三津田信三のレビュー一覧
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シリーズ9作目にきて初心に戻ったような作品。刀城言耶シリーズの特徴を色濃く残しながらも、怪異、ミステリ、その他のバランスがとても良いです。登場人物の数や舞台の広さも絶妙で読み進めやすく、地図もありイメージもしやすいです。
今作も癖のある登場人物もいますが、その人たちと関わる時間は短く、そういった意味でも読み進めるのにストレスがありません。
それほどページ数が少ないわけではないのですが、最初にその土地で過去に起こった三つの怪談話から入り、さらに主人公一行が現地に着くまでのほのぼのパートもあるため、結構サラッと読めてしまいます。
長編ミステリでありがちな、何ページもウンチクが書かれたりもしていないので、初心者の方にもおすすめです。 -
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三津田氏の本では『どこの家にも怖いものはいる』がダントツで一番好きだったのだが、この『黒面の狐』はそれに並んだ印象。
ただ、その要因の多くは単に私が個人的に好きな炭鉱という世界観が全面に出ているからというのが否めないので、炭鉱に興味のない人が本書を手にした場合にどのくらいのめり込めるのかはちょっと分からない。
逆に言えば、まぁイマドキという表現をするのもナンだが、歴史系の本でもないのに炭鉱を舞台にしたエンタメ小説が読めるなんて、これはもうそういう方面が好きな人には滅多にないラッキーチャンスなのではないか。かつての日本の一大産業であった炭鉱という、独特の文化や社会の雰囲気を存分に味わいながら、民俗学やホラーやミステリの要素を堪能できる。西の方言が使われているのも良い。現地の人はどうか知らないが、関東の人間からするとこの方言もまた作品の世界観の構築に貢献している。
冒頭の小話や、主要登場人物の一人である南月氏の語る過去の体験談などが何気に全体の雰囲気作りに効いている。どこかで何かの点と繋がりそうな、やはり繋がらなさそうな、でも何かしら共通するゾクゾク感があって、これらがどう作中の事件と絡んでくるのかワクワクする。
ちょっと強引な解決方法だな、と感じる点もあるが、総合的な評価には影響ない感じ。そのマイナスを引いても余りあるエンタメ性がある。早速次の作品が読みたくなった。 -
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ホラーミステリも高評価な著者ですが本作はホラー短編集。ミステリではないので怪異に一定の解釈がつけられることもなく、結末もはっきりしないことが多いです。かと言って怖いシーンや残虐な描写なども抑えめです。
そこに抜群の読みやすさと雰囲気づくりの上手さが加わり、グイグイ引き込まれ、一気に読んでしまいます。
結果、なんか雰囲気に飲み込まれた記憶はあるけど、結局どうなったかは曖昧になり、少し経つとまた本を手に取ってしまう…。結末どころか面白かったかどうかすら曖昧になり、でもまた本を開いてしまうことをやめられず、開けば一気に読んでしまう…本に呼ばれる…、 -
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タイトル『それはそれはよく燃えた』の1文から始まるショートショート集。
ネットの炎上、恋心、火事など、こんなものまで「燃える」のかと思える作家25人の25作を1冊の本で読めるのはとても贅沢。
でも後味は25作25様で、ほっこり甘いものもあれば苦々しいもの、ざらっと心地悪いものなど本当にさまざま。
クイズノックのファンなので河村拓哉さん目当てでこのシリーズを読み始めたが、矢樹純さん、三津田信三さんなど、このシリーズは毎回新しい作家さんと出会えて、読書の幅が広がって嬉しい
私は総じてホラーが好きなので、今回の『それはそれはよく燃えた』はぞくっとする話が多くて、とても好み。不穏で悲しくて残酷。年末年始たっぷり楽しめた
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長編の方が人気の刀城言耶シリーズの短編集。私自身もそうなので、長篇を先に読んだりしてますが、短編も良かったです。
