【感想・ネタバレ】嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのかのレビュー

あらすじ

第53回大宅壮一ノンフィクション賞、第21回新潮ドキュメント賞、第44回講談社本田靖春ノンフィクション賞受賞。
史上初、前人未到の三冠達成!
令和最高のノンフィクション

この本は一体、何人の人生を変えるのだろうか──

各界から感動の声、続出!
中日はなぜ「勝てる組織」に変貌したのか?
スポーツ・ノンフィクションの枠を超え、社会現象を巻き起こし、2022年のノンフィクション賞を総なめにした大ベストセラー。
文庫化にあたり、完全試合目前での“非情采配”山井大介投手降板劇の真相に迫る新章「それぞれのマウンド」を書き下ろし。
新たに川上憲伸に取材、2007年日本シリーズ、幻の第六戦に登板予定だったエースは、あの夜、何を見たのか──?



なぜ 語らないのか。
なぜ 俯いて歩くのか。
なぜ いつも独りなのか。
そしてなぜ 嫌われるのか――。

中日ドラゴンズで監督を務めた8年間、ペナントレースですべてAクラスに入り、日本シリーズには5度進出、2007年には日本一にも輝いた。
それでもなぜ、落合博満は“嫌われた監督”であり続けたのか。
謎めいた沈黙と非情な采配。そこに込められた深謀遠慮に翻弄されながら、真のプロフェッショナルへと変貌を遂げていった男たちの証言から、孤高にして異端の名将の実像に迫る。

著者の鈴木忠平氏は中日の番記者として8年間担当。新たな落合監督像を浮かび上がらせると共に、中日が「勝てる組織」へと変貌していく様をドラマチックに描く。

※この電子書籍は2021年9月に文藝春秋より刊行された単行本の、文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

2004-2011年に中日ドラゴンズを率いた落合博満監督は、選手としても三冠王を3度達成するといった超一流のバッターであり、監督としても在任8年間すべてAクラス、リーグ優勝4回、日本一1回という圧倒的な結果を出している。そして結果を求めすぎる余り野球が面白くないとして、謎の解任劇が起こった。

当時は我が阪神タイガースは岡田監督や真弓監督が指揮して、戦力的にも金本選手や鳥谷選手がピークだったにも関わらず、中日ドラゴンズが立ちはだかって勝てなかった記憶がある。伝統的に選手を信頼して任せる一方で実績ある選手は我慢して使う傾向のある阪神に対して、守備や走塁の一芸に秀でた選手をワンポイントで使う中日の用兵は脅威だった。

この本では、落合監督の特性を語る上で重要な選手たち一人ひとりのエピソードを掘り下げ、どのようにチームが変貌していったかが描かれている。プロ野球チームの変革に留まらず、個々の選手たちの能力を開花させその人生を変化させていく。傍目からみれば何を考えているのか分からない無表情な合理主義者は、実は愛に溢れた指導者でもあった。

落合博満は語らない。自分の信念は言葉では伝わらないことを知っているからだ。落合博満は俯いて歩く。目で見える世界よりも思考や心の中を重視するからだ。落合博満は孤独だ。答えを出すのは自分であり責任も自分で負うからだ。落合博満は嫌われる。世間に評価されたい見栄がなく本音で生きているからだ。

野球やスポーツという範疇に留まらず、優れたノンフィクションとしておすすめの本である。

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2025年10月28日

Posted by ブクログ

やっぱ嫌われてたんや、その内幕みたいなのを期待して購入

中日が強かった落合さん監督時代、落合監督の番記者をつとめられた方が、その当時現役だった選手やコーチ、フロント、それぞれの立場での記憶を元に、嫌われつつもなぜ強かったのか、分析しながらまとめられていました

落合さんは現役時代から「オレ流」と呼ばれる独自の野球観をお持ちだったこともあり、そういう観点からも、監督という立場になるとどのようにつながって行くのか、派生して行くのか、という部分も興味深かったです

契約社会、個人事業主の集団がプロ野球であり、レギュラーは自分で勝ち取るもの、そこまでの下地は自分で築き上げるもの、という考えがあり、才能や衰え、能力の洞察力の凄さも印象に残りました

