坂上泉のレビュー一覧

  • へぼ侍

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    西南戦争について、西郷隆盛や薩長の高官からの目線ではなく、一兵卒や市政の人達の視点から描かれているのが新鮮でした。
    明治維新が起きて、それに伴う希望だけでなく、江戸時代の名残を捨てられない戸惑いも描かれており、胸に残りました。
    私もそうなのですが、普段歴史小説を読まない人でも、のめり込めると思います。オススメです。

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    2026年06月08日
  • インビジブル

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    ネタバレ

    「ババヤガの夜」を抑えて、第74回日本推理作家協会賞をとった作品だったので。

    面白かった。
    戦中から戦後の人間性がむき出しになる時代を舞台に、
    大阪市警視庁という8年しか存在しなかった自治体警察を取り上げ、
    東京帝大卒の国家地方警察の警部補と
    新制中学から警察学校卒の大阪市警視庁の巡査が組むという、
    硬派な作品で面白かった。
    いかにも、という感じの大阪の雰囲気や物言いも。

    国会議員秘書と政治的な活動をしていない「政治団体」の長が、
    同じように顔を麻袋に包まれていた状態で殺された。
    国会議員のガードは固く二人の関係が判らないまま、
    さらに麻袋を頭に被せられた死体が川で見つかる。
    自治体警察を吸収しようとする政情の中、
    大阪市警察庁内の派閥争いや地元政財界との癒着、国警との軋轢が、
    捜査に不穏な影を落とす。

    満州でだまされて農場も家族も失い、
    シベリアで収容中に病いの友をで自分の手で殺さなければならなかった復讐のためとはいえ、
    犯人がルンペンを使ってアヘンを売りさばいていたのはちょっと納得がいかない。
    しかもそれをえびす様のお導きだ、としていたことも。

    推理協会の先生方が「ババヤガの夜」よりこちらに票を入れたのもわかる気がする。
    とりあえずミステリーっぽい。
    できれば、あと1.5倍ぐらいの長さにしてほしかった。
    大阪府警察庁最後の事件として。

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    2026年05月17日
  • インビジブル

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    「インビジブル」
    見えない真実が炙り出す、戦争と人間の闇
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    ●第一章:引き込まれた「読みたい本」との出会い

    数年前、ふと目に留まった一冊のタイトルがあった。「インビジブル」。その当時、まだ手に取る機会はなかったが、「いつか読みたい本」リストの奥深くに、その名は確かに刻まれていた。そして今、ようやくそのページを捲る時が来た。
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    ●第二章:戦後大阪に交錯する、二人の刑事と「満州の影」

    物語の幕開けは、敗戦の傷痕が生々しい大阪。そこに登場するのは、対照的な二人の刑事だ。一人は理論的でスマートなキャリア組、もう一人は叩き上げで泥臭いノンキャリア。彼らが追う事件の背後には、想像を絶する闇が広がっていた。

    そして、物語に重くのしかかるのが、満州で捕虜となり、奇跡的に帰還した一人の男の存在である。彼の過去こそが、この物語の核心をなす。

    当時の日本が、戦況を有利に進めるため、満州で大麻の栽培・販売に手を染めていたという衝撃の事実。軍の士気を高めるためと称し、兵士に薬物を供給し、その利益の半分を国に上納させていたという、まさに「常識が見えなくなる世界」がそこにはあった。大麻事業で働かされていたのは、日本から移民した日本人。彼らは酷使され、敗戦とともに捕虜としての過酷な運命を辿ったのだ。

    この事実は、戦争というものが、いかに人間を非人間的に変え、倫理観を麻痺させるものなのかを痛感させる。
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    ●第三章:「インビジブル」が照らし出す、戦時と戦後の人間の姿

    「インビジブル」というタイトルは、この物語の多層的なテーマを見事に言い当てている。戦争という狂気は、まさに常識を「見えなくする」世界だった。勝利のためならば、人に薬を与え、機械のように酷使する。そんな非人道的な行為が、国家の目的としてまかり通る。

    そして、戦時を生きた父と、戦後に育った息子。息子から見た父親は、酒や薬に逃げ、かつての生き様が「見えない」。しかし、それは父親だけの問題ではない。
    戦時中に「見えない」形で進行していた大麻事業は、戦後も形を変えて、社会の「見えない」場所で暗躍している。

    表向きは社会貢献を謳う政治家が、裏では麻薬製造会社の
    実質的なオーナーとして、誰にも見向きもされない浮浪者たちに薬を売りつけ、利益を得ている構図は、戦後の社会に潜む「見えない」闇を象徴している。国の目が行き届かない、社会から「インビジブル」な存在である人々を食い物にする。
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    ●第四章:今こそ問い直す、「見えない」ものの存在
    「インビジブル」は、単なる犯罪小説ではない。

