加賀山卓朗のレビュー一覧
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ネタバレ最初にエピローグを読めばよかった。登場人物が多いので、全体像把握してから読むべきであった。それにしても、リーマンショックと言えば、日本でも仕事面・生活面でも身の回りで影響があったように記憶しているが、アメリカ本土ではリーマンだけでなく大手金融機関が軒並み大変になっていたことは恥ずかしながら知らなかった。エピローグに簡潔にまとめられている。
「わからない、まったく」ポールソンは疲れた声で言った。頭のなかはまだリーマン・ブラザーズとメリルリンチの運命のことでいっぱいだというのに、AIGのための解決策も考えなければならないのか?
ミラーは一刻も早く会社を売却する方法を探っていた。この業界は取引先の信頼や信用で成り立っている。リーマンは単独で運営されている時間が長引くほど価値を失っていく。
マックは言った。「わが社はクリーンだ。利益も出ている。過去八日間でさえ大幅な利益をあげている。しかし、そんなことはなんの慰めにもならない。今日の市場では、実際の業績よりも財務に関するデマ、噂、中傷のほうがはるかに影響力を持つ」
ペック判事は、一世紀以上の歴史を持つ企業に残されたものを救うことの重大さに心を震わせながら、バークレイズとの取引を承認した。
「ミスター・ミラーに圧力をかけられたから、承認したのではありません」判事は説明した。
「これが考えられるなかで最適な取引だとわかっているから、承認するのでもありません。私がこの取引を認めなければならないのは、これが唯一残されている取引だからです」
以下、エピローグより
たった数カ月のあいだに、ウォール街とグローバル金融システムは、すっかり様変わりした。かつての五大投資銀行は、それぞれ破産したり、身売りしたり、銀行持株会社に変わったりした。住宅ローン二大企業と、世界最大の保険会社が政府の管理下に置かれた。そして10月初めには、大統領のペンが動き、財務省―ひいてはアメリカの納税者が―かつて国の誇りだった金融機関の一部を所有することになった。ほんの数カ月前には、想定することすらむずかしかった救済策だった。
ゴールドマンの成功に関する真の疑問は―ほかの会社にも言えるが―次のようなことだ。政府と納税者が、少なくとも暗黙のうちに彼らのビジネスを保証している場合、莫大な利益を生み出すリスク負担に規制当局はどう対応すべきか。実際、2009年下半期におけるゴールドマンの想定最大損失額は、どの日をとっても史上最高の2億4500万ドルに達していた(前年の数字は1億8400万ドル)。ゴールドマンのビジネスはこれまでのところ好調だが、これがまちがった方向へ進んでいたら、どうなっていたのか。好むと好まざるとにかかわらず、ゴールドマンは、国内最大級のほかの金融機関と同様、大きすぎてつぶせないまま残っている。
たしかに、もし政府が何もせず、破産申請をする金融の巨人たちのパレードを眺めていたとしたら、実際よりはるかにひどい市場の大変動が起きたことだろう。一方で、連邦政府の官僚―ポールソンやバーナンキやガイトナーたち―の一貫性のない決断が、市場の混乱になったことは否めない。ベア・スターンズにはセイフティネットを提供し、ファニーとフレディも救い、リーマンは破産させておいて、結局あとでAIGを救済した。定型はあるのだろうか。規則は何なのか。何かあるようには思えず、投資家が混乱したとき―この会社は救済されるのか、そのまま破綻させられるのか、それとも国有化されるのか―当然ながらパニックが生じた。
救済措置の後、まださまざまな議論が噴出していたころに、ジェイミー・ダイモンがヘンリー・ポールソンに短い手紙を送った。セオドア・ルーズベルト大統領が、1910年4月にソルボンヌ大学でおこなった”共和国における市民権について”という演説を引用したもので、次のような内容だった。
重要なのは批評家ではない―力ある者がどうつまずいたか、偉業をなしとげた人間がどこでもっとうまくやれたかを指摘する人間ではない。名声は、現に競技場に立つ男のものだ。果敢に闘い、判断を誤って、何度も何度もあと一歩という結末に終わり―なぜなら、まちがいも欠点もない努力など存在しないから―顔はほこりと汗と血にまみれている。しかしその男は、真の熱意、真の献身を知っており、価値ある理念のために全力を尽くす。結果、うまくいえば優れた業績という勝利を得る。しかし、万一失敗に終わっても、それは少なくとも雄々しく挑戦したうえでの失敗である。だから彼の立場が、薄情で臆病な、勝利も敗北も知らない者たちと同じになることはありえない。 -