最も印象深かったのは、内野手として活躍された荒木さんのお話。荒木さんは落合さんに見出されて開花した選手の1人で、レギュラーを勝ち取った当初はセカンドのレギュラー、ゴールデングラブまで獲得した名手であったにも関わらず、あるシーズンに突如、二遊間のコンビを組んでいた井端さんとショートとセカンド入れ替えコンバートとなった裏側はずっと気になっていたことだったので、その内幕、落合さんの考え、洞察力、選手への納得のさせ方、納得する選手側のレベルの高さ、色んな要素が絡み合ったものだったこと、とても奥が深い経緯だったので興味深かったです。

日本シリーズ完全試合継投の裏側も面白かった、森コーチ視点と岩瀬さん視点、山井さん視点、付録で付いてた川上さん視点と、色んな視点で、落合さんとの関わりが振り返えられていて、面白すぎでした。思わず後で当時の試合をYouTubeの動画で見返してしまいました

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2025年05月19日

Posted by ブクログ

落合博満は、選手としても監督としても大きな業績を残した稀有な野球人である一方、「金の亡者」「奔放な発言」「自己中心性」といった「マイナスの評価」も多い。
本書は新聞記者「鈴木忠平」の丹念な取材により「人間 落合博満」の本質を描いた丁寧な「落合博満論」である。
私の落合博満論。本書を読んでとても合点が入った。
落合博満は極めてドライな合理主義者であるが、自己中心的でも金の亡者でもない。ひたすら契約に忠実なプロフェッショナルである。当時の野球人にはいないタイプであるが故に誤解されたのであろう。
その考え方は、外資系のビジネスマンのようであり、極めて興味深い。
 次に落合の野球人としての能力の源泉を考えてみる。本書のどこにも描かれていないが、私は彼の能力の源泉を「直観像記憶」にあると見る。監督時代、落合は著者に「毎日同じ場所で「定点観測」してみな。良く分かるから…」と謎のような言葉を吐く。定点観測すると「その選手(この場合は立浪のこと)の衰えが分かる」と言うのだ。具体的には、守備範囲がちょっとずつ狭くなるのだそうだ。著者にはもちろん分からない。恐らく落合以外、誰にも分からない微妙な変化であろう。では何故落合には分かるのか?
それは彼が「直観像記憶者」だからだ。それも静止画像ではなく「動画」として記憶出来るのではないか?  
 落合のバッティングを見ると初動が早いように見える。一般に超一流のバッターはボールを見極めるため極力初動を遅くする。初動が遅くとも強い筋力と反射神経で、差し込まれずにボールを捉えることが出来る。逆に初動が早いと、想定外のボールに対応出来ない。落合が、初動が早いにもかかわらずヒットやホームランを量産出来たのは、まさに相手ピッチャーの動きを動画として記憶出来ていたからではないだろうか?相手ピッチャーのフォームを過去の記憶から呼び起こすことで、球種・球速やボールの軌跡が分かれば、バッティングはかなり簡単になるだろう。また監督時代には、選手の動きをいつでも脳内で再現することで、その選手の好不調や衰えを明確に判断出来たであろう。落合博満の選手・監督としての能力の根源は『「動画的直観像記憶」にあり』、これが私の結論である。

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2025年03月29日

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野球に詳しくないが落合監督時代のドラゴンズが凄かったということだけは薄っすら覚えているという程度の私でさえも一気に最後まで読み終えてしまうほど引き込む文章がすごかった。

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2025年02月25日

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落合監督が紡ぐ言葉一つひとつ。
その言外に含まれるモノを理解し形にした
集団があの頃の中日ドラゴンズ。
不世出の監督。

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2025年01月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

野球は観ない・やらない(やれない)自分だが、たまたま移動中の車で掛け流していたpodcastかyoutubeで紹介されていて購入。

選手に対する監督としての関わりを通じて、落合氏の人物像が立体的に立ち上がってくるような作品。

自分の場合、一人ひとりのプロ選手の生き様が印象的だった。
これから読む方では、スポーツに限らずプロフェッショナルと形容される仕事をしている場合、感じ入る言葉があるのではないか。
人生、順風満帆にはいかないものだが、それはプロ選手の方も一緒。特にスポーツにおいてフィジカル面では年齢が重要な意味を持ち、終わりを覚悟しなければいけない世界と推察する。分かっていてもその終わりに直面したとき、ひとりの人間として、終わりにどう向き合うか。
プロ選手の葛藤と、それでも前に進む態度に学ばせていただく点が多かった。
 
