飯塚容のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
作者である余華の作品は、「活きる」をチャン・イーモウ監督の映画で見て、小説そのものを読むのは本作が初めて。
読み始めて最初は、なかなか前に進まないが、1/3ほど進んだあたりから、読むスピードが一気に加速して、一気呵成に読み終えることができた。時は清国末から民国初めの混乱を極めた中国で、市井の人たちが送った苦難の日々を描いている。著者が日本の読者に向けて書いたあとがきでは、この小説を「伝奇小説」としているが、しかし「伝奇小説」と言われると、私などが真っ先に思い浮かべる「聊斎志異」のような怪異小説ではなく、「紅楼夢」や「水滸伝」、「三国志演義」に通じるところも感じてしまう。(「西遊記」はちょっと違うかも)
泣かせるところは泣かせて、ハラハラ・ドキドキのところもあり、かなり残虐な描写もある。(残虐なシーンは、幼い頃に宴席で中国戦線帰りの近所の爺様から聞かされてトラウマになった日本軍の残虐行為に酷似する)
著者は断続的に書き継ぎ、21年かけて本作を完成したと書いている。
主人公・小美(シャオメイ)は、著者・訳者あとがきでも触れているとおり、部分的には自立した女性ではあるのだろうが、時代的・社会的制約からは完全に自由になりきれなかったのだろう。書ききれなかった、あるいははめ込みきれなかった部分は、年代的には遡って本編のあとに補編として書かれている。ここはやや説明的なところもあり、完成度は若干落ちる感じがする。しかし、全体としては中国長編小説の伝統を引き継いだ読み応えのある小説であった。 -
Posted by ブクログ
うわさに聞いていた一冊
「武漢」この都市名は
日本で言えば
「ヒロシマ」「ナガサキ」
「フクシマ」
に相当するほどの世界の歴史に
刻まれる固有名詞になっている
その「武漢」が「都市封鎖」を
された60日間の日々が
綴られている
食べること
飲むこと
見えること
聞こえてくること
そして
考える事
「都市のロックダウン」
という非日常の日々のなかで
起こっている様々なことが
克明に記録されている
いつ(封鎖が)終わるとも知れない
日々が詳細に綴られる
身動きの取れない状態で
あるのに
いや そうであるからこそ
見通すことのできた真実
考えることのできた真実
が ここに綴られている
とんでもない一冊を
読んでしまった -
Posted by ブクログ
国際的に著名な中国人作家による自伝エッセイ。文革時の農村の日々といってもただ懐かしむような筆致ではなく、どこか自己を突き放すような冷徹さがある。著者の父の世代がどれほど生活すること、生きることに精魂つき果たしたか、その日々が描かれる。一家を守るために肉体の限りを尽くし、子供たちの家を建てて所帯を持たせる、それが親というものの役割だと言わんばかりに命を削る父親たちはとてつもなく偉大であり、その父たちへのまなざしは尊敬と温かみで満ちている一方で、子どもに必要とあらば一瞬にして暴力装置が作動し、制御不能の移動式生き地獄と化すのは中上文学における父親っぽくて圧巻。そうかと思うと強く偉大なところだけじゃなく、ギャンブルに溺れて手をつけちゃダメなお金まですってすっからかんになって家族泣かしちゃって、それでどうしようもなくなって自殺未遂しちゃうようなダメな親父でもある。そのダメさというのがどうも責めるの責められない、なんというか楽しむということのやり方もわからずに生きてきて、それではじめてギャンブルの世界を覚えてしまったのが運の尽きというか、これは仕方ないんじゃないか?そこに音楽やらアートやら、映画やら文学やら、あるいはスポーツやら各種の趣味やらを持ち出して、ギャンブルよりもそっちの方がいいだろうと指摘するのは明らかに上から目線で貧しさというものの本質をわかっていない。貧しさというのは牢獄だ。限られた世界で生きるということだ。その世界の外にさらなる世界があるという可能性すら知らないことだ。本なんて読むのは怠け者だという世界のことだ。それは本を読むことの価値よりも、生活の価値の方が優先されることでもある。それが象徴的に描かれるのが、文革時の都市部の知識青年の放下の場面だ。これほどの格差の溝の深さはいかにして埋めようもないだろう。それで著者は小説と出会い、過酷な肉体労働の合間に文学修行をし、軍に入って村から逃れることができた。その罪の意識のせいか、全体的に後ろめたさが潜んでいるような気がするのは気のせいではないだろう。全体的に優れた散文詩のようでもある。アジア圏で村上春樹の次にフランツカフカ賞をとった作家でもあるが、まあ村上春樹とは対極的な位置にいるのかもしれない。
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Posted by ブクログ
ネタバレ近くにありますが、謎の多い中国の実情を書いた本です。
作家である著者が、中国では書けない庶民の暮らし、本音を書いています。
中国に興味ある方、私のように最近の中国が怖く感じられる方、中国に暮らす人々の苦労を知りたい方にお勧めの本です。
共産党の一党独裁で政治を行っている中国での法律問題、言論の自由、タブー、社会主義と資本主義等について書いてあります。個人的な感想も多いですが、庶民目線で書かれており、中国に住む方々の日常がよくわかります。
経済成長により急激に豊かになった中国の影の部分も多く書いてあり、ツィッター問題や、天安門事件、政府のうそについての話が特に印象に残りました。
早く中国が、自由に発言できる国になることを望みます。