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カーの有名なミステリー。密室ミステリーの最高峰と名高い「三つの棺」をはじめて読む。
ロンドンの街に雪の降り積もるある夜、グリモー教授の家をコートと帽子、それに仮面をつけた長身の男がおとずれる。ふたりの入った書斎から銃声が響き、ドアを破って室内に入ると、胸を撃たれて瀕死のグリモー教授が倒れていた。
しかし、長身の男は忽然と姿を消していた。密室であったのに。
この作品はギデオン・フェル博士シリーズのひとつらしい。
このシリーズを読んだことがないため、フェル博士がどういう人物なのかがよくわからない。
フェル博士がよく咳をしたりする描写があるが、喘息や、何か肺に病気を抱えているのかどうかもわからない。
やはりシリーズ作品は、はじめから読んでいかないと主人公に興味も持てないし魅力も余り伝わらない。それが残念なので、いつかシリーズ一作目を読んでみたい。
推理小説なら当然犯人を当てて、密室の謎も解きたいところだ。
犯人に関しては、惜しいところまでいった。
しかし、密室トリックについては全く歯が立たなかった。
これぞトリックといった物凄いトリックで、こんな密室の謎なんか解明出来るわけがない。
こんなややこしい面倒なことは、実際にどうかと論じること自体が野暮であって、小説なのだからこれでいい。
作中で繰り広げられる“密室講義”も有名らしく、その部分も面白く読める。
ラストのフェル博士のセリフがカッコいい。カッコつけすぎ。「ルパン三世」の石川五右衛門が、また無駄なものを斬ってしまっただか何だかみたいなくらいにカッコいい。
ちょっと笑ってしまった。
訳者あとがきにあったように、『事件全体のねじ曲がり方』に脱帽した。。 -
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フェル博士シリーズ及び、カーの作品を読むのは2冊目になります。
単純に、この小説が好みか、好みでないかで言えば、
そんなに好きでもない部類に入るのですが、そんなことより
このトリックを思いついて、そして書き上げてしまったという事に、
ただただ賞賛を送りたくなるばかりです。
有名な密室講義の章は、密室トリックについて大変わかりやすく纏められており、
今現在でも充分に通用する素晴らしい解説でした。
なんとなくわかったつもりでいた、密室トリックについて
ちゃんとわかった、と言えるくらいに勉強になりました。
突然のメタ発言には驚きましたが、ハドリー警視の突っ込みといい、この本が書かれた20世紀半ばにこういったコミカルなやりとりの表現を用いたカー先生の筆力の高さに脱帽です。
流石は契約以上に本を出版してしまうほど多作な作家だと改めて感心しました。 -
Posted by ブクログ
イギリス情報部で、極秘事項がソ連に漏洩した。二重スパイは一体誰か? 上層部が特定を進める中、主人公カッスルは・・・。
グレアム・グリーンの『二十一の短編』に収録されていた「廃物破壊者たち」は、通学中の電車内で読んで、「駅を乗り過ごしてもいい!」と初めて思った短編だった(結局ちゃんと降りてしまったのだけれど・・・)。
しかし、この「廃物~」以降の短編は読んでもよく頭に入らず、一冊読み終えた感想は「一番最初のだけめちゃくちゃ凄かったのにな」だった。
というわけで、グリーンの本が自分に合うのか合わないのか、いまいちよくわからないまま、この本を手に取ったところ、これもちょっと違ったらしい。
確かに、抑制の効いた静かな語り口に含まれる哀しみの感情は、押し付けがましいものがかけらもなくて素晴らしい。しかし、登場人物たちの関係や状況などが、はっきりと明言されず、あわいを揺らいで濃ゆくなったり薄くなったりするので、私には少々掴みづらく、読みにくかった(それがこの小説のよさでもあるのだろうけど・・・)。
もう一度「廃物破壊者たち」を読んだときのような読書がしたいとは思うのだが、これからまだグリーンを読んでみるべきか否か、この小説が合わないようだったので、またわからなくなってしまった。うーん。