===
▼個人的に印象深かった点(感想)
・真の渇望は、パサパサのハンバーガーに満足して笑っている内は生まれない。
└いざ全てが終わった後に気がついても遅い。
・挫折を味わい、遠回りしながらも、自分の居場所を勝ち取る。
・いつ自分の居場所を失うかもしれない危機感。
・一球でも多く相手に投げさせる。フォアボールでもいいから、塁に出て、何とか舞台の端にしがみつこうとする。そうした飢餓感のようなものが、他人に何かを感じさせるのでは。

・成功しても個人として得るものはなく、失敗
した場合に失うものは大きい。それでもやることにポリシーが宿るのかもしれない。
・こんなにしんどい思いをして、何も掴めずに終わってたまるかと言えるまで愚直に自分を追い詰めることができるか。
・自分の代わりはいくらでもいる。自分で自分に落第点のバツをつけても、何の慰めにもならない。その中で続ける死に物狂いの努力を日常風景にしていく。
・練習や努力は見せるためのものじゃない。結果が大事。

・新人、若いというだけで使ってもらえるなんて思わない方が良い。ベテランにだって生活はあるし、何よりプロは成果を上げるため/ 上げ続けるために集まっている。
・機会を与えられて生きてきた人間は弱い。ぶつかると潰れてしまう。
・「もう要らない」と言われてしまって、地獄に落ちたような気分でも、もらった言葉の意味を考え続ける。その上で、そこからまた始めるしかない。始めるなら、早い方が良い。
・築き上げた実績に腰掛けようとする度、椅子を取り上げられ、プライドの横っ面を張られ、翻弄されてきた。
└自己革新し続けることがプロの宿命。

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2025年01月04日

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プロフェッショナルとは何か。5度のリーグ優勝と1度の日本一。勝利こそが最大のファンサービスであるプロスポーツにおいて、抜群の成績を残しながらも、なぜ彼は「嫌われた監督」であり続けたのか。彼にしか見えていなかった景色を知ることで、孤高の男が抱えた苦悩に触れ、指揮官の真髄の欠片を学ぶ。スポーツノンフィクションの枠を超えた傑作。

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2024年12月14日

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落合博満という監督は、中日8年間で全年度Aクラス入り、リーグ優勝4回、日本一1回と、輝かしい成績を残した方ですが、記者に対してはぶっきらぼうな受け答えをし、試合中は表情を出さないなど、監督としては異色でした。
でも、落合監督のこの何とも言えない雰囲気が好きで、この時代の野球はよく観ていました。
この書籍は、落合監督本人ではなく周りにいた選手、コーチ、フロントの人たちからの証言プラスもともとスポーツ紙記者だった著者が、実際に落合監督に相対した体験をもとに書いたノンフィクションです。
当然野球に関することではあるのですが、どちらかというと「落合博満の葛藤」というのがテーマで書かれた書籍なんだろうなぁと読んでて思いました。

リーダーとは。
組織とは。
実は悩み、あがき、苦しんでいた。

孤高の存在としてチームを率いた8年間を描いたこの書籍は、読後に重厚なビジネスドラマを観たかのような感覚になります。

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2024年12月07日

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こりゃ名将と言われるわ
宮本武蔵の五輪書を読んだ時の感覚に近い
落合さんは自分の信じた道を貫いたのだろう。だから、それができない人に嫌われたのだろう。
落合さんのような人間は少ない

著書の文書にはとても引き込まれた

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2024年11月20日

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ネタバレ

落合中日の強さと、その後の中日の苦難の理由が分かる本。
勝つことを突き詰めることを監督に望むとこうなるのかもしれないけれど、未来のチームを考えることはできないのかもしれない。
勝利と育成。それを両立することの難しさ。
けれど、類稀なる目を持つ落合監督には勝つ筋道が見えていたから、その道を進むしかなかったのかも。
プロ野球好きとしては面白かった。
ただ、ファイターズファンとしては2007年の日本シリーズの話は辛かった(笑)

