あらすじ
太平洋に浮かぶ神話的な島と、近未来の台湾。二つの島に巨大な「ゴミの島」が押し寄せる時、謎の「複眼人」が姿を現す――。世界14か国で翻訳。台湾現代文学の担い手による代表的長編、待望の本邦初訳!
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Posted by ブクログ
大切な人を失った悲しみは永遠に癒えることはなく、抱きしめて生きていくしかない。
いつしか、ただ記憶に文字に思い出を留めておくだけでなく、その人の成長した姿までをも想像してしまう。
複眼人は、そんな生と死をとても静かに見つめているような本でした。
最後にわかる真実はハッキリそれとわかるように書かれているわけではなく、途中途中の心情から汲み取って、じわじわと気付かされていくような展開でした。
呉明益さんの作品は、静かだけど激しく想像力を刺激するものだと思います。すごくいい。
Posted by ブクログ
単行本が出た時に読みたいと思い、そのまま忘れてた本。文庫化を機に思い出した。
現実と虚構が融合した神話のような小説。自然の壮大さや、人間の営み、生と死について濃密に描かれている。ファンタジーに分類されるのだろうけど凄くリアリティがあり読後の満足感がある。
Posted by ブクログ
呉明益の本を読むのは「自転車泥棒」,「歩道橋の魔術師」についで3冊目だろうか.それら2冊よりも,さらに幻想色が強い.
舞台は台湾東岸であり,太平洋を漂ってきたゴミの島の激突や海面上昇,温暖化による多雨化の影響を受けて,色々なことが崩壊に向かっている.また登場人物たちは皆,身近な人の「死」を経験している.そのような中で,夫と息子を亡くして自殺を決意した主人公のアリスが,ゴミの島と共にやってきたワヨワヨ島民のアトレとの出会いを通じて,再生に踏み出すことがテーマとなっている.
上のストーリーだけ読むと荒唐無稽だが,これらは背景であって,哀しみと暖かさが幻想的に描かれています.
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ読ませる文章。訳者が違ってもほんとに読みやすい。これはなぜ?
筆者も述べてるように今回はちょっと毛色が違うなあ。なんだかかなりフィクションが強い。ワヨワヨも現実のものかそうでないのかよくわからないままに進んでいく。実際に存在するらしいと言うことは後にわかるけど。
今作のテーマはやっぱり人間の負の遺産かな?
ゴミの島は主題だし、アザラシ狩りや鯨狩りに対する反対運動が描かれるのもなんだか似た側面があるような気がする。サラにとってアムンセンは困った父親ではあるけど結局サラは捕鯨反対の道に進む。それは今作では人間のエゴを戒める立場にある人間として描かれている気がする。トンネル掘りの技術者もそう。かつては掘削と地質に疑いを持たないが、ダフの地元、少数民族の森を訪ねたときに、トンネルを掘られていない山の生きた声はどのようなものだったかと思いを馳せる。
私は無尽蔵な開発については反対ではあるけれど、基本的に開発することは反対ではない、豊かな生活を享受している以上なかなか開発を否定できない。それは自分を否定することになるからだろうか。自分自身、自然が好きだと言うことを考えるとこれまでの自身の生活を否定してでも、開発に意を唱えるべきなのだろうか。考えを一変させるまで強い思いではないが、疑念を抱くきっかけにはなった。
ストーリーは自転車泥棒、歩道橋の魔術師に比べてそこまで面白いとは思わなかった。勿論面白いんだけど。
登場人物が多くてあんまり感情移入できない部分もあった。自転車泥棒くらいのボリュームがあればこれくらいの人数が出てきても良かったけれど。
正直なところサラとデトレフの印象はかなり薄い。
ワヨワヨの島はアトレがウルシュラを探しに旅に出た朝に津波に襲われる。アトレはワヨワヨの島に帰るのだろうと思っていたから驚いた。全ての島民は死に、鯨となった次男たちは海岸へ打ち上げられる。残酷な結末のように感じた。アトレを探しに出たウルシュラもアトレと再会できずに死んでしまう。アトレとの息子を遺すことができたから完全なバッドエンドではないにせよ悲しさが残る。津波に襲われるのは人間のツケではないからなんだかすっきりとしない。息子の足が癒着して鯨の尾鰭のようになっていたと言うのもよくわからない。長男だし。
アリスとトムの息子が実は死んでいた?ことが仄めかされるのはびっくりした。お話として面白い。そこは好きだった。