呉明益のレビュー一覧
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今はなくなった台北「中華商場」という場所を舞台にした短編小説。子供時代体験したであろう色々な出来事の不思議さ、昂揚感、心がしめつけられる悲しみみたいなものを小説で見事に表しているなあと感じた。そんな色んな子どもたちの共通の記憶として「歩道橋の魔術師」がいて、各物語に影響を与えている。
面白かったので「自転車泥棒」「複眼人」なども読んでみたいなと思った。
村上春樹っぽい言い回しもところどころ見られる。ちょっと気になり調べてみると、とあるインタビュー記事に「ねじまき鳥クロニクル」を読んだことがあると話しておられた(作中にも村上春樹の名前が一度出てきた)。
p.246 彼女の完璧な耳たぶに注意を引 -
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明晰で硬質な言葉によって書き留められた自然描写のなんと素晴らしいことだろう。
自然は、うちに秘めた合理性と、完璧な精緻さによって僕等をいつだって驚嘆させる。
顕微鏡が捉えたかのような完璧さを、柔らかく滲ませて、水彩絵の具を何層も重ねていったかのように透かして見える奥行きを与えるのは、ひっそりと降る雨だけではない。
細密画には書き込めない、網膜に映らないものが自然の中には確かにあるのだ。
季節や天候の移ろいに、動植物の営みに、人は意味や徴しを見いだし、記憶や自己を重ねてゆく。つまりそれは、世界に物語りを付与するということ。
そうやって人は、目に映るあるがままの自然から、己のためだけに差し出さ -
Posted by ブクログ
草や木、海や山、鳥や獣や昆虫に混じって、人が物語を奏でる。
背景ではなく物語のkeyとして……
六つの中短編と挿し絵が一冊の物語としてまとまる。
これは、「ネイチャーライディング(自然書写)とフィクションの融合」だそうです。
でてくる自然は台湾由来のものを示すが、登場人物の名前は一様に漢字表記ではない。これも台湾という土地の歴史が物語ること。
少し現実に引き戻される事柄として「クラウドの裂け目」「鍵」がどの物語にも登場する。
主人公をもう一つ不思議な事へ誘うkeyとなる。
……正直、なんだか安易で、よくわからないかな〜
お気に入りの作者だけに、やや不満。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ巨大迷路のような中華市場、屋上には鮮やかなネオン塔が光り、幾つもの棟を結ぶ歩道橋には魔術師が立っている…。昭和レトロならぬ台湾レトロを感じさせてくれる短編集。短編とは言え同時期に中華市場に住む子ども達の話という共通点があり、同じ登場人物が出てきたりでまるで一冊の中編小説を読んでいるよう。魔術師が気まぐれに見せる魔法は子ども達の心に残り続け、成長した後も時に生きる希望となり、時に死の原因となる。
台湾本国でドラマ化してるんですね、これ。セットで中華市場を完全再現したらしく、すごく観たいんですがローカライズもないし日本で観るのは無理そうで残念。予告編だけでも本書とあわせて観ると雰囲気が味わえていい -
Posted by ブクログ
雨が降らなくなってしまったために、餌となる虫を食べられなくなってしまった知り合いの鳥「胖胖」のために語った、とされる六つの物語が入った長編小説。
人とうまくコミュニケーションを取れないミミズ研究者と鳥類行動学者。恋人を失ったツリークライマーと、無差別殺人で妻を失った弁護士。絶滅したクロマグロを探す男と、囚われた虎を解放しようとした青年。それぞれの物語では、対になる似た傷を負った人たちの傷が癒されるまでが語られる。
プロローグでは、雨が多かった島に、雨が降らなくなってしまったことで、畑が死にかけていることが語られる。そのため、この物語において雨は、命を救う恵みの雨として描かれる。
「雲は高度二