以前一話だけ読んだことがあって、かねてより気になっていたけれど、ようやく一巻を読むことができた。創作、というより生死に関わらないことで血道を上げる話が好きなので、題材はかなり好み。
一話で琴線に触れたのは、なんとなく色んなことをそつなくこなしていたキャラクターが、夢中になれそうなものを見つける、というストーリーの骨組みもさることながら、一見不良っぽい友人たちが、その様を嘲笑するでもなく、あまつさえちょっと共感してくれる、みたいな人間性の描き方だった。改めて一話を読むと、やはりそこは良かったし、今巻収録の他の話でも、友人を筆頭に、基本的に「できた」キャラクターが多いのは、個人的な感性と合致するから好きだ。
一方で、お母さんが(まだ本当にどうなるかは分からないけど)案外するっと芸大への進学を認めてしまうような感じがしたり、他者を尊重するキャラクターが多いがゆえに、トントン拍子で話が進んでいきすぎているような感じは少ししたかもしれない。
以下、幾つか気になったこと、思ったこと。
全然タッチの違う油絵だったり、デッサンでも書き始めの人のテイストを出すのは一体どうやってるんだろう、と思ったら、巻末(及びコマの端)にちゃんと答えがあった。めちゃくちゃコストのかかった漫画だなあ。
絵を描くようになって、景色の見え方が変わってきた、というような話があったと思うけれど、そこにはちょっとハッとさせられた。知識が増えると接する出来事への解像度が高くなる、というのが持論だけれど、景色に対しては見え方(受け取り方)の技法を知ることで、そこに付随してくる情報量が、きっとぐんと増加するんだろうな。
キャラクターに関して言えば、一話ではいかにもサブキャラクター的な(漫画によってはヒロインとすら言えそうな)描かれ方をしていたように思えるユカは、一巻ではあんまり掘り下げがなかったのが少しびっくり。てっきり、一番近い目標点とか、ライバルとか案内役くらいの立ち位置で描かれるのかな、と思っていたから。他のキャラクターについても、森先輩が少しあるくらいで、まだあんまり主軸になっていないようにも思うし、キャラクター主体の物語ではないのかも知れない。或いは、あえて言及を減らすことで、目標以外は見えないくらいに絵画にのめり込んでいく様を、メタ的なやり方で表現していたりするのかな。
細かなところだと、天才と張り合おうとするところで、主人公の気骨が垣間見える、みたいなエピソードは結構好きかも。現時点では、物凄く斬新な話運びではないけれど、上に記した以外にも細かいところ(今普通に煙草吸ったり飲酒する高校生描いて良いんだとか)で、驚きがあった。
次も楽しみ。