あらすじ
西南戦争を痛快に描く、松本清張賞受賞作。
大阪で与力の跡取りとして生まれた志方錬一郎は、明治維新で家が没落し、商家へ奉公していた。
時は明治10年、西南戦争が勃発。
武功をたてれば仕官の道も開けると考えた錬一郎は、意気込んで戦へ参加することに。
しかし、彼を待っていたのは、落ちこぼれの士族ばかりが集まる部隊だった――。
解説・末國善己
※この電子書籍は2019年7月に文藝春秋より刊行された単行本『へぼ侍』を加筆・修正した文庫版を底本としています。
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インビジブルもそうでしたが、坂上泉先生の作品は奇を衒ったところがなく頭にありありと情景が浮かぶところが好きです。
武功を立てて道場の再興を夢見る主人公の錬一郎をはじめ、登場人物が皆いきいきとしていて、史実を題材にしたフィクションだとわかっていても本当にあったことのように感じられました。
個人的に、山城屋の娘と結局くっつかなかったところが良かったです。
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大阪東町奉行所与力で剣術道場を営む父が鳥羽伏見の戦いで戦死、幼い頃より薬問屋で丁稚奉公をしていた志方練一郎は明治政府に剣術で仕官するべく西南戦争に17歳で志願兵として参加する。戦争を通して剣術が役に立たないこと、生死をかけた戦いの虚しさ、Pursuadeがこれからの剣術に変わるものと知り、除隊後東京の慶應義塾で学び、大阪にて出版業界にその人ありと呼ばれる人物となる。歴史を基にしたにしたフィクション。
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明治時代の物語、話の核心は、武士の世が終わり、新しい明治政府の下で「勝ち組」と「負け組」が分かれる中、錬一郎は剣術での立身を夢見るが、西南戦争では刀ではなく銃が与えられ、武士のロマンが通用しない時代に直面(この価値観のズレは、現代の「時流に乗り損ねた」人々へのエールとも解釈できそう、コロナ禍での就職難など、変化の激しい現代社会とも共鳴します)
錬一郎やその仲間たちが旧来の武士道や誇りと、近代社会の現実とのギャップに苦しみ、従軍記者の犬養毅の言葉であるパアスエイド(言論の力)を身に着けたいと挑む姿で終わる青春物語でもある
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歴史小説の分野となると、どうしても、史実か否かを気にして読んでしまう。史実から外れてしまう、空想が強すぎると、個人的にはどうしても世界に入れなくなってしまう。青春ストーリーとしては、そこそこ面白いかと思うけど、ちょっと長すぎる。
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202107/経歴を偽り入隊した主人公、西南戦争を舞台にした物語。文章が私にはあわなくて読み始めはとっつきにくかったけど、史実と創作の加減も面白かった。
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若い時代物作家の作品。なるほど、松本清張賞受賞は「西郷札」が描かれているからではないのだと、納得のおもしろさでした。
生活のため商家へ奉公していた主人公は、明治維新で没落したもと侍、威厳を取り戻したく、西南戦争に参加してほんとの侍になろうとしたのか。
歴史上実在の人物たちを登場させて交錯し、主人公を生き生きとさせる術はなかなかのもの。
例えば新聞記者(そうだったのですね)犬養毅は主人公の道しるべになり、有名な乃木希典にも会い、もちろん西郷隆盛にも逢ってしまう。けがを治療してもらった軍医の手塚は、解説を読むまでわからなかったが、最後の最後に登場する大毎新聞の記者は、わたしの好きなある作家とおぼしき、謎解きの愉快さでした。
次作品の『インビジブル』は直木賞候補になって、こちらもおもしろいとか、期待の新人ですね。