登場人物や事件がシンプルで読みやすくなっているにもかかわらず、シリーズの良さである二転三転する推理や、程よく残る怪異などの醍醐味はしっかり味あわせてくれます。
それでも刀城言耶シリーズ未読の方には長編からをおすすめしますが、そもそも長編小説自体が苦手な方はこちらからでも良いと思います。もともと順番通りでなくても影響の少ないシリーズではありますが、特に今作は学生時代にかかわった事件を思い返しているような内容でもあり、最初に読んでも大丈夫かと思います。 -
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民俗学+ミステリというジャンル。
どちらも好きな要素なので、名作と言われる本著を選んで読みました。
漫画やドラマではよく見ていましたが、活字で読むのは初めてで、やや苦戦しました。
登場人物紹介、因習の概要説明などで文章が長く重く、読み終わるのに結構時間を要しました。
出題編が長い割に、スリリングに展開していくような見せ方でもありません。
しかし、解決編で一気に捲ってきます。
このカタルシスを味わうために、あのパートも、あのパートも必要だったのだのかと納得。
前置きが長い分、解決編の衝撃はひとしおでした。
楽しませてもらいました。
「カササギ殺人事件」とか好きな人にオススメです。 -
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ホラーミステリである刀城言耶シリーズの中ではミステリ色の強い作品。それがそのまま評価に繋がっているようで、ミステリ好きには好評、ホラー好きには物足りないというレビューが多いです。
確かに分かりやすい、直接的な怪異描写は、シリーズ他作品に比べて少ないです。相変わらず舞台となる土地や建物のおどろおどろしい雰囲気は抜群な分、肩透かしを喰らう印象を受けるののもあるのかも知れません。今作でも人知を超えたものは存在しますし、この辺りは読み手の想像力の差も評価に影響してくると思います。
ミステリに関しては評価通りシンプルに素晴らしいです。詳細はどう書いても少なからずネタバレになるので避けますが、とにかく大胆です(トリック犯人の行動ではなく、伏線とかミスリードなどな部分で)。
興味深いのは、今作は女性読者からかなり厳しいレビューが散見されます。元々女性的には作者の人物描写に薄さを感じてい人が多いらしいのですが、今作ではそれが強く感じられてしまうようです。また今作では警察が全くと言っていいほど機能していないのですが、その理由が非現実的過ぎるという指摘も多いです。男性読者は人物描写よりも舞台や時代背景などの描写に重きを置くことが多いのでツッコミは少ない印象です。女性で刀城言耶シリーズを初めて読もうと思っている方は、別作品を選んだ方が良いかも知れません("山魔の如き嗤うもの"辺りが高評価なようです)。
個人的には警察不介入の理由は十分納得してます(雪山密室とかいくらでも自然な理由付けはあるのにというレビューもありますが、人知を超えたものの力を否定できないものを描いている本シリーズにおいては今作の理由の方がしっくり感じます)。
また人物描写の薄さは、本シリーズの特徴であり、魅力にも繋がっていると思います。確かに人物の魅力だけでご飯何杯も食べられるミステリにも沢山出会ってきましたのでミステリだから人物描写を疎かにしていいとは全く思いません。しかし本シリーズにおいては、絶妙に抑えた人物描写が他の多くの要素の魅力を際立たせているように思えてなりません。例えば主人公である刀城言耶は探偵役でありますが、他の有名ミステリの探偵に比べると普通です。そんな彼にも聞いた事のない怪異の話を耳にすると、普段は温厚なのに我を忘れ、詳細を聞くまで相手を攻め続けてしまうという唯一の癖があります。人物描写に不満な方の意見では魅力に繋がらない特徴と書かれますが、初めは驚いた登場人物が、慣れてくると他の登場人物の前でわざと刀城言耶に怪異の話を聞かせて面白がるなど、他人を介して魅力が示されます。確かに呪いや祟り、辛い風習などが蔓延る土地の重苦しい空気をを自分自身の魅力で吹き飛ばすような探偵役ではありませんが、少しだけ暖かい風を吹き込むことができます。ホラーな世界観を壊すことなく適度な安心感を感じさせてくれるのが心地良いです。