あらすじ
幻視者たちの見た夢……伝説の短編集、復刻! 反地上的な夢濃密な幻想、日常世界を超えた者が見るのは反地上的な夢。濃密な幻想で構築される、妖美なる博物館――日常的な人間世界を超え、あるいは離脱して、幻視者たちが存在する。彼らが視るものは、反地上的な夢、濃密な幻想である。それを蒐集して構築される、幻想博物館の妖美さ。著者が熱愛する短篇形式への供物として捧げた13の幻想譚は、手作りトランプのように、装飾にみち色鮮やかに語られる。連作とらんぷ譚1。
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幻想文学の金字塔、中井英夫の、とらんぷ譚Ⅰである!
澁澤龍彦の解説と、建石修志の挿絵見たさに新装版を捜したが、現在ほとんど市場に出回っておらず、手に入れるのが大変だった。
実は自分はかつて同著者の代表作『虚無への供物』を読もうとして、途中で挫折した記憶があるのだが、『幻想博物館』から入れば良かったと今更ながら後悔している。
・・・・・・それはさておいて感想を書き残したい。短編として各作品は仕上がっているのに、一冊を通してみるともう一つの話が展開されている、連続短編ならぬ連作小説の斬新さもさることながら、一話の完成度も高く、味わい深い作品たちばかりだった。わけが分からなくなる話、というよりは、やはりそれは、あたかも自分が流薔園に赴く一人で、幻想博物館に展示させられた奇異なスぺクタルを眺めて楽しんだことを述懐しているような、妙にリアリティを帯びた『リアル』な話。だからこそ、最後の『邪眼』には物凄い衝撃と充実、感動を受けた。本当に、特に後半の話からは、時間を忘れて幻想を彷徨していたように感じる。
特に好きな話を5つ、私が挙げるとするなら、『地下街』、『チッペンデールの寝台、もしくはロココふうな友情について』、『蘇るオルフェウス』、『薔薇の夜を旅するとき』、『邪眼』だ! たまらん、最高!
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冒頭の「火星植物園」に痺れてハマった中井英夫の幻想譚。精神病院を訪れた「私」に医師が語り始めた。その内容は…。肌が粟立つこの魅力は半端ありません。中井英夫の真骨頂は短編にあり短編集のベストはこれで、中でも冒頭の一作です。
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読みながら久しぶりに鳥肌が立つ作品に出会えた。
おぞましさと妖艶さが同居していて、
現実なのか空想なのか分からないまま引き込まれてしまう短編集。
皆川博子のような耽美な雰囲気の作品もあれば、
ブラッドベリのようなブラックユーモア炸裂の作品もあり、好きな人にはたまらない世界観。
父が息子に当てた手記から徐々に事件の真相が明らかになる『聖父子』、
どんでん返しがピリリと効いた『大望ある乗客』、
ラストの『邪眼』に全身が総毛立った。
しばらくこの余韻から抜け出せそうにない…
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十三の、断片であり、長編のパーツでもある短編群。
不吉で、煌びやかで、滑稽で。
とにかく「不潔」という言葉からもっとも遠い、ノーブルな手品のよう。
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初めて読んだ、中井英夫の作品。どれもこれも魅力的な作品ばかり。文章も勿論素敵。挿絵も綺麗で、より世界に浸れます。
チッペンデールの寝台と、薔薇の夜を旅するときがお気に入り。
解説が、大好きな澁澤龍彦なのも、よかった。
幻想の中に生きる為には、やっぱり正常なままでは駄目なのだろうか。
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薔薇の匂い。ずっと、薔薇の匂い。1つ1つ読み終える度に、薔薇の色が変わる、頭の中で。この小説を読んで、薔薇の「闇と光」が分かった気がするのです。
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再読。52枚のトランプと2枚のジョーカーに模せられた幻想的な連作短編集です。さらに各スーツごとにひとつながりの大きな物語にもなっているというこだわり方で、質の高さといい構想の妙と言い、日本文学が生んだ短編集の白眉と言えると思います。
