飯塚容のレビュー一覧
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作者である余華の作品は、「活きる」をチャン・イーモウ監督の映画で見て、小説そのものを読むのは本作が初めて。
読み始めて最初は、なかなか前に進まないが、1/3ほど進んだあたりから、読むスピードが一気に加速して、一気呵成に読み終えることができた。時は清国末から民国初めの混乱を極めた中国で、市井の人たちが送った苦難の日々を描いている。著者が日本の読者に向けて書いたあとがきでは、この小説を「伝奇小説」としているが、しかし「伝奇小説」と言われると、私などが真っ先に思い浮かべる「聊斎志異」のような怪異小説ではなく、「紅楼夢」や「水滸伝」、「三国志演義」に通じるところも感じてしまう。(「西遊記」はちょっと違 -
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うわさに聞いていた一冊
「武漢」この都市名は
日本で言えば
「ヒロシマ」「ナガサキ」
「フクシマ」
に相当するほどの世界の歴史に
刻まれる固有名詞になっている
その「武漢」が「都市封鎖」を
された60日間の日々が
綴られている
食べること
飲むこと
見えること
聞こえてくること
そして
考える事
「都市のロックダウン」
という非日常の日々のなかで
起こっている様々なことが
克明に記録されている
いつ(封鎖が)終わるとも知れない
日々が詳細に綴られる
身動きの取れない状態で
あるのに
いや そうであるからこそ
見通すことのできた真実
考えることのできた真実
が ここに綴られている
とん -
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国際的に著名な中国人作家による自伝エッセイ。文革時の農村の日々といってもただ懐かしむような筆致ではなく、どこか自己を突き放すような冷徹さがある。著者の父の世代がどれほど生活すること、生きることに精魂つき果たしたか、その日々が描かれる。一家を守るために肉体の限りを尽くし、子供たちの家を建てて所帯を持たせる、それが親というものの役割だと言わんばかりに命を削る父親たちはとてつもなく偉大であり、その父たちへのまなざしは尊敬と温かみで満ちている一方で、子どもに必要とあらば一瞬にして暴力装置が作動し、制御不能の移動式生き地獄と化すのは中上文学における父親っぽくて圧巻。そうかと思うと強く偉大なところだけじゃ
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Posted by ブクログ
ネタバレ近くにありますが、謎の多い中国の実情を書いた本です。
作家である著者が、中国では書けない庶民の暮らし、本音を書いています。
中国に興味ある方、私のように最近の中国が怖く感じられる方、中国に暮らす人々の苦労を知りたい方にお勧めの本です。
共産党の一党独裁で政治を行っている中国での法律問題、言論の自由、タブー、社会主義と資本主義等について書いてあります。個人的な感想も多いですが、庶民目線で書かれており、中国に住む方々の日常がよくわかります。
経済成長により急激に豊かになった中国の影の部分も多く書いてあり、ツィッター問題や、天安門事件、政府のうそについての話が特に印象に残りました。
早く中国が、自由 -
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Posted by ブクログ
コロナ禍が始まってほぼ1年後に読んだ。「週間読書人」に方方さんのインタビューがあって、それで読もうと思ったのだ。中国で、書いては削除されるブログを、知人の助けを受けながら書き公開し続けた著者は、勇気のある人だと思う。
2020年の1月から3月にかけて都市封鎖された武漢はこんな状況だったのかということが分かる貴重な記録である。
当たり前だが、著者と兄嫁も同じ武漢にいてそれぞれ違うことを考えていたことも分かる。
その時期に自分が日本で何をしていたか、どんな気持ちだったかもあわせて思い出した。
こういう記録が各地に残っていくことがとても大切だと思う。