中井英夫のレビュー一覧

  • 新装版 虚無への供物(下)

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    ネタバレ

    めちゃくちゃ面白かった。

    想像は時として現実をも凌駕し、新しい物語を生み出す。蓋を開けてみれば、なんだ、こんな感じ?
    なんだけど、時代の背景と相まって、なんとも言えないスカッとしない感じが底にあって面白い。

    読んだ本と知識が半端なくすごいと思うのだが、
    『黄色い部屋の秘密』なんかも、あ、犯人言っちゃうんだ…

    『現実に耐えられなくて逃げこんだ非現実の世界は、現実以上の地獄で、おれはその針の山を這いずるようにして生きてきたんだ。』

    終章の蒼司の告白が最高だった。考えて考えて考え出した答えは歪曲し、別の方向へ怒りとして矛先をかえる。自分が納得した形があれだ。
    無責任な好奇心の創り出すお楽しみ

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    2023年07月16日
  • 新装版 虚無への供物(下)

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    日本三大奇書のひとつであり、アンチ・ミステリの金字塔とも言える作品。
    探偵達の永遠に続く推理合戦に、現実と虚構が混ざり合い、一気にワンダランドへ連れてかれました。
    犯人の独白が痺れたしミステリファンには刺さるんじゃ無いかなぁ

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    2023年05月09日
  • 新装版 虚無への供物(下)

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    アンチミステリの世界
    これは…
    なるほど。

    『ドグラマグラ』とも『黒死館殺人事件』とも違う。奇書と構えて読むからか、胸に遺物が残る読後感。

    1955年が舞台。
    1年前に起きた洞爺丸沈没事故により両親を亡くした氷沼蒼司、紅司、藍司。
    ある晩、藍司はアイヌの格好をした不審者を目撃し、紅司は、アイヌの呪いや洞爺湖の蛇神の祟りだと怯える。
    藍司が働くゲイバーの客であり、蒼司の友人、光田亜利夫は氷沼家と仲を深めるが、そこで謎の密室殺人事件が起きてしまい、巻き込まれてゆく。
    家系・密室系のミステリーです。

    ノックスの十戒はもちろんだが、江戸川乱歩や不思議の国アリスの話などがポンポン出てくる。
    複数人

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    2022年03月30日
  • 新装版 虚無への供物(下)

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    ネタバレ

    まず、単純に面白い。奇書とか墓碑銘とか何も気にせずに読んだとしても、不動ー薔薇ー犯罪の符号(特に黄色の薔薇には驚かされた)や、三重の密室トリックはとてもレベルが高く、珍説もあるものの、推理合戦はかなり楽しかった。

    そして”楽しんだ”後に訪れるのがあの仰天とも肩透かしともとれる真相。
    しかし、これは「肩透かし」だと思ったらもう十分に犯人たる資格を有していることになるのだ。事件が起こる前からヒヌマ・マーダーなどと騒ぎ立てている久夫たちと同じく、これは殺人事件でなにか突飛なトリックが使われているに違いないと思い込み、”楽しみ”にしているということなのだから。

    反推理小説であり、著者自身は「反地球

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    2022年02月02日
  • 新装版 虚無への供物(下)

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    再読。
    久しぶりの中井英夫文体に実家のような安心感をおぼえた。解説の出口裕弘は美文の度がすぎると思っていたようだが、シンプルではないにせよハッキリとしたスタイルを持つ文章はそれだけで読むストレスが少ない。
    探偵気取りのキャラが何人もでてきて、推理を披露するや「いやいや…」と否定され失敗していくタイプのミステリーが好きだと最近自覚したんだけど、その源流は『虚無への供物』だったんだなと。この形式の面白さは「一つの事件につき幾つもの解釈法を読ませてもらえるお得感」だと思う。けれど、この〈推理ゲーム〉がゲームであること自体に意味を持たせているのがこの作品のすごさ。推理小説が殺人事件を創り出し、探偵によ

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    2021年11月14日
  • 新装版 とらんぷ譚1 幻想博物館

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    幻想文学の金字塔、中井英夫の、とらんぷ譚Ⅰである!

