中井英夫のレビュー一覧
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ネタバレめちゃくちゃ面白かった。
想像は時として現実をも凌駕し、新しい物語を生み出す。蓋を開けてみれば、なんだ、こんな感じ?
なんだけど、時代の背景と相まって、なんとも言えないスカッとしない感じが底にあって面白い。
読んだ本と知識が半端なくすごいと思うのだが、
『黄色い部屋の秘密』なんかも、あ、犯人言っちゃうんだ…
『現実に耐えられなくて逃げこんだ非現実の世界は、現実以上の地獄で、おれはその針の山を這いずるようにして生きてきたんだ。』
終章の蒼司の告白が最高だった。考えて考えて考え出した答えは歪曲し、別の方向へ怒りとして矛先をかえる。自分が納得した形があれだ。
無責任な好奇心の創り出すお楽しみ -
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アンチミステリの世界
これは…
なるほど。
『ドグラマグラ』とも『黒死館殺人事件』とも違う。奇書と構えて読むからか、胸に遺物が残る読後感。
1955年が舞台。
1年前に起きた洞爺丸沈没事故により両親を亡くした氷沼蒼司、紅司、藍司。
ある晩、藍司はアイヌの格好をした不審者を目撃し、紅司は、アイヌの呪いや洞爺湖の蛇神の祟りだと怯える。
藍司が働くゲイバーの客であり、蒼司の友人、光田亜利夫は氷沼家と仲を深めるが、そこで謎の密室殺人事件が起きてしまい、巻き込まれてゆく。
家系・密室系のミステリーです。
ノックスの十戒はもちろんだが、江戸川乱歩や不思議の国アリスの話などがポンポン出てくる。
複数人 -
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ネタバレまず、単純に面白い。奇書とか墓碑銘とか何も気にせずに読んだとしても、不動ー薔薇ー犯罪の符号(特に黄色の薔薇には驚かされた)や、三重の密室トリックはとてもレベルが高く、珍説もあるものの、推理合戦はかなり楽しかった。
そして”楽しんだ”後に訪れるのがあの仰天とも肩透かしともとれる真相。
しかし、これは「肩透かし」だと思ったらもう十分に犯人たる資格を有していることになるのだ。事件が起こる前からヒヌマ・マーダーなどと騒ぎ立てている久夫たちと同じく、これは殺人事件でなにか突飛なトリックが使われているに違いないと思い込み、”楽しみ”にしているということなのだから。
反推理小説であり、著者自身は「反地球 -
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再読。
久しぶりの中井英夫文体に実家のような安心感をおぼえた。解説の出口裕弘は美文の度がすぎると思っていたようだが、シンプルではないにせよハッキリとしたスタイルを持つ文章はそれだけで読むストレスが少ない。
探偵気取りのキャラが何人もでてきて、推理を披露するや「いやいや…」と否定され失敗していくタイプのミステリーが好きだと最近自覚したんだけど、その源流は『虚無への供物』だったんだなと。この形式の面白さは「一つの事件につき幾つもの解釈法を読ませてもらえるお得感」だと思う。けれど、この〈推理ゲーム〉がゲームであること自体に意味を持たせているのがこの作品のすごさ。推理小説が殺人事件を創り出し、探偵によ -
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幻想文学の金字塔、中井英夫の、とらんぷ譚Ⅰである!
澁澤龍彦の解説と、建石修志の挿絵見たさに新装版を捜したが、現在ほとんど市場に出回っておらず、手に入れるのが大変だった。
実は自分はかつて同著者の代表作『虚無への供物』を読もうとして、途中で挫折した記憶があるのだが、『幻想博物館』から入れば良かったと今更ながら後悔している。
・・・・・・それはさておいて感想を書き残したい。短編として各作品は仕上がっているのに、一冊を通してみるともう一つの話が展開されている、連続短編ならぬ連作小説の斬新さもさることながら、一話の完成度も高く、味わい深い作品たちばかりだった。わけが分からなくなる話、というより -
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再読。「とらんぷ譚」最終巻です。
この巻では例外的に「とらんぷ譚」全編に漂う幻想性も耽美性も薄く、辛うじて連作短編集としての体裁は保っているものの、限りなく長編小説に近い構成になっています。テーマは「悪魔の骨牌」を引き継いで「戦争」。
若い時代を戦争の中で過ごした初老の三姉妹が、過去の戦争の影に触れつつ過ごす日常について語られています。非常に地味ではありますが、中井英夫の物語部としての才能のなせる業なのでしょう、起伏がないにも関わらず物語の中に引き込まれました。どこか諦念を感じつつ過ごす生活に共感する部分があったからかもしれません。
とらんぷのジョーカーにあたる「影の狩人」「幻戯」の2篇は -
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再読。52枚のトランプと2枚のジョーカーに模せられた幻想的な連作短編集です。さらに各スーツごとにひとつながりの大きな物語にもなっているというこだわり方で、質の高さといい構想の妙と言い、日本文学が生んだ短編集の白眉と言えると思います。
「幻想博物館」は第1集にあたりますが、個々の作品の質の高さは随一で、どれひとつとっても反世界的な情念とセンスオブワンダーに満ちていて、捨て曲ならぬ捨て作品はひとつもないという驚くべき質の高さになっています。
個人的に特に好きなのは「火星植物園」「大望ある乗客」「黒闇天女」「蘇るオルフェウス」の4作品です。三島由紀夫が自害した日にかかれたと言う「蘇るオルフェウス