ソン・ウォンピョンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
主人公のキム・ジヘはよくある名前の通りに普通で平凡な三十歳。会社で非正規雇用で働いて、自分はこのままでいいのか、どうせこんな自分なんかじゃ何もできないと日々悩み、苦しんでいた。
そんな最中に、世の中に反撃の狼煙をあげようとするギュオクと出会う。
這いつくばりながらも、少しずつ勇気を出して一石を投じようとする。
結局とても大きく世間を揺るがすような反撃はできなかったけれど、小さい範囲で、たとえ声をあげても届かなさそうな闇にだって、一人でだって、声を上げられるんだ、小さな反撃も繰り返せば何かが少しずつ変わっていけるかもしれない。
そう思わせてくれる、爽やかな読後感でした。
日本にも声なき声がたくさ -
Posted by ブクログ
人間心理のおかしみを悲喜さまざま、細やかに、ジャンルを問わずに描き上げた短編集でした。人の心に踏み込む心理表現の巧みさがほかの作品同様卓越していて、文章を追うだけでしみじみと感じ入るものがありました。
表題作では他人がエゴを滲ませながら厳しい日々をやり過ごさなければならない現実をビターに描き、「四月の雪」ではつかの間触れ合った外国人との交流により仄かな未来がそっと浮かび上がるさまを、「箱の中の男」では「アーモンド」作中の出来事と被らせながら辛い日々を送る青年のささやかな救いを与える。
どれもが単純ではない人の心情を繊細に描き上げ、また、明快ではないけれどそっと未来を指差すような温かさを滲ま -
Posted by ブクログ
8編の短編集。
どれも人間心理を掴んでいるなあと…。
zip〜家庭を築いた女の後悔ばかりのようで、身動きすることなく流されていく生活は膿んでしまっている。「家」から抜け出そうとしながらずっと出ることができない。これからも…。
「このお話の終着点が、おまえだからだよ。」と孫娘に言ったのがこわい。
アリアドネの庭園〜予測したくない未来。
たぶんこれに近い未来かも…と思うとモヤモヤ。
他人の家〜ルームシェアで暮らす部屋の不自由なところと値段に折り合うところ。だがそれも期限がある。どうする、どうなる…。
箱の中の男〜アーモンドの番外編。途轍もない経験をすると他人の存在を行動を過剰に意識してしま -
Posted by ブクログ
ネタバレ「アーモンド」、「三十の反撃」のソン・ウォンピョンさんの恋愛小説。四人の男女の心を繊細に描写している。イェジン、父親が子牛を売ったお金で買ってくれた大きなプレゼントボックスに入っていたピラミッドの形の三角プリズム、それを一番気に入っていた。光を虹にかえる魔法のおもちゃ。でも棚の上に置き忘れたそれを見つけて取るときに取り落とし、足の甲に落ちた時の痛さと脚についたひっかき傷。美しすぎるものはいつか傷を残すのか…。ランチタイムの休憩に外でコーヒーを飲んでいてよく見かける人がドウォンだった。ただそれだけだったのだが…。ドウォンの携帯にスミンのメッセージがもう九通目。返信がほしいというメッセージだ。ドウ
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Posted by ブクログ
4人の男女の季節と共にゆらめき移ろいゆく関係性を、繊細に、けれど明快に描き上げた作品です。
それぞれの持つ個性、抱えていた過去、今も持つ秘密。それらが、芽生えた恋情を後押ししたり、邪魔をしたり影響させていく。「とにかく好きだから」でなんとかなった(かもしれない)十代ではない彼らは、だからこその選択をして、それは新たな悲しみや傷も生んでしまう。
けれど、確実に未来へは進んでいく。
そのうちに、受けた傷もいつか未来の日向にかざせばプリズムのように美しく光る、自分の糧になるのかもしれないと、ささやかに思わせてくれる温かみのある物語でした。
簡潔だけれど柔らかな比喩や言い回しが巧い訳文が今回もと