ソン・ウォンピョンのレビュー一覧
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4人の男女の季節と共にゆらめき移ろいゆく関係性を、繊細に、けれど明快に描き上げた作品です。
それぞれの持つ個性、抱えていた過去、今も持つ秘密。それらが、芽生えた恋情を後押ししたり、邪魔をしたり影響させていく。「とにかく好きだから」でなんとかなった(かもしれない)十代ではない彼らは、だからこその選択をして、それは新たな悲しみや傷も生んでしまう。
けれど、確実に未来へは進んでいく。
そのうちに、受けた傷もいつか未来の日向にかざせばプリズムのように美しく光る、自分の糧になるのかもしれないと、ささやかに思わせてくれる温かみのある物語でした。
簡潔だけれど柔らかな比喩や言い回しが巧い訳文が今回もとても響いてきて、この作者さんと訳者さんのコンビは絶妙だな、と思えました。 -
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「コンビニ人間」を想起させる
「共感能力の低い主人公」と「"普通"を理解しつつ、そうは振る舞えない社会不適合者」との交流は村田沙耶香著「コンビニ人間」を想起させる。作者のソンウォンピョンが「コンビニ人間」の作者と同世代の同性であることも興味を引く。
日本の「コンビニ人間」は、ああいった結末で芥川龍之介賞を受賞したわけだが、韓国の「アーモンド」はどういう結末を用意しているのか?
純文学と、エンタメ小説との違いがあるから、どちらがどうとは言えないが、私はコンビニ人間の終わり方が好きだった。ただ、この本のような終わり方を好む人も多いだろうなとは思う。 -
Posted by ブクログ
本屋大賞の翻訳小説部門1位ということで、気になったため読みました。韓国の小説は初めて読んだけど、翻訳が素晴らしいのかすんなり読めた。
主人公の真っ直ぐな気持ちやセリフが良かった。ユンジェの周りに、温かい人たちがたくさん居てくれたことや、ゴニやドラと出会えて良かったなと思った。お母さんやおばあちゃんとの描写もとても好き。
最後、死んだのか?生きてるのか?が分からなくて気になって気になって、、。あまり深く考えなくて良いところなのかな?
感情を持たない主人公の目線なので、淡々と語られてはいくけど、描かれ方によってその場の光景や雰囲気がよく分かってしまうようで不思議だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ生まれつき扁桃体が小さく、感情をうまく感じ取ることができない少年ユンジェが、母親や祖母、シム博士、そしてゴニやドラとの関わりを通じて、少しずつ人の感情を理解していく物語。
物語の最後には、友達を守るために自分を犠牲にして行動するところまで成長したのだと思う。人との関わりの中で少しずつ変化していくユンジェの姿は、この作品の大きな魅力だと思う。
ただ、私は「感情を理解すること」と「感情を感じること」の境界が少し曖昧に感じられ、そこに引っかかってしまった。
ユンジェは母親から感情について教えられてきたため、相手が「嬉しそう」「悲しそう」といった、相手の感情の状態を認識することはできる。しかし、それは「感情を理解している」ということなのだろうか。それとも、単に相手の状態を認識しているだけなのだろうか。
例えば、ゴニがユンジェの感情を引き出そうとして蝶を殺そうとする場面で、ユンジェは蝶が「苦しんでいる。やめろ」と言う。この時点でも、ユンジェはすでに他者の苦痛を認識し、それに対して「やめろ」と行動を起こしている。では、物語を通してユンジェが新たに獲得した「感情を理解する」とは、これと何が違うのだろうか。
相手の感情を認識すること、感情の意味を理解すること、そして自分自身の中にその感情が芽生えること。その違いがこの物語の中では私にはやや曖昧に感じられたため、ユンジェの成長を十分に実感できなかった。
これは私の読解の仕方によるものなのかもしれない。それでも、今回はどうしてもそこが気になってしまった。
機会があれば、再読してみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
前回読んだアーモンドが良かったのでこちらも。
なかなかに重たい話だった。
社会的に弱い立場の人間が集まってヘイトを起こすけど、結構なにも変わらない。まわりはどんどん進んで焦りを感じるというもの。
搾取されて声を上げること出来ないではなくて、やらない人たちにとって、ギュオクの行動は勇気ずけられる。
ただ、一時の騒ぎにしかならないのだとしても。
韓国の社会事情には詳しくないが、日本でも生きずらさを感じている人はいると思う。
挑戦することへ尻込みしてしまう歳だからこそ行動を起こせず、ただ黙って静観してしまう。
みんなが自分の満たされない人生にこのままでいいのかと自問自答していく。
何だかとても考えさせられる話だった。 -
Posted by ブクログ
韓国のお国事情はよく知らないが、日本の閉塞感と似ているのかも?
