鈴木忠平のレビュー一覧
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将棋(の対局・棋譜)の中身にほとんど立ち入らずに人間ドラマだけでここまで読めるように描けるのはすごい。
しかし、中に立ち入らないからこそ、読み応えに欠けるところもあったと思う。『嫌われた監督』が、三遊間のノックについてとか、開幕投手というものについてとか、野球についてある程度分かっている読者が多いからこそ共有していた前提のような知識があり臨場感を作っていたのに対して、やや不完全燃焼になったのはそういうところからかと思う。
(あえて言えば渡辺が羽生との対局で「打ち歩詰め」があるから勝てるかもと気づいた辺りは将棋の中身あっての面白さかな。本書で唯一の。)
とはいえ、棋士の孤独性(ともに戦ってくれ -
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羽生善治名人(と呼ぶのが正しいのかはわからないが、一般的な意味での名人ということでよかろう)と対戦した人々を描きつつ、羽生善治本人の像を浮かび上がらせようというノンフィクション。
登場人物はそれなりに多く、とはいえ一人一人を丁寧に描くのは難しい。
最近読んだ本だと「怪物と闘うということ」が似た構成だが、あの作品ほど丁寧に出来ていない。
いや、「怪物〜」がとても良く出来た作品なんだが、残念だ。
とはいえ、将棋の魅力に取り憑かれた男たちの人生は魅力的だし、その交わりの中心にいる羽生善治の凄さは際立っているから、作品として充分成立していると思う。
天才は凄いよねぇ…。 -
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北海道日本ハムファイターズが現在のエスコンフィールドへ移転するプロジェクトを追いかけたもの。
ファイターズ職員、移転先であった北広島市職員、移転元の札幌市職員それぞれ複数名が登場し、育ちからプロジェクトに巻き込まれるまでの経緯、プロジェクトのあれこれが語られる。
みんな野球少年だったんだな。
それら登場人物を丁寧に拾っていくのだが、それゆえにメリハリがないというか、もう少し誰かにフォーカスしてダイナミックなストーリーにならなかったものか、という印象。
いや、そうしようとはしたけれど、どの切り口も深くならなかったから、薄く広くになったのかもしれない。
だとすればその辺がノンフィクションの限界だ -
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自分にとって中日と言えば星野仙一、その熱血漢とは対極のイメージを感じさせる落合博満。天才ゆえか、人に見えないものが見えているのか、他人をバカにしているとも捉えかねない目線や冷笑。そりゃ嫌われるだろう。ただ、そのご家族を見ると、本当は優しい人なのかもとも思わされる。
本書は12名の選手や関係者の目を通じて、落合監督時代の2004年から2011年までの8年間を追うノンフィクション。最初から川崎憲次郎という選択は、中日ファンではなくても惹きつけられた。
勝つ球団にすることにこだわり、人に理解されることを放棄したように見えるリーダーシップ。プロなのだから当たり前だが、一人一人が自分の頭で考えて、自 -
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【感想】
2018年10月、第31期竜王戦七番勝負。勝てばタイトル通算100期となる羽生善治に、挑戦者の広瀬章人が挑む。勝負は最終戦第7局までもつれ込んだ末、羽生が敗れた。これで羽生は1991年3月以来、27年9か月ぶりに「無冠」となった。
思えば、羽生は勝負の世界において、27年もの間トップであり続けたのだ。尋常ではない。歳を取るごとに思考力が衰えていく中、若手は次々と台頭してくる。そんな中挑戦者を退け続け、27年間棋界の頂点に君臨した。もはや天才を通り越した「神」の領域である。
一体、羽生という男はなんなのか。その思考は。その生きざまは。
そして、羽生は一体どのようにして、将棋と向き合って -
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★サブタイトルに嘘はないが★確かに「清原和博を巡る旅」ではある。ただ、こちらが期待した周辺の人の証言の蓄積というよりは、「著者の旅」だった。
消費される日々のニュースに倦んでストーリーを求めて独立した著者。清原という巨大な対象の転落から再生の物語を描くことと想定していたが、引き寄せられ振り回されるが劇的な展開はない。それでもいい、という著者がケリをつける書物だった。
確かにそれでいいが、こちらが求めているものではなかった。もしかしたら清原そのものを知るには、著者の別の本を読むべきなのか。
それにしても、清原というブラックホールに引き寄せられる人々の思いは何なのだろうか。 -
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北広島のボールパークができるまでの物語。
主な主人公は、ファイターズのマーケティング部門責任者。
かねてから、札幌ドームの借家契約に不満があり、度々改善を札幌市側に求めていたが、折り合いがつかず、ついに札幌ドームを出るという決断に至る。
ここに至るまでは、もちろん一筋縄ではいかず、ファイターズ内、日本ハム内でも反対の声が大きかった。
社内をひとつにまとめ上げるまでも多大な苦労があったことだろうと思う。
本書では札幌市側の対応を好意的に書いていたが、実際にはもっと杜撰な対応だったと予想する。
でなければ、莫大な費用をかけて札幌ドームを出ていこうとはならないはず。
そもそも、札幌ドームは野球も