夏木志朋のレビュー一覧
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少しずつ、自分が何が好きだったのかがわからなくなっていった。それでいい、と思った。こうして元の自分が消えてしまえば、きっともう少し息がしやすくなる。
それでも、中学に入り、卒業する頃になっても、空気は薄いままだった。(p.29)
人を見下して心をなだめる自らを蔑む気持ちと、その心理を知っているという自負、そうした自意識がキャベツやレタスの層になって、心を襞だらけにしていた。(p.31)
…理解不能なものをこうして「そういうものだ」と押しつけられると、こっちが、明文化されていないものに関しては何が本当で嘘なのかを見抜くのが不特手なことに付け入れられている気がして、不快で、不安だった。そしてなぜ、 -
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ネタバレいわゆる「普通」がわからない田井中と、本質的に変わることは無理であると悟り、普通になろうとするのではなく、「普通という名の皮」を被って生きることを選択した二木先生。
性的嗜好がなんであれ、確かにそれも含めて自分自身であり、あるいはその人自身なのだから、誰かがとやかく言う筋合いはないのである。
とにもかくにも読んでいて自分の心を無理矢理覗かされているような気もするし、もうやめてくれと言いたくなるような展開もある。
しかし読み終えた時に、自分自身の生き方と向き合っていくことの大切さ。そして他人と関わって生きていくことの難しさを意識させられるのである。 -
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ネタバレ「きみは前に、自分は内面を掘り下げて生きてるタイプだとかどうとか言ってたな。
結構なことだけど一人じゃ限界があるぞ。下手な自己修正を重ねた紛い物の自分を信じ込む前に、他人を反響板にしてみたらどうだ。」
アスペルガー気味な高校生とロリコン趣味の先生の物語
思春期特有の高い自意識を持ってる田井中と普段とは全く違う皮肉っぽくて口が悪い二木先生のやりとりが面白かった
人から受け入れられない趣向を持ってしまった二木先生のそれまでの人生で散々悩んだ末に獲得した生き方が印象的だった
「隠して生きる」という田井中の手本になる方法は精神的にしんどいものであるだために自分を好きになる必要がある。
自分を好 -
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第173回直木賞候補作。今更読みましたが、とても面白かったです。
3編の中短編が収録されています。
どの話も、どんな結末になるのか全く予想がつかずハラハラしながら読みました。
冒頭から不穏な気配がビンビンに漂っていて、登場人物は日常を逸脱していきます。ホラーか怪談のような結末に至ると思いきや…意外な結末が待ち受けていてびっくりしました。
登場人物の置かれたヒリヒリした日常感の描写がお上手で、そこに引き込まれました。
例えば、1話目の『場違いな客』では、エキゾチックアニマル専門のペットショップで働く主人公はまだ20歳なのですが、子どもの頃父親が出ていき母親も亡くなって一人暮らしをしているという -
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田井中の気持ちがよく分かる。
自分のことを上にして見ないと心が持たない気持ち。自信がないから、自分より優れている人間がいると、その人に嫉妬とか劣等感を覚えちゃう。
その人の粗探しをして、自分の方が優れてたら安心するんだよね。性格ヤバいと思うけど、自分の心を守るためには方法がこれしかない人もいると思う。
褒める時に「〜みたい!」っていう人いるよね。
作品に似てるって言いたい訳じゃなくて、自分の中にある良いと思った作品と同じ分類にして「それみたいにすごい!」って言いたいんだと思うけど、自分の気持ちをそのまま言語化できないからコピペして話すんだろうなとは思ってる。
まあ自分にもブーメランですけどね -
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ネタバレ教師としては決して許されない性的志向を持ちながらそれを巧みに隠して過ごす二木先生と、「普通」になりたいとずっと願いながらも周りから浮いてしまっている高校生の田井中の物語。
終盤、二木先生の性癖が生徒たちにばれ、生徒から糾弾されることとなるが、彼らが糾弾する根拠となる「普通」も「許されない」ことも時代、国、帰属する集団によって全く異なるのに、高校生の時点で既に生徒たちが強固に「普通」と主張するものを持つに至るのは何故なのだろう、と改めて「多様性」ばやりの昨今の風潮と共に考えさせられた。
戦国時代には人殺しも10代での婚姻や男女差別も何ら珍しいことではなかった一方、現代では普通のことになりつつ -
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2025年・第173回直木三十五賞候補作となった本作。デビュー2作目にしてこの作品群というのは印象的です。三編から成る中短編集。
どの作品もストーリー展開に捻りがあります。
タイトルの「N」に主題を求めたくなりますが、三作目まで読むと、ゆるやかな連作性があり、噂されている隣人かなと思いますが、「Normal」の逸脱としたい気持ちがあります。
「場違いな客」
“僕の夢のジェネリック”という表現が秀逸。ジェネリックという語の肯定性が、そのまま違和感を薄めて 日常に非日常が滑り込む。やがて何事もなかったかのように日常へ回帰する運びも含め、いわゆるイヤミスを想定させながら外してくる展開が貴重。
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3話がそれぞれの日常の中にちょっとの逸脱を描かれているように一見そう見えます。
最後読み終わり、変わった行動をする登場人物を追っていくと、なんとなく自分もそういうことあるなと感じるところもあり、自分も変わっているようにも思ってきます。
犯罪行為とはあくまでも人間社会が作り出した虚構に過ぎず、人に迷惑をかけないためにあるものであって、その紙一重な悪いことは、やはり人間みな考えろこともあるのではと感じます。
笑ってしまうところもあるんだけど、でもなんか、みんな可哀想にも見えて、寂しく、孤独でなんとも後味悪く、いつまでも残りそうなお話しですね。
経験が浅いからといって、アツシをいじめないでほ -
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ポインティのおすすめ。
色々感想はあるけどまず、二木先生レスバが強過ぎる。
自分が不利な立場でも、瞬発的に的を得た発言切り返せる能力が普通に羨ましい。
セクシャルマイノリティに関しての考え方もなるほど納得。
最後の美術室のシーン、生まれ持った性質とうまく付き合って生きている人を吊し上げて晒して集団で叩くのは、現代のSNSに似ている。
自分が多数派であることに一種の愉悦を感じるのだろうなと思う。
日本人に大切なのは程よい他者への無関心と、話の中でも言ってたけど自分のことを好きになることだなぁとか思ったりした。
表紙からホラーっぽい話かと思いきや中盤から青春展開になりいい意味で裏切られた。