    澁澤龍彦の解説と、建石修志の挿絵見たさに新装版を捜したが、現在ほとんど市場に出回っておらず、手に入れるのが大変だった。

    実は自分はかつて同著者の代表作『虚無への供物』を読もうとして、途中で挫折した記憶があるのだが、『幻想博物館』から入れば良かったと今更ながら後悔している。

    ・・・・・・それはさておいて感想を書き残したい。短編として各作品は仕上がっているのに、一冊を通してみるともう一つの話が展開されている、連続短編ならぬ連作小説の斬新さもさることながら、一話の完成度も高く、味わい深い作品たちばかりだった。わけが分からなくなる話、というより

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    2021年12月16日
  • 新装版 とらんぷ譚1 幻想博物館

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    冒頭の「火星植物園」に痺れてハマった中井英夫の幻想譚。精神病院を訪れた「私」に医師が語り始めた。その内容は…。肌が粟立つこの魅力は半端ありません。中井英夫の真骨頂は短編にあり短編集のベストはこれで、中でも冒頭の一作です。

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    2021年04月08日
  • 新装版 虚無への供物(上)

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    死の因縁が蔓延る氷沼家の悲劇と告発。

    命を名付け
    密室を企て
    物語を描け
    事件を紡げ
    謎を紐解けるのは、人間だけ。

    人間だから、付き纏う…

    誠実な嘘と醜悪な真実を、無邪気のマドラーで掻き混ぜ固めた種。庭に蒔いた時、貴方好みの薔薇は咲いただろうか?

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    2020年09月03日
  • 新装版 虚無への供物(下)

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    日本SFの三大奇書として有名な本作だが
    奇書という言い方は充分に誤解を招く
    作者はアンチミステリとし「推理小説の墓碑銘」と評されたというけれども
    現在ではそう言われることはない
    つまり『黒死館』や『ドグラマグラ』と違い
    普通のミステリと呼ばれるものと違うものでは既にない
    ただ違うところがあり奇とするなら
    日本人作家の書いたミステリとして
    普通と違い良くできていることにのみ奇があり
    けれどそのことは不思議でなくミステリでもない

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    2019年01月11日
  • 新装版 虚無への供物(上)

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    ベスト級の傑作。日本ミステリ三大奇書の一つで、アンチミステリという言葉が本来指し示す唯一のミステリ。その酩酊感とペダンティックな内容は奇書好きにはたまらない。そして結末はミステリ史に名を残すもの。現実が虚構に飲み込まれ、すべてのミステリが本作を機に一度死んだとも言える。ミステリファンなら絶対に読んでおきたい名作。

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    2017年08月01日
  • 新装版 とらんぷ譚1 幻想博物館

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    読みながら久しぶりに鳥肌が立つ作品に出会えた。

    おぞましさと妖艶さが同居していて、
    現実なのか空想なのか分からないまま引き込まれてしまう短編集。

    皆川博子のような耽美な雰囲気の作品もあれば、
    ブラッドベリのようなブラックユーモア炸裂の作品もあり、好きな人にはたまらない世界観。

    父が息子に当てた手記から徐々に事件の真相が明らかになる『聖父子』、
    どんでん返しがピリリと効いた『大望ある乗客』、
    ラストの『邪眼』に全身が総毛立った。

    しばらくこの余韻から抜け出せそうにない…

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    2017年02月12日
  • 新装版 とらんぷ譚2 悪夢の骨牌

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    短編集だが続き物。
    藍澤家の美しい母娘のもとに、失踪した青年から手紙が届く……というミステリタッチだが、
    思いも寄らない方向へ動いていく。
    中井英夫が「時間」に執拗にこだわるのは、やはり戦争体験と絡めて語られるべきものなのだろうか。
    そうではなくてもっと美学的な見地からまとめられたらいいのに、と思うが……。
    ともあれ傑作。
    とらんぷ譚は創元文庫で読んだのを講談社文庫で再読しているのだが、一番記憶に残っていたのが、この悪夢の骨牌だった。

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    2016年07月13日
  • 新装版 とらんぷ譚1 幻想博物館

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    十三の、断片であり、長編のパーツでもある短編群。
    不吉で、煌びやかで、滑稽で。
    とにかく「不潔」という言葉からもっとも遠い、ノーブルな手品のよう。

