北野寿美枝のレビュー一覧
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1975年の東ドイツを舞台にしたミステリー。日本では、ペヤングソース焼きそばが発売され、米国ではマイクロソフトが設立されたころだ。その時代にはベルリンの壁があり、東ドイツでは社会主義体制に反対する(という疑いが持たれる)人々を弾圧し、拷問し、処刑していた。少女の死体が見つかった事件で捜査をすることになったカーリン・ミュラーは複雑な立場にある。夫が反体制派の嫌疑をかけられ、カーリンも部下の副官と浮気をしている。どちらも東ドイツでは重大な犯罪となる。一方で、少しずれた時間軸で進行する話があり、殺害された少女たちの物語が進行する。こちらも悲惨な話だ。体制に振り回されて人生を狂わされる。二つの時間軸が
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世界レベルの新人作家というのは凄いものである。本書はCWA(英国推理作家協会)賞の最優秀新人賞受賞作であるが、ここまで凝りに凝った力作を書けるかと思うと、そのレベルの高さ、スケールの大きさに気が遠くなる。
舞台は1919年、第一次大戦後のニューオーリンズであるが、この南部にあってプチ・フランスでもある奇妙なジャズの街は、同時にこの作品の本当の主人公でもある。それほどまでに当時よりジャズが鳴り響いていたこの街の活気は、人間臭く、そしてその裏にある時代の闇は深くどす黒い。
しかもここで取り上げられた題材は、実際に1918年から1919年にかけて起こったアックスマン事件である。そして新聞に -
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ハリケーンが迫りくるニューオーリンズの街を舞台に、連続殺人鬼を追う三組の探偵役の活躍を描く長篇ミステリ。時は1918年、ジャズ発祥の地であるニューオーリンズでは、アックスマンと名のる斧を使った殺人犯による連続殺人が起き、市民は恐怖に震えていた。ジャズが好きなアックスマンは新聞社に宛てて犯行予告を送り、その時刻にジャズが演奏されている家は見逃す、と書いていた。当時、流行の兆しを見せていたこともあり、ジャズを演奏させるレストランが続出しバンド・メンバーは大忙し。怖いもの見たさで街に繰り出す酔狂な連中で街はマルディグラの狂騒状態に陥る。
アイルランド系の刑事マイクルは、アックスマン事件の捜査で指揮 -
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花形トレーダーがミスにより不正行為をしてしまい服役した経歴をもつ男性が主人公。出所後金融業界の調査依頼などをして生計をたてている。銀行家が死ぬ前に隠し持っていた財産を探してほしいという新しい依頼がきて、引き受けることになる話。その調査をし始めたとたん、あやしい人たちに襲われそうになったり脅されたりしだして、一人息子まで狙われることになる。必死で息子を守ろうとする父親の姿に胸を打たれる。自閉症の息子とのやりとりや、一喜一憂する様子がいい。メインとなる金融業界の話や仕掛けなどはわからないし、事件自体の内容もどうでもよくなってきてしまう。主人公の家族の話のほうがおもしろい。最後は主人公にとっても子供