安野玲のレビュー一覧
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文句なしに大満足の一冊。ジョー・ヒル「お試し」としては十分すぎる内容。こんなにも気持ち悪くて、こんなにも美しい物語を、様々なスタイルで読めるなんて。
私のお気に入りは「ポップ・アート」。近年読んだ中で最も美しい物語。イタロ・カルヴィーノの「木登り男爵」のラストを思わせるクライマックスには泣けました。「自発的入院」は本書のなかで唯一中篇と言ってもよい作品で、そのアイデアと恐ろしさは唯一無二。とにかく、ジョー・ヒル、すごい才能としかいいようがない。お父上がいなくなっても(そんな世界は考えたくないが、いずれ訪れるであろう)、これで安心、と思ったホラーファンは私だけではないはず。 -
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イスラエルのSFシーンの中心人物2名によって、英語圏の読者向けに編まれたアンソロジー。ここでのSFは科学小説 Science fictionではなく思弁的小説 Speculative fictionを指しており、非リアリズム小説全般を覆う定義と考えると収録作の幅広さが納得できる。邦訳は英語からの重訳になるが、元々英語で書かれた作品も5作、ロシア語で書かれた作品が1作収録されている(ほかはヘブライ語)。巻末には編者による「イスラエルSFの歴史」も。
以下、特に気に入った作品について。
★ ガイ・ハソン「完璧な娘」(中村融 訳)
テレパスの訓練教育を受けることになったアレグザンドラは、〈死体 -
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児童、若者向けの小説であったというものの、
登場人物たちの退場=死というものが容赦なく描かれ
弱肉強食、共食い、食うか食われるかという
無慈悲な無常な世界・舞台を鮮やかに描きだす。
さらにわかりやすく、ド汚い裏切り、欲望をむき出し
の(ラスボスではなく脇役な)悪役も
物語の彩りとして、主役二人の命と人生・価値観を
掛けた復讐劇、大冒険を飾っている。
児童、若者向けのわかりやすいメロドラマ的
エンターテインメントな死、物語の味付け、
期待を裏切るサプライズな仕掛けかもしれないが、
きれいごと、のぞむとおりには終わらせない
ハードで、ヘヴィーな面を持つ
優しさだけではないエンターテインメント。 -
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ついに読み終えた移動都市クロニクル。
「移動都市」「略奪都市の黄金」「氷上都市の秘宝」の続編「廃墟都市の復活」は、第4部にしてシリーズ最終章です。
第3部で砂上に消えたヘスター。彼女と離れ離れになったトムは、愛娘のレンと共に飛行商人として生計を立てる。ヘスターと喧嘩別れして以降、抜け殻のようになったトムであったが、とある街で思わぬ人物を見かけたことをきっかけに再び冒険の舞台に踊り立つ。思わぬ人物とは今はもう廃墟と化した故郷ロンドンの知り合いだったのだ…
あらすじと登場人物紹介によって(そして表題からも)、ロンドンの旧知が再登場することがわかります。そんな久しぶりに登場したロンドンと、ヘスター -
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とにかく予想の斜め上を行く展開!
序盤は素直に話が進まない感じがして、なんだかいきあたりばったりな展開では…?と思っていましたが、読み終わると、本書の第一部では、物語のスタートを切りつつも、フレイアとコールのエピソードを綺麗に結んだんですね。
また、勢いが増していく終盤、第2弾のしこり(ヘスターがアンカレジを裏切った事実)をうまい具合に回収しつつ、第4弾に繋げるあたりは、なんだかしてやられた感じがします。もちろん勢いはあるんでしょうが、おもしろかった。
さて、なんといってもヘスターの性格の歪み具合!娘をもったにも関わらず、その歪んだ性格は相変わらずで、ついにその歪みがトムに露呈してしまう始末 -
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60分戦争により荒廃した近未来。
キャタピラつけた都市が移動して都市を喰らうという設定が奇抜。
文章としては視点が変わる部分に少し違和感を感じるけれど、
全体的に絵をイメージしやすく読みやすかったです。
(この作家はイラストレーターでもあるらしい)
ストーリーはテンポ良く場面が進み、
キャラクターもよく立っている。
顔に酷い傷のあるヒロイン。
剣術に長けた女船長。
総じて女性が魅力的。
SFかというと科学的根拠はあまり薄そうなので
冒険小説だと思った方が間口も広いかもしれない。
良質なジュブナイルを久々に堪能した(・∀・)
「移動都市」といういまいち冴えないタイトルと、
アラビアン風味の -
Posted by ブクログ
ネタバレ都市が都市を食らうという、衝撃的な設定のSF。移動都市ロンドンが獲物を捕らえるシーンは、まるでスペクタクル映画を見ているかのようだった。
主人公のトムは、史学ギルドの見習い。しかし、ある出来事がきっかけで、都市の最下層部であるガットへと送られてしまう。ガット、捕獲された都市が解体される場所。暗く、暑く、悪臭が漂うその環境は、まさに地獄絵図だ。
ガットでトムは、憧れのギルド長、サディアス・ヴァレンタインと出会う。なぜかトムの家族を知っているというヴァレンタイン。トムにとってヴァレンタインとの出会いは、運命を大きく変えるものだった。中盤以降はトムと彼の仲間である少女ヘクターの友情を中心に進む。