【感想・ネタバレ】他人の家のレビュー

あらすじ

『アーモンド』の著者が贈る、極上の短編集!
ミステリー、近未来SFから、心震える『アーモンド』の番外編まで、珠玉の8編を収録

彼氏に振られ、職場をクビになり、賃料の値上げによって、今住んでいる部屋からの退去を余儀なくされた、踏んだり蹴ったりのシヨン。
部屋探しのアプリで、格安の超優良物件に出会った彼女は即、入居を決める。
格安なのには、理由があった--
本来二人で暮らすはずの部屋を、四人で違法にルームシェアしていたからだ。
優雅な独り暮らしには程遠いものの、そこそこ不自由のない生活を送っていたシヨンだが、ある日、オーナーが急遽、部屋を訪れる。
慌てた四人は共同生活の痕跡を消すべく、その場しのぎの模様替えをし、借主の親族のふりをするが……(『他人の家』)。
表題作ほか、人間心理の深淵をまっすぐに見つめた、傑作揃いの短編集!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

韓国の作家、ソン・ウォンピョンの短編集。短編なので、細切れ時間に読んで... なんて気楽に考えていたのですが、凄みのある内容で、「このテーマはどうですか、このテーマは....」と突きつけられる感じで、ページをめくる手が止まりませんでした。一気読みでした。この作家はすごい!不思議な世界に引き込まれました。非日常性、サスペンス的要素、底知れぬ深さも感じました。と同時に、ほんのりと希望や優しさも伝わってきます。

家、家庭がモチーフとなっています。人間の本質に迫る部分、現代社会が抱える問題への提言もあります。

タイトルにあるように「他人の家」をはたから見て読み進めているのに、読み終えると自分ごととして考えることを余儀なくされる、再読に値する本です。ただ、テーマが深いので、元気のあるとき読むのがおすすめです。

0
2025年03月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

非常に良かった。
「正確な文章を書きたいんです。辞書的な意味ではなく、あくまでも主観的な正確性という意味での。独創的でありながらぴたりと合うような。」
『アリアドネの庭園』は未来の日本を見ているようで怖かった。

0
2024年04月04日

Posted by ブクログ

ソン•ウォンピョンさん3冊目。毛色の違う短編たちで、どれも面白かった。「zip」「箱の中の男」「他人の家」「アリアドネの庭園」が好み。「zip」は自分の話かと思うくらい共感。「箱の中の男」はユンジェが出てきて嬉しかった。話の内容も、考えさせられるものだった。韓国って、日本と似たところが沢山あり、でも違うとこともあって面白い

0
2023年04月29日

Posted by ブクログ

正確な文章を書きたいとおっしゃる作者。
ずっと静かで落ち着いた、冬景色のような文章書く人だなと思った

●4月の雪
なんの解決にもいたってないが、ここで終わるの?とは思ったが、ほのかに優しい

●怪物たち
ほーん
不妊の話読んでたら気分悪くなるナイーブさを兼ね備えたことに驚く

●zip
題名センスがいい

●アリアドネの庭園
若者と老人。見え方の違いが皮肉。

●他人の家
ライトに読めて好きだった。現状に甘んじず、自分の絶対的な居場所、生涯過ごすことのできる場所の確保が大切であるように思えた。
涼しいようで寒い、乾いたそよ風みたいな読み心地。

●箱のなかの男
1番いいかも!

●文学とは何か
男の死とその友人と生徒が同じ作品を世に出す話。
細部がよかった。文学少女の内側がいい。

●開いていない本屋
2つ解釈ができて、元恋人同士だったのか、単になんとなく共鳴し合ってしまう二人が出会ってしまったのか、うーん。。。

0
2025年11月09日

Posted by ブクログ

離婚を決意した夫婦の家に民泊アプリで知り合った人が泊まりにやってくる『四月の雪』、働けなくなった夫を、双子の息子たちが殺すのではないかと妻が気を揉む『怪物たち』など、短編八編。どの主人公も、現在の暮らしに不足や不満を抱えていて、そうなった過去の出来事を憎んでいる。どうにか変えたいと思っている。けれど、変えられないのだから、折り合いをつけて、いや、折り合いをつけられなくても、生きていくしかないのだとわかっている。

「そう言った瞬間、ヨンファは、今を後悔したり、引き返したりすることはできないのだと悟った。すべてのことを元に戻し、起こらなかったことにするのは不可能だった。だったら可能なほうを選び、そちらの味方をしてあげなくてはならなかった。可能で確実なものは、目の前に見えている、この真新しい無限の子どもだった。」(『zip』)

どの短篇の主人公も、悲しみを抱いている。著者がこの短編集についてのインタビューで、「自分だけでなく他の世界にも視線を向ければ、逆に自分が深まっていくということ伝えたい」と言っていたと、訳者あとがきにあった。作者の言葉として書かれているが、そのことが、怪物ともいえる大衆(正義をまとった非理性とニセモノの道徳を武器として振りかざし、他人を打ち負かさなくては気が済まない人々)に、取り込まれないために必要なことなのだろう。

0
2025年07月26日

Posted by ブクログ

文化の違いというのでしょうか、登場人物の生活感、こだわりなど、何か違和感を感じながら読みました。
韓国の小説は初めて読んだかも、です。外国(ヨーロッパ、アメリカなど)の小説を読んでも違和感はないのに、韓国は外国でない同じアジア圏と思うからでしょうか。かといって、自国ではないといった感じです。ストーリーの題材や展開が、新鮮で、私に偏見があったのかもと思いました。もっと国民性を知りたいと思わせてくれました

