二宮敦人のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
私は人を殺すのも人に殺されるのも怖いのです。どちらも最悪な事態であって、回避したい。しかし、回避するには殺人について誰よりも知らなくてはいけないのです。ですから、私は殺人についてよく知るために、それらの話を収集しています。
***
先日読んだ「文藝モンスター」の作者二宮敦人さんの小説。前作はコミカルなミステリ小説だが、表紙から醸し出される殺伐とした感じからもわかるように、こちらは正真正銘のホラー小説。実際に人を殺した殺人者たちのあらましを独白という形で、内容は狂気の沙汰ばかりだ。
この作者さんの本を読んだのは、まだこれで二冊目なので偏見の極みのような発言だが、この人の本はこれだよな!という感じだった。 殺人者、しかもシリアルキラーや性癖をかなりこじらせている頭のねじが何本も吹き飛んでいるような面々ばかりが出てきて、読んでいるこちらが頭がおかしくなりそう。事件はどれも痛ましく、悲惨という言葉がふさわしいのだが、独白形式だからなのだろう。殺人者の成り立ちと、殺害方法、今まで起こしてきた事件の内容を、何ともない様なあっけらかんとした感じで語るので、深刻さが薄れてしまう。後味はどれも悪いのに、なぜか癖になる。読んでいる間は私も非常に深刻そうな顔をして読むのだが、読み終えると何故か腑に落ちていて納得している。 全く謎である。 以前もこの作者さんの本の感想を述べるとき登場人物たちが個性的で生き生きしている、という言葉を使ったが、もしや、今回の小説もこれが当てはまるからそう感じたのかもしれない。 やっていることは陰惨だし、起こった事件は惨劇でしかない。
普通に殺すだけでは飽き足らず、遺体の損壊や、自分の欲望に忠実に動き独りよがりな犯行を繰り返すシリアルキラーもいた。だが、最初から最後までブレることなく、やり切る様はなんとなく美学の様な物を感じる。もちろん、真似をする気はないし、通常の精神状態の人間ではできるものではないが。 もしこんな事件が実際に起こってそれをニュースで見たり、新聞の一面で見たりしたら、最悪の殺人者としか思えない。なのに、そこ殺人者たちの人間性を加え、なるべくしてなったという背景を加え、それを独白という形で表現し、魅力的なキャラクターに昇華してしまう作者の手腕には舌を巻いた。
そうか、私は彼らのキャラクターに魅力を感じたのか……。(栄光という話に出てくる男はまごうことなきクソ野郎だったが) しっかり犯罪の描写や殺人の描写、人が死んでいく描写が書き綴られているので、読む人によっては、悲惨で、グロテスクで、最悪な一冊かもしれないので要注意。後味は絶対に悪い。 そういえば、人間が与えるバイオレンスは苦手だったはずだが、この本はどうしてだか読めてしまった。 いつもは少し読んだだけでゲェッ、となるのに……。
グロテスクであるのに、グロテスクじゃない。陰惨なのに陰惨じゃない、と感じるこの作者の小説は非常に私にとって癖になる不思議な本。なんて、面白い! -
Posted by ブクログ
増田文学賞の受賞で作家となった笹野は、年に一回行われる飲み会に参加していた。増田飲みと呼ばれるその会は増田文学賞でデビューを飾った作家達が集まるという特殊な会であった。個性的な作家達に囲まれ、楽しい会になるはずであったが……。
***
初読みの作家さん。二宮敦人さんの書籍は何冊かタイトルに惹かれ所持しているが、読んだのは初めて。他の作品のタイトルやあらすじがグロテスクなものを思わせる陰鬱なイメージを持っている作家さんだったが、こちらの小説はかなりコミカルな内容のミステリ小説だった。
要所要所でグロテスクな表現があり、凄惨な様子もあったのだがそれさえも押し流してしまうような爽快感のあるテンポ。主人公に危機が迫る描写もあったりしてドキドキしたのだが、そのドキドキとの差が更に楽しさを演出していて非常に良かった。登場人物も、自分の書いた小説が怖すぎて、ゲラの際に失神してしまうホラー作家などが出てきてかなり個性的。主人公以外のほとんどが個性的過ぎてキャラが渋滞しそうなものだが、彼らが生き生きとして作中で動き回り、互いに邪魔することなく、むしろ面白さを増している。
登場人物が好き勝手動いるのに、全く混乱しないというのはすごい。 また、ミステリ小説でありながら、作家と出版社の関係性というものにも切り込んでいて興味深かった。 個性的な作家たちの抱える苦悩。自分たちは社会から逸脱した存在で、作家としてしか生きていけない。しかし、出版社は発行部数や売り上げを心配するばかりで自分たちの自由に書かせてくれないし、ケチばっかりつけてくる。というリアルの作家たちが抱えているかもしれない悩みが作中にぶちまけられていた。 ミステリ小説を読んでいたはずなのだが、コミカルな内容と本を介して行われる人間模様に心を揺さぶられた一冊。
殺人事件も起こったし、謎解きもあったし、ヒロインのピンチもあったし大筋では王道のミステリ小説だったが、殺人事件も、謎解きも果たしてそこがメインであったかといわれると、個人的には違うかなあと思った。 いや、でもこの一冊を読んで小説家も出版社も血のにじむような努力の元に一冊の本を作り上げている事実を改めて理解した。それなのにど素人が訳知り顔で「この本はこうだ!」というのはやや憚られるかもしれない。
しかし、内容の感じ方は千差万別だし……。という複雑な心境で感想を書いている次第。ともかく、こね回さずに感想を言うのであればこの本は非常に面白かったという一言に尽きるのである。 -
購入済み
最後
全体を通して、簡素であるよう丁寧に気持ちが向けられた文が読みやすい。展開も無理矢理感は少なく自然。
しかし最後。パパ福原の回想を一人称、福原は三人称だったものが激しく混同。表現上意図されたものであろうと、いきなり読みにくく素人文のようになるところは助けて欲しくなる。