眠りの航路

眠りの航路

2,376円 (税込)

11pt

4.3

父子二代の記憶へ漕ぎ出す
鮮烈な長篇デビュー作

台湾を代表する作家であり、世界的に注目を集める作家・呉明益の長篇デビュー作の待望の邦訳。のちに『自転車泥棒』や『歩道橋の魔術師』にもつながる原初の物語である。
台北で暮らすフリーライターの「ぼく」は、数十年に一度と言われる竹の開花を見るために陽明山に登るが、その日から睡眠のリズムに異常が起きていることに気づく。睡眠の異常に悩む「ぼく」の意識は、やがて太平洋戦争末期に神奈川県の高座海軍工廠に少年工として十三歳で渡り、日本軍の戦闘機製造に従事した父・三郎の人生を追憶していく。戦後の三郎は、海軍工廠で働いた影響から難聴を患いながらも、台北に建設された中華商場で修理工として寡黙に生活を送っていた。中華商場での思い出やそこでの父の姿を振り返りながら「ぼく」は睡眠の異常の原因を探るために日本へ行くことを決意し、沈黙の下に埋もれた三郎の過去を掘り起こしていく。三郎が暮らした海軍工廠の宿舎には、勤労動員された平岡君(三島由紀夫)もいて、三郎たちにギリシア神話や自作の物語を話して聞かせるなど兄のように慕われていたが、やがて彼らは玉音放送を聴くことになるのだった――。

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眠りの航路 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    呉明益の最初の長編小説。解説にも書いてあるが、『歩道橋の魔術師』で描かれる中華商場、『自転車泥棒』で描かれる台湾の過去、『雨の島』『複眼人』などに出てくる超自然的な視点等々、その後の呉明益作品のエッセンスがこれ一つの中にほぼほぼ全て含まれているように読める。本当に面白い。
    が、しかし、全く分からんと

    0
    2025年06月03日

    Posted by ブクログ

     台北で暮らすフリーライターの「ぼく」は、数十年に一度と言われる竹の開花を見るために陽明山に登るが、その日から睡眠のリズムに異常が起きていることに気づく。睡眠の異常に悩む「ぼく」の意識は、やがて太平洋戦争末期に神奈川県の高座海軍工廠に少年工として十三歳で渡り、日本軍の戦闘機製造に従事した父・三郎の人

    0
    2022年12月22日

    Posted by ブクログ

    『なぜなら、記者の同情が嘘っぱちだなんてことは誰でも知っていたからだ。それに比べて、作家という存在はいわゆる作品の「深さ」を表現するために、物語を盗んだ後に憐みからかあるいは対象への理解からか、二粒ほど涙を流すふりをしなければならなかった。たとえその物語の主人公が、自分の両親であったとしてもだ』―『

    0
    2022年03月22日

    Posted by ブクログ

    中華文学、好き。。。厳密にはこれは台湾の作家だけども。WWII、カメと仏像、睡眠障害と夢、三島と平岡くん。ゆるやかに三島をディスってるところも楽しい。うんわたしもかねがね三島の晩年のあの振る舞いは過剰に解釈されていると思ってるよ。日本と似ているようで全然違う国、中国(これは台湾だけど)カメがありえな

    0
    2022年02月12日

    Posted by ブクログ

    太平洋戦争中に日本にいた父とジャーナリストの息子、父と平岡(三島のアレゴリー)の交流、戦後台湾の混乱と発展などなど。自転車泥棒や歩道橋の魔術師の前駆みたいな小説。翻訳者の天野健太郎が若くして亡くなってしまったのは惜しかった。
    「歩道橋の魔術師」が一番良かったかな。

    0
    2025年03月11日

    Posted by ブクログ

    人が眠るってことは、限りなく死に近いってことをさ。夢の状態に近づくことは、死の状態にも近づくことでもあるんだ。

    0
    2025年01月08日

    Posted by ブクログ

    主人公の睡眠障害を発端に、台湾少年工として日本に渡った父のこれまでの足跡が綴られる。
    最初は恋人との会話などから、村上春樹的だなと感じたものの、ファンタジー要素もあり、史実に基づくものもあり、最後まで読ませてくれる作品だった。

    0
    2021年11月15日

    Posted by ブクログ

    急にやってくる眠りに誘われる形で、父の歩んできた道をたどることになる主人公。

    日本統治下の台湾から、少年工員として日本へ。そして玉音放送を経ての戦後の台湾引き上げから商場での暮らし、家族とのすれ違い。

    亀や菩薩様等、別の視点からも語られる父の物語。
    これが呉明益の最初の長編かあと感じさせる様々な

    0
    2021年09月17日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    台湾の作家、超名作『自転車泥棒』の著者である、呉明益の長編第一作。

    呉の小説の特徴は、父親の不在・確執、戦争の記憶、動物への愛情、無機物に対する執着的描き方にあると感じる。『自転車泥棒』におけるオランウータンと人の繋がり、戦時における象の扱いなど、読むのがしんどくなるほど切ない。この小説でも亀につ

    0
    2022年01月16日

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