中井英夫のレビュー一覧
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再読。
とらんぷ譚の第2集にあたるこの本では、「幻想博物館」の反世界的な耽美的作風を引き継ぐように始まります。全体を通したテーマは「時間」。しかし、徐々に当初の予定から変節し、中井英夫本人の戦後に対する複雑な心境が徐々に前面に出てくるようになっています。
言って見れば幻想小説からはじまった連作短編集がいつの間にか私小説に近づいているかのような印象で、ある意味では短編集としては破綻しています。
しかし、この本の面白さはまさに著者の思考に引きずられて物語が方向性を失っていくその危うさであって、破綻しているがゆえに価値がある小説とも言えると思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昭和48年。「夢魔の館」にいるという失踪した青年からの便りを緒に、令嬢柚香(ゆのか)の犯罪記録と瑠璃夫人の時間旅行体験が明らかになる。2人によって24年前の戦後へ送りこまれ精神病院に閉じ込められた木原直人は、地上の半身を呼びよせ戦後から脱出する。
残酷な仕方でしか男を愛せない柚香の存在感が際立ち、主人公木原を含め、男たちは影のように現実と非現実をさまよう。彼女がどのように罰せられるかに期待したが、肩すかしをくらった。
木原の時間旅行後、現実と非現実は反転を繰り返し、いくつものパラレルワールドに分身が存在するような、更にはここにいる自分が借物でしかないような存在の不安に読者も巻き込まれる。夢野 -
Posted by ブクログ
ネタバレ日常から唐突に非日常につきおとされる、
幻に想いに狂う人々の姿と謎を集めた短編集
独立している短編小説のようで、
帰結する先が"流薔園"という名の精神病院、
隠されたリンクが繋がるミステリの巧さ。
特に「黒闇天女」や「蘇るオルフェウス」などは、
刻々と真実に迫っていく構成がお見事。
かと思えば「チャペンデールの寝台」では、
ブラックユーモアの様なおかしみのあるオチさえ見せる。
「実は語り手が狂ってた」ような末路が多いがそれぞれ切り口は個性的、
さらに多次元的な繋がりに気づけば、読めば読むほど面白くなっていく。
日常から狂気への幻惑される描写も丹精で、
プロットの技 -
Posted by ブクログ
中井英夫文学忌、黒鳥忌
タイトルに「黒鳥の〜」があったと思うけど
ご本人さんがご自宅を「黒鳥館」と呼んでいたかららしい
1974年第二回泉鏡花賞
骨牌譚Ⅱスペードを
「虚無への供物」を読むには まだ早いかなと
雑誌「太陽」連載作品
目次にある月は 発行月ですね
トランプのように13話
向田邦子さんの「思い出トランプ」が、似たような構成でおしゃれだなと思っていたけど
もしかしたらこちらの方が数年古そう
ゴシック調の洋館で開かれるサロン
令嬢の妖しい誘い
十人の客
二人の失踪
反現実から ふと現実へ戻るのかと思っても
再び異空間へ
わかりません
耽美が好きとか言ってごめんなさい
わかるのでは