あらすじ
中国の黄色い大地で、家族のために働き抜いた父や伯父たち。厳しくも慈愛溢れる彼らの生き様は古き良き中国を体現していた。文革、貧困、戦争……ノーベル賞候補作家による感動のエッセイ。
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Posted by ブクログ
文章や表現が美しい。
自分の知っている中国の貧困層の生活様式を家族の温かさと生活の厳しさを交えて書かれていて、初心者にも大変読みやすい一冊だった。
Posted by ブクログ
国際的に著名な中国人作家による自伝エッセイ。文革時の農村の日々といってもただ懐かしむような筆致ではなく、どこか自己を突き放すような冷徹さがある。著者の父の世代がどれほど生活すること、生きることに精魂つき果たしたか、その日々が描かれる。一家を守るために肉体の限りを尽くし、子供たちの家を建てて所帯を持たせる、それが親というものの役割だと言わんばかりに命を削る父親たちはとてつもなく偉大であり、その父たちへのまなざしは尊敬と温かみで満ちている一方で、子どもに必要とあらば一瞬にして暴力装置が作動し、制御不能の移動式生き地獄と化すのは中上文学における父親っぽくて圧巻。そうかと思うと強く偉大なところだけじゃなく、ギャンブルに溺れて手をつけちゃダメなお金まですってすっからかんになって家族泣かしちゃって、それでどうしようもなくなって自殺未遂しちゃうようなダメな親父でもある。そのダメさというのがどうも責めるの責められない、なんというか楽しむということのやり方もわからずに生きてきて、それではじめてギャンブルの世界を覚えてしまったのが運の尽きというか、これは仕方ないんじゃないか?そこに音楽やらアートやら、映画やら文学やら、あるいはスポーツやら各種の趣味やらを持ち出して、ギャンブルよりもそっちの方がいいだろうと指摘するのは明らかに上から目線で貧しさというものの本質をわかっていない。貧しさというのは牢獄だ。限られた世界で生きるということだ。その世界の外にさらなる世界があるという可能性すら知らないことだ。本なんて読むのは怠け者だという世界のことだ。それは本を読むことの価値よりも、生活の価値の方が優先されることでもある。それが象徴的に描かれるのが、文革時の都市部の知識青年の放下の場面だ。これほどの格差の溝の深さはいかにして埋めようもないだろう。それで著者は小説と出会い、過酷な肉体労働の合間に文学修行をし、軍に入って村から逃れることができた。その罪の意識のせいか、全体的に後ろめたさが潜んでいるような気がするのは気のせいではないだろう。全体的に優れた散文詩のようでもある。アジア圏で村上春樹の次にフランツカフカ賞をとった作家でもあるが、まあ村上春樹とは対極的な位置にいるのかもしれない。