【感想・ネタバレ】カラス先生のはじめてのいきもの観察のレビュー

あらすじ

ベストセラー『カラスの教科書』の人気動物行動学者が遊びながら覚えた、
動物とのつきあい方。

双眼鏡事始め、図鑑の使い方、空飛ぶものへの憧憬、台風の夜、足もとの昆虫学、水たまりの生態系、獣道の見つけ方――
大事なことは、全部、裏山が教えてくれた。


枝に止まったトンボの取り方。歩いている時にシカを見つけたら。ヘビを探すには。カブトムシが飛び立ちそうな時――こういうことは、自然の中で遊んでいるうちに覚えた。言ってみれば、野生動物との間合いの取り方だ。その心地よい緊張感や、全身をセンサーにして周囲を探ろうとする態度は、40年を経た今もこの身にしみついているように思う。それなくしては、野外で動物を研究することなんかできなかった。大事なことは全部、裏山が教えてくれたのだ。
(「はじめに」より)

(目次)
●第1章 双眼鏡事始め
[双眼鏡の使い方、身近な鳥の覚え方、図鑑の見方・使い方、野生動物との距離感]
骨董品/どこかわからない問題/学習図鑑/紋付を着たあいつ/頬の白いあいつ/そして、今も双眼鏡

●第2章 振り返れば奴がいる
[フィールドワーク、野生動物との出会い、動物行動学]
一瞬の出会い/夜の来訪者/雪の朝の出会い/藪の中/そして、振り返れば奴がいる

●第3章 仄暗い水の底から
[釣魚生態学、渓流釣り]
荒川にて/おにぎり池の主/真夏の怪物/深淵より/その水の底には……

●第4章 裏山探検
[森の歩き方、アニマル・トラッキング、獣道の見つけ方]
裏山もいろいろ/山頂への長い道/アニマル・トラッキング/冬の森にて/再び、裏山に登る/カラス屋は今日も藪の中

●第5章 夜間飛行
[高校生物部、コウモリの形態と飛翔、エコーロケーション]
天守閣の闖入者/コウモリ、女子高生に出会う/夜間戦闘機・コウモリ/夕暮れに踊る影

●第6章 台風の夜
[ヤモリの行動、身近な生き物観察、昆虫の航法システム]
台風来襲/守宮様と私/蒼ざめた影/螺旋の罠

●第7章 空飛ぶものへの憧憬
[飛翔生物の進化、鳥の航空力学、カラスの飛翔能力]
パワポで鳥の輪郭をなぞり、そして……/航空力学の冷徹/空飛ぶものとの出会い/ヒコーキ野郎、そして「豚」/水上飛行機と水鳥/ゆっくり飛ぶのも難しい/鳥も天から落ちる/……そして、あの日のサギに憧れる

●第8章 悪ガキの足もと
[アウトドア靴選び、水たまりの生態系、食物連鎖、足もとの昆虫学、悪ガキの生態]
水たまりの楽しみ/ビーチサンダルという逸品/滑り止めあれこれ/この谷川の源は?/ビーサンの悪ガキ

●第9章 ムシムシ大行進
[夜の昆虫採集、都会の生物観察、道しるべフェロモン]
一番強い虫/虫取りも楽じゃない/大都会の謎のムシ/秋草の妖精/行列との戦い/ムシムシ大行進♪

あとがきにかえて ――わが故郷は緑なりき

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Posted by ブクログ

カラス研究の第一人者である著者の、いきもの体験エッセイ。
双眼鏡事始め  振り返れば奴がいる  仄暗い水の底から
裏山探検  夜間飛行  台風の夜  空飛ぶものへの憧憬
悪ガキの足もと  ムシムシ大行進
あとがきにそえて 我が故郷は緑なりき
カラス先生の日常(マンガ)①~⑩
著者によるモノクロのイラストも多数。
カラス大好き動物行動学者の、幼少期から身近に存在していた、
多くのいきものとの出会いと体験を綴った、エッセイ集です。
カラス探索や研究の合間に甦る、豊かな自然の中で培われた体験。
双眼鏡で始まり、図鑑、釣り、探検、生物部、台風、凧、
飛行機、ビーチサンダル、虫取り・・・それらは著者の原点。
経験は身体に、記憶に蓄積され、将来に多大な影響を与えている
ことがわかります。小中高と動物好きで、大学で生物学だもの。
しかし、ただの思い出語りではあらず。
宅地化や水路の整備等で、かつての風景が失われてきたことの、
憤りも感じます。だからこその、いきもの体験エッセイなのかも。

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2021年06月16日

Posted by ブクログ

「ファンデルワールス力で付着するような世界の方が、動物界では普通なのだろう」というフレーズが一番のお気に入り。ヤモリの足がガラスにくっつく仕組みを説明する中での言葉で、その仕組み自体は知識としては知っていたけれど、ファンデルワールス力なんて実感したことはないしなんとなく腑に落ちないでいたところにこの言葉に出会い、表現の仕方にハッとさせられた。ユクスキュルの『生物から見た世界』にも通じるような、いきものに見えている世界は人間のそれとは違うということを表現した至言だと思う。

『カラスの教科書』の著者、カラス先生こと松原始先生のエッセイ集。カラスのみならず、そして鳥のみならず、魚や昆虫など、様々ないきものにまつわる体験が綴られている。幼少時から自然に親しみ、いきものに触れ、種類を覚えたり特徴を観察したりしてきた方なのだなあということが良く分かる本。身近ないきものの話が多く、よく見るいきものでもちゃんと観察してあげると違った姿が見えてくるのだなと思った。
鳥類の飛行能力の違いを、飛行機の構造との関連から考察しているところなどは、とても面白かった。博物学的な知識に立脚しつつ、物理的な視点も合わせて考察するということの、身近な具体例を見せてもらった感じ。
学生への講義の準備をしているときの話もあって、この先生の講義を是非受けてみたいなあ、とも思った。

(NetGalleyでゲラ読み)

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2018年06月03日

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