「幻想博物館」は第1集にあたりますが、個々の作品の質の高さは随一で、どれひとつとっても反世界的な情念とセンスオブワンダーに満ちていて、捨て曲ならぬ捨て作品はひとつもないという驚くべき質の高さになっています。
個人的に特に好きなのは「火星植物園」「大望ある乗客」「黒闇天女」「蘇るオルフェウス」の4作品です。三島由紀夫が自害した日にかかれたと言う「蘇るオルフェウス」などはそのまま長編にしても通じそうなほどの密度の濃さです。
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こんな美文で彼岸に達してしまった人達を書かれたら参らないわけにはいかない。本人にその意思が無くても、最後の最後まできちんとまとまっている磐石の幻想短編集。根への偏愛を書く「火星植物園」(若干乱歩風味)、今では定番となってしまったバスの乗客それぞれの心情「大望ある乗客」、忌まわしき三つの贈物「黒闇天女」(個人的ベスト。毒々しいのに最後は格好良いと思ってしまった)、妖しき降霊会「地下街」(短編集中珍しく読後感が切ない)、書簡で過去の事件の真実をあぶる「蘇るオルフェウス」、毒に魅せられた子供「公園にて」と雰囲気は同じなのによくこれだけ味わいの異なる様々な作品を書けるなと驚嘆した。
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とある精神病院の少し変わった患者をめぐる短編集。
最初は少しインパクトにかけるなと思っていたが、それぞれの話がリンクしてて最後にはやっぱりうまいなと思ってしまう。
読んでいる間、日常を忘れて異常な世界に浸れます。
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日常から唐突に非日常につきおとされる、
幻に想いに狂う人々の姿と謎を集めた短編集
独立している短編小説のようで、
帰結する先が"流薔園"という名の精神病院、
隠されたリンクが繋がるミステリの巧さ。
特に「黒闇天女」や「蘇るオルフェウス」などは、
刻々と真実に迫っていく構成がお見事。
かと思えば「チャペンデールの寝台」では、
ブラックユーモアの様なおかしみのあるオチさえ見せる。
「実は語り手が狂ってた」ような末路が多いがそれぞれ切り口は個性的、
さらに多次元的な繋がりに気づけば、読めば読むほど面白くなっていく。
日常から狂気への幻惑される描写も丹精で、
プロットの技巧と同じほどに文学性も高い。
まぁ、妻手=手品、とか無知な私は恥ずかしながら
辞書片手に読ませて頂きましたが…(笑)
ノスタルジーな言葉選びも素敵。
Posted by ブクログ
「虚無への供物」が好きなので、作品の中の薔薇、風呂場、洗濯機、ガスなどの言葉ににやりとしてしまう。 思いのほか読みやすく、あっという間に本の世界に引きずり込まれた。 とても印象に残る作品ばかりで、この本を読むことができてよかった。
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登場人物の誰が正気で、誰が狂っているのか、不安になる。不気味で美しい世界。「黒闇天女」や「チッペンデールの寝台」が良かった。笑うには不謹慎だけど、滑稽さがたまらない。
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ぞっとする瞬間がたくさんある。一人称の幻想の世界に入り込んだところで、ふいに客観的な視点まで引いてしまうような。壮快なだけではないどんでん返し。
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ひねったはなし
短篇ドグラ・マグラ的なもので、よくできてはゐる。
でも、腹落ちはしない。
凝った仕掛けの技巧小説が結構ある世の中をかんがみれば、まあ、そんなもんか。と思ふ。
精神病院も一時代を築いたモチーフだったが(夢野久作、トーマス・マン、北杜夫など)、ただの流行りだった。
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うーん、正直期待外れでした。
猟奇系のもっと毒のある話を期待してたんだけど、夢野久作や江戸川乱歩のような強烈な作品を読んだ後だとその辺で物足りなく思えてくる。
文章に癖がなさすぎるのか、途中装飾過多な表現も多々見られたけどもテンポを悪くさせているだけというか。
流薔園の話や、車椅子の男の話、「牧神の春」「邪眼」辺りは他と違ってテンポよく話が進んで気持ちがよかった。