    戦争の持つ狂気、その中で失われた人間の尊厳、そして戦後の社会に横たわる倫理観の崩壊を、生々しく描き出す社会派作品だ。

    敗戦から長い年月が経ち、戦争の記憶が薄れつつある現代において、本書は私たちに改めて問いかける。

    あの戦争の裏側で、そして戦後の復興の陰で、一体何が「見えなく」されてきたのか。

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    ●さいごに
    この物語は、過去と現在を繋ぎ、我々が見て見ぬふりをしてきた「不都合な真実」を突きつける。

    そして、私たちの日常の中にも、果たして「インビジブル」な存在がいないだろうか、と問い直すきっかけを与えてくれるだろう。真に恐ろしいのは、狂気が「見えない」形で社会に浸透していくこと。この小説を読み終えた時、私たちはきっと、今まで「見えなかった」ものに気づかされ、深く考えさせられることになるだろう。

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    2025年07月12日
  • 新世代ミステリ作家探訪~旋風編~

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    めっちゃ面白かった。朝倉秋成がキャラ萌えに興味ないのは察してたけれど、ショーハショーテンのガラスの靴が割れたはすごい良いキャラなので、何か転換があったのかな? 今村昌弘がミステリ通ってないのは意外かも。白井智之は想像と違う感じの人。

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    2025年04月29日
  • へぼ侍

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    ネタバレ

    インビジブルもそうでしたが、坂上泉先生の作品は奇を衒ったところがなく頭にありありと情景が浮かぶところが好きです。
    武功を立てて道場の再興を夢見る主人公の錬一郎をはじめ、登場人物が皆いきいきとしていて、史実を題材にしたフィクションだとわかっていても本当にあったことのように感じられました。
    個人的に、山城屋の娘と結局くっつかなかったところが良かったです。

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    2022年05月22日
  • へぼ侍

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    明治10年の西南戦争を舞台に、「へぼ侍」と揶揄されながらも武功を目指す17歳の練一郎。

    小説は戦闘よりも、明治維新では負け組側で戦った仲間たちの日常と人物像、「西郷札」騒動、練一郎の成長と心の変化に重点を置く。

    巻末に参考文献リスト。重厚な歴史娯楽小説

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    2026年05月21日
  • インビジブル

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    昭和29年、大阪城付近で政治家秘書が頭を麻袋で覆われた刺殺体となって見つかる。大阪市警視庁が騒然とするなか、若手の新城は初めての殺人事件捜査に意気込むが、上層部の思惑により国警から派遣された警察官僚の守屋と組みはめに。帝大卒のエリートなのに聞き込みもできない守屋に、中卒叩き上げの新城は厄介者を押し付けられたと苛立ちを募らせるが―。はぐれ者バディVS猟奇殺人犯、戦後大阪の「闇」を圧倒的リアリティで描き切る傑作長篇。
    私が生まれる4年前まだ敗戦の世相が色濃かった時代だったのだ実感。傑作でした。

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    2026年03月28日
  • インビジブル

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    戦後の大阪、警察組織の解体統合の時代。
    大枠の事件自体は、戦争の暗部~現代への因縁。
    あるあるっちゃあるある。
    世界観を味わう作品としてよかった。
    謎解きとかそういう要素はあまりない。渚の蛍火と同じ。

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    2026年03月13日
  • 渚の螢火

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    本土復帰前夜の沖縄を舞台にした骨太サスペンス。胸が熱くなる感じではないが、登場人物がそれぞれのアイデンティティーを求めてもがく姿は読みごたえがありました。

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    2025年12月06日
  • 渚の螢火

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    小説としての面白さもあるが題材となっている外国だった時代から日本の地域の一員となる頃の沖縄背景が描かれていて興味深い。沖縄が好きなだけにより感情移入できた。

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    2025年09月21日
  • インビジブル

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    戦後の一時期の大阪警視庁を絡め、満州の闇を含めて描くミステリでなかなか面白かった。

    2941冊
    今年169冊目

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    2025年06月19日
  • インビジブル

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    ネタバレ

    戦後日本の社会、戦争被害者の境遇、それらの要素を全てが正反対な2人の主人公が事件解決のために紆余曲折しつつも進むという王道ミステリー小説にうまくまとめ上げた作品。文字数も難しい文字も多く、会話にはその当時さながらのこてこての関西弁が多く、読みづらい部分は多かったが、それ以上に物事のテンポが良く、ストーリーの進展が気になって熱中して読むことができた。