大学を出た人でも自分の希望する会社に入れるのは難しく、入れたとしても会社都合で簡単に切られる。労働人口は少子化の影響で減っているはず。どこの会社も人手不足のはず。大企業程、会社を守る(利益)を優先して人を育てる努力をしない。いつからこんな風になってしまった。
1988年生まれ(その少し前から)の日本人も同じような状況だったと思う。
そして今、なんとか中堅くらいまで勤めてやっと下の子が入ってきたら、その子たちには「働き方改革」ということで残業は極力させるなとか言われて。何故か「働き方改革」は自分たち世代にはそれが適用されない!そんな世代の人たちを身近にみる。
がんばれ!自暴自棄にならないで!上の世代の人間はあなた達より先に寿命を迎える。次の時代を作るのはあなた達世代なんです!それまで心身共に健康である事を願っています。 -
Posted by ブクログ
2020年の本屋大賞・翻訳小説部門第1位。
脳の扁桃体の異常で、感情というものがわからない高校生の主人公・ユンジェ。
祖母と母親が通り魔に襲われた時も、ユンジェは恐怖や怒りを感じることはありませんでした。
そんな彼は当然、クラスメイトからも浮いた存在。フラットに目立たず学校生活を送ろうと努めます。
ある日、ユンジェの家(古本屋)にやって来た人物。彼の頼み事を引き受けることから、彼の生活が少しずつ動いていきます。
生い立ちから複雑でいろいろくぐり抜けてきた同級生・ゴニとの出会い。出会い方が特殊で、それによって厄介者のゴニの抱える憤りもさらに伝わってきます。
常にトゲトゲのゴニとクールなユンジェのやり取りの変化や、走るのが大好きな女の子・ドラの存在もよかった。
何かによって突き動かされていくユンジェ、感情じゃないとしたら何なんだ、というところ。
そこでポイントとなるのが母親・祖母の言葉。どれもユンジェへの想いが詰まっていて、それをユンジェがちゃんと理解しよう、大事にしようというところも熱い。
ラストはびっくりポイントがいくつもあり、とりあえず納得しましたが…うーん。帯の煽り文句も相まって少ーし興ざめ。そういうものなんかなぁ、いい話ではあるけどなぁ。 -
Posted by ブクログ
「ジヘ(知恵)」を「ミスワイズ」って呼ぶのがとてもいいな
9ヶ月で正社員打診が来るのか。いいな。私5年かかったぞ
ジヘの非正規ならではの切なさはよくわかったけど、最終的になんか素晴らしい会社に入社できてチーム長になってたしで、いいなぁ
あとは英米の小説よりよほど「わからんこの風習」みたいなのがぼこぼこっとあるのが韓国の小説。留置所から出てくると豆腐食べるとか
ウクレレ教室のささやかな発表会は良かった
「舞」という字を指してムインが説明した内容
「・・・舛という字で、入り乱れるという意味です。つまり燃え尽きて残った灰が、再びめまぐるしく乱れ飛ぶのが舞いなんです」