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    2016年07月13日
  • 新装版 虚無への供物(上)

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    ネタバレ

    字が大きく、とても読みやすい!内容もセリフが多く読みやすい。「奇書」という言葉に警戒し過ぎていた。

    はじめは小説的な殺人事件以外認めないと言うメタ的な内容や、推理小説のわりにキャラがしっかり立った登場人物たちの会話が面白く、楽しい気持ちで読んでいたが、だんだんと氷沼家の人ばかり死んでいき、悲しい気持ちなっていった。

    物置の中が「びしょびしょに濡れて、いちめん血だらけ」だったというのは何だったのか
    蒼司が犯人なのか
    氷沼家の人は全滅するのか

    気になる。

    とりあえず、アクロイド殺しだけでも読んでおいてよかった。

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    2015年04月06日
  • 新装版 とらんぷ譚1 幻想博物館

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    初めて読んだ、中井英夫の作品。どれもこれも魅力的な作品ばかり。文章も勿論素敵。挿絵も綺麗で、より世界に浸れます。
    チッペンデールの寝台と、薔薇の夜を旅するときがお気に入り。
    解説が、大好きな澁澤龍彦なのも、よかった。

    幻想の中に生きる為には、やっぱり正常なままでは駄目なのだろうか。

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    2013年03月13日
  • 新装版 とらんぷ譚1 幻想博物館

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    薔薇の匂い。ずっと、薔薇の匂い。1つ1つ読み終える度に、薔薇の色が変わる、頭の中で。この小説を読んで、薔薇の「闇と光」が分かった気がするのです。

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    2012年09月19日
  • 新装版 とらんぷ譚1 幻想博物館

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    『虚無への供物』と並ぶ、中井英夫の代表作。
    『とらんぷ譚』シリーズの第1巻。
    日本幻想文学の最高峰短編集。

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    2012年07月05日
  • 新装版 とらんぷ譚2 悪夢の骨牌

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    4部作の二作目にして鏡花賞受賞作。幻想文学というととっつきにくいイメージですが、平易でかつ美しい文章と建石修志の謎めいたイラストが幻想世界へといざないます。

    謎の美しい母子の洋館に集められた青年達。
    失踪した青年の謎から話は思わぬ方向に転がっていきます。
    耽美とも言えるしSFとも言えるかもしれません。

    解決できない謎を楽しむ一冊。

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    2012年06月26日
  • 新装版 とらんぷ譚4 真珠母の匣

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    再読。「とらんぷ譚」最終巻です。
    この巻では例外的に「とらんぷ譚」全編に漂う幻想性も耽美性も薄く、辛うじて連作短編集としての体裁は保っているものの、限りなく長編小説に近い構成になっています。テーマは「悪魔の骨牌」を引き継いで「戦争」。

    若い時代を戦争の中で過ごした初老の三姉妹が、過去の戦争の影に触れつつ過ごす日常について語られています。非常に地味ではありますが、中井英夫の物語部としての才能のなせる業なのでしょう、起伏がないにも関わらず物語の中に引き込まれました。どこか諦念を感じつつ過ごす生活に共感する部分があったからかもしれません。

    とらんぷのジョーカーにあたる「影の狩人」「幻戯」の2篇は

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    2012年02月23日
  • 新装版 とらんぷ譚1 幻想博物館

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    再読。52枚のトランプと2枚のジョーカーに模せられた幻想的な連作短編集です。さらに各スーツごとにひとつながりの大きな物語にもなっているというこだわり方で、質の高さといい構想の妙と言い、日本文学が生んだ短編集の白眉と言えると思います。

    「幻想博物館」は第1集にあたりますが、個々の作品の質の高さは随一で、どれひとつとっても反世界的な情念とセンスオブワンダーに満ちていて、捨て曲ならぬ捨て作品はひとつもないという驚くべき質の高さになっています。

    個人的に特に好きなのは「火星植物園」「大望ある乗客」「黒闇天女」「蘇るオルフェウス」の4作品です。三島由紀夫が自害した日にかかれたと言う「蘇るオルフェウス

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    2011年12月31日