呉明益のレビュー一覧

  • 歩道橋の魔術師

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    Twitter文学賞で知ってからずっと気になっていた作品。これはまるで台湾の村上春樹ではないか。とても読みやすく佳作揃いだった。現実と空想の世界が、魔術師の姿を介して交差する。マジックリアリズムの世界がひと昔前の台湾の商場で繰り広げられる意外性がとても新鮮。
    魔術師はまるで空想の存在のようだが、紛れもない現実の存在である。どの作品にも必ず「死」が登場するが、むしろそっちが空想の出来事のように思えてしまう。

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    2021年12月11日
  • 歩道橋の魔術師

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    中華商場というのは1961年から約30年ほどのあいだ台湾の台北市にあった商業施設。と言っても今のモールとは異なり、3階建てのビルが8棟連なり、2キロほどの長さになり、そこに店舗とその店を営業する家族の居住空間があったというから、商店街のようなものに近いのかもしれない。
    各棟の2階には連絡するための広い歩道橋があり、そこにも露天商が並んでいたそうだ。
    この短編集はその商場に住んでいた人たちが、少年時代にそこで起きたことを回想して語る物語。そして、棟を繋ぐ歩道橋でマジックをして見せていた魔術師が各話で語り手になんらかの転機をもたらす。
    少年時代の記憶にはえてして記憶違いや、夢と記憶が混ざりあって、

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    2021年11月25日
  • 眠りの航路

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    主人公の睡眠障害を発端に、台湾少年工として日本に渡った父のこれまでの足跡が綴られる。
    最初は恋人との会話などから、村上春樹的だなと感じたものの、ファンタジー要素もあり、史実に基づくものもあり、最後まで読ませてくれる作品だった。

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    2021年11月15日
  • 自転車泥棒

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    父の盗まれた自転車から、ストーリーが広がっていく。登場人物が多いので、ところどころページを戻りながら読んだ。

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    2021年09月15日
  • 自転車泥棒

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    盗まれた父の自転車が辿った道を追うなかで語られるイメージと物語の奔流。

    溺れるくらいだ、すげえ。

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    2021年09月10日
  • 歩道橋の魔術師

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    歩道橋を商場として育った子どもたちと歩道橋で魔術師として生活をしている男の短編集。1人1人のエピソードにさまざまな分岐点があり、その合間に魔術師がいろんなマジックをした上で言葉を残していく。

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    2025年08月24日
  • 雨の島

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    ネタバレ

    読み始めてからだいぶ間が空いてしまったので忘れてしまったけれど…
    ゆるく関連した短編集。クラウドの裂け目というウイルスが、人のSNSを分析して、個人のファイルを閲覧する鍵を知人に交付する近未来。でもその鍵を使って今は亡き人の足跡に触れ、何かが解明される、というのが主軸ではなく、それぞれの主人公が自然との関わりの中で、あるいはその他者に思いを馳せたり追憶したりしながら生きていく姿がメインだった気がする。亡き妻が残した小説から、幻の雲豹を探しにいくとか。傷を抱えた個人が自然の中でもがきながら、その傷を見つめて乗り越えていこうとする話、というか。そこまですっきり解決するわけではないんだけど、その葛藤

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    2025年04月13日
  • 自転車泥棒

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    失踪した主人公の父、そしてその父が最後に乗っていた自転車を探す物語。一つの自転車から出会い繋がっていく人、そしてその背景、第二次世界大戦時の話、台湾の動物園へと色んな話が次々へと来る。登場人物や動物の名前が結構出てくるので何回か前のページを行ったり来たりをしながら読み進めた。『歩道橋の魔術師』の延長線と思って読んだけど重めの内容でした。
    古きものへの愛は、時間への敬意という言葉が胸に刺さる。

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    2025年01月03日
  • 自転車泥棒

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    ネタバレ

    父の自転車を追うなかで、時空を超えてさまざまな人々の話が織り込まれていく、不思議な感じの小説。台湾と日本は密接に関わっていたんだな。表紙の絵が素敵、これも著者によるものだそうで、多才。

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    2024年10月23日
  • 自転車泥棒

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    台湾の小説。二十年前に失踪した父親。彼が乗っていた自転車が、息子である「ぼく」のもとに戻ってきた。「ぼく」は、その自転車が戻ってくるまでの物語を集めはじめる。その旅は、ビンテージの自転車の、足りないパーツを集めるようなものだ。いくら修理し続けても、完璧な状態にはならない。この小説は大量の断片によって語られる。自転車のパーツ、父の自転車の所有者たち、彼らの物語。そして主人公の人生。こうした断片によって構成される、台湾の近現代史。読んでいて、ポール・ボウルズの「シェルタリング・スカイ」を読んだときの感覚に似たものを覚えた。北アフリカの砂漠や迷宮をさまよい、人生の意味を探し、そして人生に翻弄される作

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    2024年02月17日
  • 歩道橋の魔術師

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    商場が舞台なので賑やかな内容と思いきや、常にシーンと静まり返った雰囲気。どこか夕立前の雲の鬱屈さを彷彿とさせた。読めば読むほど哀愁漂う当時の台湾がありありと浮かび上がってくるようで、なんだか不思議な感覚だった。
    子どもの記憶の曖昧さが相まって、より哀愁漂う雰囲気になっていたと思う。個人的には「九十九階」と「ギター弾きの恋」がお気に入り。

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    2024年01月20日
  • 自転車泥棒

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    ただの自転車探す話かと思ったら
    だんだん話展開していって
    びっくり!
    最後、元々何の話だったんだっけ?ってなる

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    2022年08月24日
  • 自転車泥棒

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    銀輪部隊とか、マレーシア半島に自転車で侵攻したとか知らなかったなぁ。その訓練を台湾で行っていたことも。日本はもう少しきちんと第二次世界大戦で日本軍が行ったことを教育した方が良いと思うなぁ。知らないというのは恐ろしい事だなぁ。

    という訳で自転車と戦争にまつわる色々なエピソードが絡み合って、最後は可哀想な象まで出てくるので悲しくなって最後は大分駆け足で読みました。蝶の絵もあったか。祖父母のエピソードから戦争をきちんと語るってのは大事だよなぁとしみじみ思いました。風化したり美化しちゃイカンよねぇ。

    とは言えそれぞれのエピソードが絡み合うし長いし、関連性がイマイチわかりにくく、時間のあるときにゆっ

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    2021年12月16日
  • 雨の島

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    ネイチャーライティング、という分野があるらしい。初めて知った初めての作家、呉明益。
    科学、自然、森。成長、恋、後悔、別れ。
    美しい景色が眼前に浮かぶような筆致。
    そして美しい物語。
    深い原生林を漂うような感覚で読んだ。
    口絵もすばらしい。

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    2021年11月23日
  • 眠りの航路

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    急にやってくる眠りに誘われる形で、父の歩んできた道をたどることになる主人公。

    日本統治下の台湾から、少年工員として日本へ。そして玉音放送を経ての戦後の台湾引き上げから商場での暮らし、家族とのすれ違い。

    亀や菩薩様等、別の視点からも語られる父の物語。
    これが呉明益の最初の長編かあと感じさせる様々なモチーフ。

    平岡君が「あのひと」らしいことが解説に書いてあってちょっとびっくり。

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    2021年09月17日