坂上泉のレビュー一覧
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「インビジブル」
見えない真実が炙り出す、戦争と人間の闇
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●第一章:引き込まれた「読みたい本」との出会い
数年前、ふと目に留まった一冊のタイトルがあった。「インビジブル」。その当時、まだ手に取る機会はなかったが、「いつか読みたい本」リストの奥深くに、その名は確かに刻まれていた。そして今、ようやくそのページを捲る時が来た。
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●第二章:戦後大阪に交錯する、二人の刑事と「満州の影」
物語の幕開けは、敗戦の傷痕が生々しい大阪。そこに登場するのは、対照的な二人の刑事だ。一人は理論的でスマートなキャリア組、もう一人は叩き上げで泥臭いノンキャリア。彼らが追う事件の背後 -
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坂上泉『渚の蛍火』双葉文庫。
『インビジブル』は予想外に面白い警察小説であったので、本作にも大いに期待したいところだ。
帯に書いてあったが、本作は今年の秋、某有料衛星放送でドラマ化されるようだ。
舞台は本土復帰を目前に控えた沖縄で、当時は米国政府と琉球政府とに統治され、本土からはパスポート無しには渡航出来ず、通貨はドルという、日本人でも米国人でもないという非情な扱いを受けた沖縄の人びとの苦悩が覗える。さらには駐留する米軍による暴行や犯罪に苦しむ沖縄の人びと。
そんな沖縄で、日本への返還を台無しにするような大事件が発生し、警察官たちは秘密裏に事件を解決するよう命ぜられるのだ。
二転三転 -
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坂上泉『インビジブル』文春文庫。
初読み作家。日本推理作家協会賞、大藪春彦賞のダブル受賞の警察小説。
水と油の正反対のコンビが連続殺人事件の謎に迫るという有りがちな設定なのだが、戦後間もない大阪が舞台とあって、なかなか興味深いストーリーが展開される。
また、メインの物語とは別に描かれる満州に渡った男の過酷な物語からすると、間違い無くこの男が犯人なのだろうと思うのだが、犯行動機が見えて来ない。
戦後の昭和29年。大阪城近くの三十八度線と呼ばれる場所で政治家の秘書が頭に麻袋を被せられた刺殺体となって発見される。
大阪市警視庁の若手、新城洋巡査は初めての殺人事件捜査に臨むが、警視庁上層部 -
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戦後間もない大阪。警察は地方自治体が運営する「自治警」と、より広範な領域を担当する「国警」の二つに分かれていた。そんな中、議員秘書が殺害される事件が発生し、次々と同じ手口の殺人が続く。大阪府警視庁(自治警)の叩き上げの若い巡査・新城と、国警から派遣されたエリートの守屋は、異なる価値観や立場を持つ者同士ながら、コンビを組むことになる。対立しながらも互いの過去や信念を知るにつれ、少しずつ信頼を築き、事件解決のために奔走していく――。
本作では、戦後の混乱期における大阪の街や人々の姿が生き生きと描かれ、時代の息遣いが伝わってくる。歴史に疎い読者でも、その世界観をしっかりと味わえるほど、細部まで丁寧に -
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