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Posted by ブクログ
本書を読み進めるうちに、清原和博という人物そのものに強く惹きつけられていった。まるで自分自身が甲子園を夢見て青春を過ごす高校球児であったかのような気持ちになり、ページをめくる手が自然と熱を帯びたことを覚えている。
ドラフト会議での苦い経験、栄光の裏に潜む葛藤、そして引退後に訪れる寂しさ――。華やかな世界の象徴である清原の姿が、むしろ人間らしい弱さや空虚さを通して描かれている点が印象的だった。
挑戦する場を失い「空白が生まれる」という描写には、スポットライトから遠ざかった人間が抱える孤独や心の揺れがにじんでいた。
また、本人だけではなく周囲の人々もまたその寂しさに触れ、寄り添い、傷つきながら関わっていく。その姿を追うなかで、「人は何のために生きるのか」「人は誰のために動くのか」という問いが自然と胸に生まれた。
人は、自分のためだけでは前に進めない。他者のために動くとき、人は再び光を見いだすのかもしれない――そんな示唆を受けた。
栄光と挫折、孤独と再生という人生の側面を通して、人の生き様を深く考えさせてくれる一冊だった。読後にはどこか余韻が残り、清原という一人の人間の人生に寄り添ったような、静かな感動が心に灯った。
Posted by ブクログ
本年もよろしくお願いします。
さて今年の一冊目は「清原和博を巡る旅」と副題
にも謳われた「虚空の人」です。
「嫌われた監督」で注目を浴びたノンフィクショ
ン作家、鈴木忠平氏の最新作です。
少なくともプロ野球選手としては成功した清原和
博氏についてはではなく、薬物使用で逮捕された
「その後」を追っています。
そして「その後」にこそ、清原和博という一人の
人間の姿を私たちは知ることになります。
「ああ、キヨハラってこういう人だったのか」と
妙に納得してしまいます。
何も知らない人は彼を「汚れた英雄」「堕ちた英
雄」と言います。
しかしこの本からは清原という人物は、たとえ甲
子園で13本のホームランを打っていなくても、た
とえドラフトで西武でなくそのまま巨人に入って
いたとしても、たとえ薬物に身をやつさなくても
「こういう人だったのだな」と納得し、親近感を
抱かずにはいられない一冊です。
Posted by ブクログ
清原氏は三歳ほど年上の方。
スポーツはおろか、健康にも、恵まれたとはいえない自分の青年期に、あまりの格差に、羨ましいとも感じず、ただニュースで名前を見るだけの人だった。
中年になり、とんねるずの番組で、どう見ても堅気ではない様子で活躍しているのも見かけた。
その後、クスリで話題に。
同じ時代を生きてきた、あまりに違う誰かが、どんなふうに過ごしたか、興味はあった。
読んでみて印象的だったのは、むしろ筆者の息遣い。
以下抜粋箇所は、中でも気になったところ。
「スポーツライターという肩書をぶら下げて、勝者となった誰かが手にしたもの、敗者となった誰かに残されたもの、極端な光と闇の間にあることを書けばよかった。フックが付いた針が心に引っ掛かることはなく、憂鬱に堕ちることもなかった。何より、ことあるごとに自分自身の腹の奥底を覗かなくてよかった。」(p207)
「もし、清原の人生があの甲子園の決勝戦だけであったなら、ホームランの一瞬だけであったなら。私はそう考えたりもした。だが、祭りが終わったあとも人生は続いていく。だんじりが通り過ぎたあと、ホームランの歓声が消えたあとには平坦な道が残されるだけだ。人はその日常をもがきながら生きていくしかない。それは清原だけでなく私や他の人間にとっても同じことだった。
誰かの人生を一つの物語に綴じることなどできない。私にできるのは眼前にあるつぎはぎだらけの矛盾を書くことだけだった。私はようやくそのことに気づいた。
そう考えると不思議と焦燥は消えた。物語を探す必要もなかった。」(p292)
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