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2025年11月05日

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自分は巨人ファンなので、選手時代はともかく、監督時代の落合を全く嫌っていたという記憶しかない。思い出したくもない時代のお話を、そのものズバリのタイトルの本であったが、大宅賞の受賞作とあるからには、実は落合って人は・・・っていうのがあるのかもしれない、という期待感も少しはあって、文庫化されたのを契機に読んでみた。

もう20年にもなる昔の出来事をまざまざと思い起こしてくれて、巨人ファンからは見えてこなかった舞台裏など色々読み応えはあったが、やっぱり落合は好きになれない。スーパーヒーローであることは文句なく認めているんだが、イチローと同じ別宇宙の人だ。比べると大谷さんはなぁ・・・、

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2025年05月13日

Posted by ブクログ

黄金時代

小学生の頃の強かった中日ドラゴンズの内容とあり、とても楽しく読めた。ファンとして読んだので余計面白かった。

それぞれのパートがあったが、どれも葛藤がある。

気持ちを押し殺して采配をし、勝つことが最大のファンサービスとはまさに落合博満である。

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2025年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読みたいなとおもっていたところ、文庫本になったのを機に購入。
落合監督の思考に迫ろうとしていく筆者。最初は若手の記者だったのが、だんだん自信を得ていく姿も感じられる。
やはり、日本シリーズの完全試合を目の前にしての交代が、メイン。登場人物はそれぞれの理屈があってのことだろうが、ドラマを求めるファンには通じない。このテーマは日本のプロ野球が続く限り答えが出ないような気がする。

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2024年12月25日

Posted by ブクログ

落合監督を始めとした中日ドラゴンズへの愛に溢れたノンフィクションの形を借りた上質の“フィクション”である。
その采配や個々の選手との接し方など、今年度退任したタイガースの岡田監督と共通する部分も多々あるように改めて感じた。

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2024年11月23日

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面白かったのだが、どこまでが客観的な記述でどこからが著者の主観なのかということがチラチラ気になってしまった。

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2024年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

⚫︎落合選手
前からファンで、嫌わるの意味がわからず購入してみた。日頃の落合氏の言動がマスコミ側の目線から書かれている。
一般的に面倒という扱いになるなとはわかったが、信念や考えがあってのものとわかる。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

自分にとって中日と言えば星野仙一、その熱血漢とは対極のイメージを感じさせる落合博満。天才ゆえか、人に見えないものが見えているのか、他人をバカにしているとも捉えかねない目線や冷笑。そりゃ嫌われるだろう。ただ、そのご家族を見ると、本当は優しい人なのかもとも思わされる。

本書は12名の選手や関係者の目を通じて、落合監督時代の2004年から2011年までの8年間を追うノンフィクション。最初から川崎憲次郎という選択は、中日ファンではなくても惹きつけられた。

勝つ球団にすることにこだわり、人に理解されることを放棄したように見えるリーダーシップ。プロなのだから当たり前だが、一人一人が自分の頭で考えて、自分の仕事をすることを求める。本当の意味で厳しい世界。自分にも選手にもそれを求めたということ。

読み物としてとても面白かったが、少し綺麗過ぎるようにも感じた。

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2025年05月23日

Posted by ブクログ

徹底した合理論者、選手を勝つための駒と考え、選手にも自分のために野球をやれと語り、情に流されることや馴れ合いをしなかった落合。使えないとなると、説明もなく選手を下げる。野球のいろんなことが見えてしまう天才。こんな監督のもとにいた選手たちは堪らんかっただろうな。しかし、落合が解任されるとなったら、燃えて一位のヤクルトを逆転して優勝した選手たち。「弱くなるのは嫌なんだ」と言った谷繁。まあ、凄い監督だったわ。ただ、見ている方は面白くなかったけどねえ。その後、テレビで辛辣で鋭いことを言う落合を見るのは面白かったけどね。

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2025年02月23日

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