中井英夫のレビュー一覧
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ネタバレ思ってもいない方向に話が進む、良い意味でつかみどころのない一冊だった。気づけば知らない道を歩いている気がして、何度も後ろを振り返るような読み方をした。
一番お気に入りなのは『薔薇の獄 もしくは鳥の匂いのする少年』だった。薔薇園で夢見心地の時間が過ぎ、この不思議で不気味な少年の正体が分かったとき、不可解な現象も認めざるを得なくなる。悲しく甘美な短編だった。
幻想と耽美の世界だと思って読んでいたら、いつの間にか時間旅行に惑わされている。昭和の戦後の風景が今そこで見てきたように生々しく、生き生きとした生命力も感じられて、突然そこに放り込まれた時間旅行者と同じ体験ができているのではないかと思った。
こ -
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小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」は、どうにか読み終えたものの、理解出来ずに撃沈!
次は、日本三大ミステリのもうひとつ「虚無への供物」。
「推理小説史上の大傑作が大きい活字で読みやすく!!」の言葉に励まされて読んでみました。うん、確かに読みやすかったです。しかし、ミステリの醍醐味だと思う「すっかり納得できる」と言うものとは全然違うんですね。解説でも、アンチミステリーだと書かれていました。何か胸の中にモヤモヤを抱えたまま最後を迎えてしまいました。とくに、重要な探偵役と思われた牟礼田俊夫の行動(謎はすっかり解けた、それを君たちに話す前に云々…)にはモヤモヤ、モヤモヤ。
やはり私は沈没でした。
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ネタバレ「虚無への供物は、それでも次々と葉を噴き出していた。その葉も白緑に若々しく、縁のギザギザだけがうっすらと紅い。とげはまだオルゴールの針に似て固いが、これもすぐ蜜蝋をたらしたように透きとおってゆくのであろう。」
凶鳥の黒影。1955年。洞爺湖転覆。連続火災。奇怪な事件。密室に次ぐ密室。存在しない花の組み合わせ、五色の不動尊や色との不気味な暗合。
緑司や玄次の死、アイヌなど、大して種明かしはなく偶然や思い込みで片付けられてしまって、トリックが一貫した動機の解明と満足感があるかというと、そうではない。また、登場人物の会話と推理がすぐれているかというとそうでもない。推理小説としてより幻想文学として、 -
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ネタバレミステリ好きとしては伝説的な本作をなんだかんだではじめて読みました。感想は上下あわせてのものです。
なんというか・・・ところどころ楽しく面白く読んではいたんですが、読み終わってみると「ピンとこない」の一言・・・ですかね。まあ序盤からしてミステリ好き達が実際の事件をおもしろおかしく話しまくってるのを見てどことなく不謹慎さを感じつつも「そういう時代だったのかなあ」と思っていたらそれこそが・・・という。最後になって急に登場人物に糾弾されましたが「いやお前が言うな」という気分に。
あとミスリードな部分とか探偵役の思わせぶりな話とかがさすがにちょっとしつこく感じましたかね。
ところで自分が読み逃してし -
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ネタバレ【ネタバレあり】
とりあえず読んだだけでいっぱいいっぱいだった初読時よりは内容を理解できた…と思う…けど、正直どこまでが事件の本筋だったのか、あやふやな感じです。
紅司の殺害現場に意味ありげに洗濯機の中から出てきたゴム毬ですが、犯人いわく「なぜそんなことをしたのか、自分でも説明できないが、そうせずにはいられなかったから」という、力技にはちょっと笑った。なんじゃそりゃ。
ミステリ的には疑問に思うところもいっぱいあったけど、この小説の暗くて妖しい雰囲気はとても好き。
犯人は狂ってると思ったけど、一番恐ろしいのは牟礼田なんじゃないかという気がしました。
読者として読んでいる分には素人探偵たち -
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新装版で再読。
初読がいつだったかと過去の登録を見てみると、2011年の丁度8月だった。当時の感想を読み返してみると「一度読んだだけでは理解できてないところも多いけど、とりあえず今は読みきったという達成感でいっぱいです。」と書いてあった。さて、8年経った今再読してみて、すごい!ほとんど忘れてる!!…というわけで、ほぼ初読のような気持で読みました。
氷沼一族周辺に降りかかる災難と殺人事件を素人探偵たちが引っ掻き回し、牟礼田登場で解決へ進むかと思いきやさらに話がややこしくなって行きます。なんでそうなるんだ?なんでなんだ…?すべて分かっている風の牟礼田の焦らしっぷりにはイライラさせられる。
最後の大 -
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日本三大奇書。『ドグラ・マグラ』に続いて読んだ。
ネタバレしそうなので、前情報などは見ずに読み始めた。上巻を読み終わった今の状態だと、面白い本なのかどうかはまだ分からない。でも、不思議な感じがする。
・舞台は1954年(昭和29年)の日本か?この年に発生した事件がいくつか出てくる。自分が生まれる前なので、どれも初耳。ネット検索してみると、どれも世間を騒がせた大事件だとわかった。
- 二重橋圧死事件
- 第五福竜丸事件
- 黄変米事件
- 洞爺丸事件
- 鏡子ちゃん殺人事件
- カービン銃ギャング事件
・「アラビク」というゲイバーが出てくる。下谷・竜泉寺にあるとか。ゲイというのが