
気になることはあるけれど、なんとなく上手く収まったような。
今も余韻をひきずっている。
Posted by ブクログ
田井中がやばいくらい空気読めなくて
共感性羞恥ギャンギャンだった。
なんでそーなるんだよー
なんでそー思うんだよ〜
ちーがーうーだーろー!!
お母さんも苦労してる。
病院にまで行っていっその事病名が欲しいと。
その位ボーダーなんじゃないか。
二木も結構自制出来てるようで
やっぱりギリギリだと思う。
漫画描いてる描写は無かったけど
その描いてる時の顔はやばくなってると思う。
そうして捌け口にしてるんだろうけど。
逆に学校という絶対的な監視下の元に
自分を置いておいた方がいいんじゃ無いかと
思うラストだった。
田井中のイジメも止んではいないけど
なんか田井中なら飄々と乗り切れそう。
何もかも解決してなくて
委員長も田井中に対して半ば
カミングアウトしてしまった様なもんだし
心証悪い中終わってしまった。
でもなんか読後感は良い。
何でだ、謎だ。
Posted by ブクログ
変人の広一が美術教師二木先生の秘密、ロリータでオタクでエロ漫画作家である事を知って脅迫するところから物語は始まる。二人の関係の強弱が変化する様子が面白い。クラスのイジメも普通にあって何ら解決されないところも、救いがある様で全くないところも小説らしくなくて良かった。
Posted by ブクログ
こっとんさんの本棚で見つけました
2019年ポプラ社小説新人賞受賞作
20歳の受賞!
デビュー作とは思えませんね。
巧み過ぎて。
読者をぐいぐい引き込んでいく力量には感嘆です。
ただ婆さんにはハードルが高かったです。
(だったら年相応のものを読めばいいのですが うふふ)
若者の中から生み出された葛藤に竦んでしまいました。
まだまだすごいものを書いていかれることでしょう。
楽しみです。
≪ 絶壁の 生徒と教師の 闇の色 ≫
Posted by ブクログ
前評判がいいだけに、想像以上の展開を期待してしまった。ただ、すごく共感できることが多かった。
一般的な感覚とは違う感性をもっているからこそ、生きづらさを感じる。もちろん感性だけじゃなくて、価値観や考えとかいろんなものがあるけど、世間とずれていると居心地が悪い。特に日本はそれが顕著な気がする。
親に病院に行かされ、障害ではないと診断された、いわゆるグレーゾーンな子ども。母親の心情吐露のシーンが苦しくもあり、親としての責任も感じた。
誰かに合わせるか。個として生きるか。それだけではなく、もっと柔軟な生き方もできる。二木先生自身が、それに思い悩み、苦しんだからこそ、田井中の心情が分かるんだろうな。
田井中は「普通」を学ぶ機会として、人との関わりを増やしていったことが、社会に順応しようと努力していて尊敬できた。
暗い展開かと思いきや、小説に青春を懸けた話に傾いてびっくりだった。
主人公が小説の才能があって、賞を狙えるくらいの才能の持ち主という裏設定はちょっとズルいなとは思ったけど、自分の生き方の指針を見つけて、進むべき方向を見つけられて良かった。
自分は才能もないし、器用に立ち回ることもできない。でも、無理せず、出来ることをすればいいんだなって感じた。
Posted by ブクログ
んな高校生いねーだろ、と思いながら読んだけど、読書体験としては良かった。
意外とこういうのが忘れられない一冊になる。
周りの人と違うこととどうやって凌いでいくのか?
平々凡々な自分には想像もつかない。
外見や所謂個性を強く意識すると、自分とは何かを考えてしまって益々隘路にはまり込むのか。
特に性癖や性向へのレッテルに怯える日々はストレスになるのだろうな。
作品紹介・あらすじ
高校生・田井中広一は黙っていても、口を開いても、つねに人から馬鹿にされ、世界から浮き上がってしまう。そんな広一が「この人なら」と唯一、人間的な関心を寄せたのが美術教師の二木良平だった。穏やかな人気教師で通っていたが、それは表の顔。彼が自分以上に危険な人間であると確信する広一は、二木に近づき、脅し、とんでもない取引をもちかける――。嘘と誠実が崖っぷちで交錯し、追い詰めあうふたり。生徒と教師の悪戦苦闘をスリリングに描き、読後に爽やかな感動を呼ぶ青春小説。2019年ポプラ社小説新人賞受賞作。