著者はカラスの研究者で、一般向けの本もたくさん出しているが、これはカラス以外の動物も含まれていて、珍しいな、思った。タイトルからこのところよくテーマとなる「人間のモノサシで動物を測ること」によって見えにくくなる動物たちの能力について書いてある本かな、と期待して読んだ。
しかし、そこまで深い内容ではなく、雑学的な寄せ集めの印象。タイトルが面白いので、子どもにも読めるかなと思ったが、軽い書き方の割に文章は(子どもには)難しい。「昆虫はミニマムなハードウェアになるべく単純なプログラムを実装し、いかに複雑な行動を実現するか競っているようなところがあるので」(P108)みたいな文章を難なく理解できるお子さんには読ませたらいいと思うけど。
読んでいるとやはりカラスをメインに鳥の話が多く、タイトルの印象ほど様々な動物について考察されているわけではないし、松原さんほどの人ならこれくらいのことは学生相手にいつも喋っているだろうから、まとめる編集者の力でこういう本ができるのだろうけど、なんだか、そのテキトー感が出ていて、あまり誠意は感じられなかった。
大学の講義で横道に逸れる時のネタ集みたいな。
ネットで有名になったニュウドウカジカについて、「グニョングニョンになってしまうようだ。」「浮くらしい。」「最小化しているとのこと。」(P67)って、全部伝聞じゃん。この程度の情報ならネットでわかる。そんな伝聞の話をわざわざ本で読みたくない。
あと、残念だったのは、ヨウムのアレックスやローレンツの『ソロモンの指輪』の中のエピソードが出ているのに、参考文献とか出典がないこと。これは出版社の方で調べてつけるべき。
山と渓谷社って信頼出来る出版社だと思っていたけど、こういう売れてなんぼの本を作るのかとちょっとがっかりした。
カラスの話はさすが専門だけあって詳しくて面白かったけど、タイトルからしたら、見かけ倒しの印象は拭えない。
あと、これだけクルクルとたくさんの動物について、様々な内容が書いてあると、読んでいる時はへぇと関心しても大抵忘れちゃう。ある程度テーマなり生き物なりを絞れば、考察が深まるからそうでもないけど。なんか大人版『ざんねんな生き物』みたいだったな。
挿画の動物の絵、正確なんだけど、なんだか独特の雰囲気(P41のリボンのかけ方と貝の配置なんか)があって、これは、知っている‥‥と思ってたら木原未沙紀さんだった。今村夏子の『木になった亜沙』の絵を描いた人ね。積極的に出そうとしなくても出てしまう個性、好きです。