0
2025年05月17日

Posted by ブクログ

やっぱりこの人の本が好き。
特にアリアドネの庭園は、SF小説が面白いと気づくきっかけになったかも。
どれも話が違くて、どれも面白い。それがすごい。

0
2024年05月12日

Posted by ブクログ

人間心理のおかしみを悲喜さまざま、細やかに、ジャンルを問わずに描き上げた短編集でした。人の心に踏み込む心理表現の巧みさがほかの作品同様卓越していて、文章を追うだけでしみじみと感じ入るものがありました。

表題作では他人がエゴを滲ませながら厳しい日々をやり過ごさなければならない現実をビターに描き、「四月の雪」ではつかの間触れ合った外国人との交流により仄かな未来がそっと浮かび上がるさまを、「箱の中の男」では「アーモンド」作中の出来事と被らせながら辛い日々を送る青年のささやかな救いを与える。

どれもが単純ではない人の心情を繊細に描き上げ、また、明快ではないけれどそっと未来を指差すような温かさを滲ませていて、そのやさしい著者の眼差しがとても素敵だと思いました。

「アリアドネの楽園」は、超高齢社会を迎えた日本においても充分にリアルに差し迫った。SFの体裁ながらも近い現実を見透かしたような作品に感じました。

どれもが少し毛色が違う趣を持ちながら、どの人物の心情にも寄りそえる。そんな、派手でもインパクトがあるわけでもないけれど、身近に携えたくなる作品集でした。とても良かったです。

0
2023年10月01日

Posted by ブクログ

ソン・ウォンピョン(손원평)さんの短編集。どの短編も登場人物の心理に惹かれる。自分にもそんな状況なら同じように感じる心があったかもしれないと思える。「箱の中の男」の弟の気持ちも分かる。見ないふりをしていればそれで厄介ごとは通り過ぎると。でもある突然の出来事であの時の女の子に出会えたのは、兄があの時に彼女を助けたからだった。それでまたある女性が助かったのだ。

0
2023年08月31日

Posted by ブクログ

8編の短編集。
どれも人間心理を掴んでいるなあと…。

zip〜家庭を築いた女の後悔ばかりのようで、身動きすることなく流されていく生活は膿んでしまっている。「家」から抜け出そうとしながらずっと出ることができない。これからも…。
「このお話の終着点が、おまえだからだよ。」と孫娘に言ったのがこわい。

アリアドネの庭園〜予測したくない未来。
たぶんこれに近い未来かも…と思うとモヤモヤ。

他人の家〜ルームシェアで暮らす部屋の不自由なところと値段に折り合うところ。だがそれも期限がある。どうする、どうなる…。

箱の中の男〜アーモンドの番外編。途轍もない経験をすると他人の存在を行動を過剰に意識してしまうのに気づく。

上記4作が特に心に残った。
深くて濃い、短編なのにずっしりと感じた。

0
2023年06月10日

Posted by ブクログ

"たぶん僕は、相変わらず箱の中に潜んで安全な人生を夢見るだろう。すでに凝り固まってしまった大人の心はそう簡単に変わるものじゃないから。それでも、誰かに向かって遠く手を伸ばすことはできなくても、握りしめた手を開き、誰かと握手するくらいの勇気なら、ときどき出せたりするんだろうか。"(p.206)

0
2023年05月18日

Posted by ブクログ

著者初の短篇集。8本の短篇が収録されている。
これまでソンさんは長篇作家だと思っていたが、短篇も滅法うまくておもしろい。男女の機微や親子関係、韓国社会を風刺した作品など、1篇ずつ違っていて、次はどんな作品だろうとわくわくしながら読んだ。中にはあの『アーモンド』と直接つながった作品もありびっくりした。
「四月の雪」、「他人の家」、「箱の中の男」が特に好みだった。

0
2023年03月26日

Posted by ブクログ

巻末の「作者の言葉」にはっとする。
世間の風潮と考えが外れるものは
排除しようとする今の時代だからこそ
自分と他人を
じっくり見つめることが大事で
たった一人の自分であり続けるためにも
他人への視線は
静かな眼差しであるべきなのだ、と。
まさにその言葉通り
誰かが誰かを見つめ、思うことで
自分自身を知ろうとする短編集だった。

0
2023年03月22日

Posted by ブクログ

ある作家の短編集とは思えないほどSFからミステリー、心温まる物語までバラエティに富んでいる。アーモンドの番外編「箱の中の男」が印象的。起きたことに“もしも“はありえず、誰かのつらさと喜びは紙一重で、しかしそのつらさと喜びは色鮮やかに多種多様なのだ。

0
2025年08月10日

Posted by ブクログ

短編集8篇
どの作品も生きづらい人生のその時々を切り取ってあり、重苦しい雰囲気である。韓国だけではないだろうが読んでいてしみじみ納得するところも多く、それがまた辛い気持ちに刺せられる。

0
2023年12月05日

Posted by ブクログ

低温で湿度の高い内容と文章に惹き込まれてしまうが、やはり短編集なのでアーモンドほどの衝撃は少ない。でも、癖になる文体。

0
2023年03月17日

「SF・ファンタジー」ランキング