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    2025年06月18日
  • 渚の螢火

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    難しい時代の難しい場所を舞台にした作品で、サスペンスは最高ですし、終盤も含めて全編良かった。

    2916冊
    今年144冊目

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    2025年05月24日
  • 渚の螢火

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    1972年の復帰直前(の2週間)を描いたノンストップミステリー。奪われた100万ドルを追ううちに明らかになる真実や哀しい過去。
    複雑な出自を持つ琉球警察の主人公は自分のアイデンティティーに迷いながらも、真実を求め進む。
    良かった。復帰前後のヒリヒリ感(米軍への渦巻く感情を含めて)も伝わる。
    その時期の史実も織り込まれてて、巻末の解説からしても相当の知識量と調査量が分かる。
    沖縄にこの歴史があったこと、こういう感情が渦巻いていたこと。感じ取るのは難しくても忘れないようにしたい。

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    2025年05月09日
  • インビジブル

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    ネタバレ

    大阪市警視庁・・・GHQが産んだ時代のあだ花である自治警察が警察法改正で現在の警察体制になる時代背景が、物語の本筋によく絡み独特の景色を読者に見せてくれる
    若手である新城洋巡査にとっては初めて帳場がたった殺人事件捜査だが、鼻持ちならぬ国警出向者(帝大卒エリート)守屋と組ませられ衝突しながら相手を理解する構図がうまい
    この時代の一面を知った気分にさせる一冊です

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    2025年05月06日
  • インビジブル

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    戦後間もない大阪。警察は地方自治体が運営する「自治警」と、より広範な領域を担当する「国警」の二つに分かれていた。そんな中、議員秘書が殺害される事件が発生し、次々と同じ手口の殺人が続く。大阪府警視庁(自治警)の叩き上げの若い巡査・新城と、国警から派遣されたエリートの守屋は、異なる価値観や立場を持つ者同士ながら、コンビを組むことになる。対立しながらも互いの過去や信念を知るにつれ、少しずつ信頼を築き、事件解決のために奔走していく――。
    本作では、戦後の混乱期における大阪の街や人々の姿が生き生きと描かれ、時代の息遣いが伝わってくる。歴史に疎い読者でも、その世界観をしっかりと味わえるほど、細部まで丁寧に構築されているのが印象的だった。物語の序盤は、当時の警察制度や戦争後の国家のあり方についての説明が多く、やや硬めの印象を受けたが、登場人物の内面が徐々に明かされるにつれて、それぞれの信念の背景にある人生を理解し、共感するようになった。異なる立場の者同士がぶつかりながらも協力し合う様子は、緊張感がありつつも胸が熱くなる展開だった。

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    2025年04月14日
  • へぼ侍

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    錬一郎は明治維新で没落した家を再興すべく西南戦争へ参加する。
    そんな彼を待っていたのは、一癖も二癖もある厄介者ばかりの部隊だった。

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    2024年11月12日
  • 新世代ミステリ作家探訪~旋風編~

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    近年、活躍が目覚ましいミステリー作家10名へのインタビューをまとめた作品。

    私にとっては著作を読んだことがあったり、積んでいたりする作家さんが大半。そんな彼らの作家としてのバックボーンや創作に関することは、とても興味深く読めました。

    これらの面白く読めたのも、インタビュアーの若林踏さんが持つ話を引き出す力に依ると感じています。氏のきらりと光る分析力、古今の作品に対する理解力あってのクオリティ。

    このインタビュー集はシリーズ2作目とのことで、1作目も気になるところです。

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    2024年09月23日
  • インビジブル

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    敗戦後10年頃の混沌とした社会
    「戦後」という言葉の時期と意味は、人によって異なる。
    いつの時代もうまく立ち回り自己の利を溜め込みのしあがる人、前を向いて進むことができずに過去を引きずりながら底辺で死んだように生きる人。

    横溝正史の描く風景と松本清張の描く社会情勢が生暖かい空気のなかで匂い立ち、横山秀夫の警察小説の雰囲気も醸し出してくる。

    極めて重い題材を関西弁の軽やかさでかわしながら核心へと迫っていく展開で、直木賞候補にノミネートされたのも頷ける。

    えーもんみせてもろたわ、おおきに。

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    2024年07月25日
  • 新世代ミステリ作家探訪~旋風編~

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    前作も読んだけど、やっぱり面白いなぁ。
    デビュー10年以内という条件がいいのかも。

    記憶が薄れたからかもだけど、前作のほうが読み応えがあったかなあ。作家さんも好きな人が多く。

    読者遍歴聞くと似通った感じになるならかなぁ。

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    2023年12月21日