井上亮のレビュー一覧
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天皇と政治の間に立ち、調整を行う宮内庁長官に焦点を当て、歴代10人の宮内庁長官が象徴天皇制80年の中の様々な課題にどう対処してきたかを俯瞰し、象徴天皇制の形成過程とあるべき姿を展望。
宮内庁長官という切り口で戦後の象徴天皇制の歩みを振り返るというような内容で、天皇・皇室をライフテーマの一つとする自分にとって、とても読み応えがあった。
昭和天皇が戦前の君主意識をどうしても引きずっていたのに対し、平成の上皇・上皇后夫妻が現在の象徴天皇制をつくりあげてきたのだということを改めて認識した。昭和天皇と弟の親王たちとの関係、徳仁皇太子(当時)の結婚やその後の人格否定発言、生前退位などのトピックについての裏 -
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皇室について何冊も書いている人が新左翼セクトによる反天皇制闘争を題材にした本を書くのは変わっているな、と思ったら公安担当記者だった時期があって、その時の経験や取材などを元にした本だった。
新左翼を題材にした本は諸セクトが刊行しているものを除けば限られていると思うが、立花隆の「中核vs革マル」を「名著」として言及しながら「同著では立花氏が警察などを取材した形跡が見られないので」と評している。どうやら「中核vs革マル」の上巻の冒頭で警察を取材した事を記した個所を忘れているのか、引用しているのが下巻なので見落としたのだろうか?もっとも半分ぐらいは昭和26年の京大事件から始まり内ゲバ戦争などを前史の -
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皇居南東部に建設された5つの「御府」をめぐる近代史。著者は日経新聞で皇室・近現代史を担当した編集委員(刊行当時)。
日本軍が数々の鹵獲兵器を所有していたことは知っていたが、それが皇居内にあったとは知らなかった。著者によれば、御府には振天府(日清戦争)、懐遠府(北清事変)、建安府(日露戦争)、惇明府(第一次大戦、シベリア出兵)、顕忠府(済南・満洲・上海事変、日中戦争)の5つがあり、靖国神社と対になる形で天皇が前面に出るかたちで戦死者の顕彰を行っていた。各戦争による戦利品と戦死者の名簿も収蔵されており、中には渤海国に関する石碑もあった。修身の教科書等でその存在は紹介されていたが、皇居内の施設だ -
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新左翼の歴史について書かれた一冊。元公安担当記者の著者の取材メモを元にした記述には、当時の空気を感じさせる独特の臨場感があった。
本書からは、「独善的行動は破綻に終わる」という一種の教訓を学ぶことが出来る。
新左翼の面々は、強い正義感に突き動かされ、日本社会の変革を目指した。しかし、それは自分達の考えを疑わない独善性や、他者の犠牲を肯定する身勝手な論理に基づいていた。その為、大衆の共感を最後まで得られないまま、運動は退潮していった。
著者の指摘通り、誰もが現代的不幸(生き辛さ)を抱えて生きている。その心の空漠を埋めることは、確かに容易ではない。終戦以後の社会の矛盾は、人々の心に深い影を落と -
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なんかやな感じを受けた本だった。
この著者、元日経新聞の記者で、昭和天皇が靖国参拝をしなくなったのは、いわゆるA級戦犯を合祀したことを天皇が快く思わなかったからだという議論の元になった、冨田メモをすっぱ抜いた人やったんか。
宮内庁長官の奮闘記と言いながら、本の中でお、長官自身はあまり取り上げられてない感じ。出番、薄い。全般に、皇室、特に昭和天皇への批判が目立つ。
曰く、昭和天皇が象徴天皇という意味を理解していない。
曰く、戦争責任を転嫁しようとしている。
やたら、政治的発言とかなんとかも主張する。
政教分離とおんなじで「厳格に運用することが目的」になっててどうなんだと思うが、右も左も外 -
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平成の明仁天皇(現在上皇)と美智子皇后(現在上皇后)の物語の下巻。即位から退位までの日々が綴られてる。それにしても、象徴という曖昧な形の、いわば荷を背負わされ、長い旅を二人で助け合い続けてきたお二人には感動した。特に、戦禍で傷ついた人々を忘れずに、とにかく平和を祈り続けた姿、災害に見舞われ苦しんでいる人に寄り添う姿は、他を圧倒する迫力があった。政治に関わってはいけない、難しい立場なのに、何かと政治利用しようとする政府や当時の石原都知事の行いは、本当に不快なものだ。保守派と言われる勢力も、天皇の味方かと思いきや、自分勝手な意見で天皇を苦しめる存在でしかないように映った。
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日経新聞の編集委員の井上さんが、わかりやすく、各都市の戦災復興の経緯、実績を説明。
後藤新平とか関東大震災のあとの震災復興の本はよくでているが、戦災復興をわかりやすく説明した本がでたことがうれしい。
また、名古屋とか仙台とか、むしろ政令指定都市レベルで土地区画整理事業が先行していたため、東京のように大規模な中断にならずに、現在の広幅員の街路が整備できたことも丁寧に説明している。
その際の先人の都市計画専門家の努力にも頭がさがる。
その上で、東日本大震災、あるいは首都直下の復興にあたって土地区画整理事業がうまく機能するのかどうか、悩む。
(1)東北の都市などや東京などで、街路 -
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明らかに東日本大震災への便乗本なのだが、私が「言論四天王」と勝手に
名付けて敬愛しているふたりの言論人が取り上げられているので新刊で
購入した。
戦前及び戦中に日本が道を踏み誤ったことに警鐘を鳴らし、大衆に迎合せず、
軍部に屈しなかった4人の言論人と軍部礼賛から戦後の軍部及び天皇批判に
転じた徳富蘇峰を取り上げている。
「小日本主義」を掲げ、愛児を戦争で失いながらも戦後は「靖国神社廃止の
議」を記した石橋湛山。
「関東防空大演習を嗤う」で在郷軍人会から不買運動を起こされ、信濃毎日
新聞を退社に追い込まれ、それでも国家と闘い続けた桐生悠々。
大手新聞社が軍部の御用新聞に変貌するなか、「新