米川正夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
最近死についてよく考える。そこで遥か昔に読んだこの本を再び手に取ってみた。ある裁判官が不治の病に罹り、死に至るまでの過程が極めて鋭く描かれている。
文庫でほぼ100ページの短い作品なのだが、さすがはトルストイ、様々なことを深く考える機会を与えてくれた。以下、特に印象に残ったテーマを列挙し、考察してみよう。
すべての人は人間が必ず死ぬことを理解しているはずだ。だが『自分も必ず死ぬ』ことまでしっかり認識している人が、果たしてどれくらいいるだろうか。
トルストイの提示はこうだ。
それぞれの人は、人間が死ぬことを理解していながら、その『人間』の範囲から自分をこっそり外している。それゆえ自分だけは死ぬ -
Posted by ブクログ
苦しい。ひたすらに苦しい。不治の病に身体と精神が蝕まれていく苦痛。死へと確実に向かっていく恐怖。そしてそれを誰も理解してくれないという孤独。これらが刻銘に描かれているだけの物語。トルストイは、なぜこんなに苦しい物語を書いたのか。
というより、なぜこれを私は読んだのか。本はほかにいくらでもある。どうせ読むなら、心が躍るような、知らなかったことが知れるような、仕事の役に立つような、そんな本を読んだほうが、客観的に、有意義ではないか。それにもかかわらず、この本を選び、時間を掛けて、私は読んだのだ。このことがとても大事なことのように思える。
自分のものでない苦しみを読むのはなぜか。この問いはペンディン -
Posted by ブクログ
三島由紀夫、小林秀雄、村上春樹、平野啓一郎、…
ドストエフスキーを読んで人生が変わった、影響を受けた、と随筆などで書いている作家や著名人を今に至るまで、本当に多く見かけてきた。
時代に関わらず普遍的なメッセージがあるんだろうなぁ、とは思いつつ、これまで何度もトライしては挫折している。
まず、本筋から外れるエピソードが多い。今時のストーリーを追うものではないと分かってはいるが、それにしても話が進まない。
また、登場人物の名前が分かりにくく、同じ人が複数の呼び名で登場する。
齋藤孝氏は、登場人物の個性的なところにも注目すると良い、などと著作の中で触れていたので、今回はそういうところを含めてじっくり -
Posted by ブクログ
金持ちで地位の高いイワンイリイッチが死ぬまでの過程を描いた話。
序盤は退屈だったけど、後半からはイワンイリイッチの心理描写にのめり込めて面白かった。
別に心の中では悪い事しようとしてる訳じゃないのに、周りの家族から蔑まれるのが辛いね。最後の力が出なくて「許してくれ」って言えないシーンが悲しい。
最後は死の恐怖を克服し、幸せな気分で消える事が出来て良かった。
あとイライラとかだんだんとかの単語を、「むらむら」って表現するのがちょっと気になった。
主人公は今までの人生振り返り、歳をとるにつれ、加速度的に辛くなる事に気が付いた。そこそこ楽しいと感じていたこれまでの人生だけど、振り返ってみると、無意 -
Posted by ブクログ
長いし、人間関係が複雑だし、随分前に端役だと思っていた人物が突然現れるし、キリスト教の倫理観と歴史が理解しづらいし、唐突に愛称で呼ぶし…というなかなかハードな本だった。人物一覧表を作りながら読んだ。
ただ、名作と呼ばれるだけあって人間の心理描写力が非常に優れていると感じた。
カチェリーナの、ミーチャやグルージェンカへの愛憎渦巻く複雑な心境。コーリャ少年の背伸びと自尊心。ラキーチンの世の中を小馬鹿にしたような皮肉。スメルヂャコフの嫉妬など…枚挙にいとまがない。
また、(当時の)キリスト教の考え方と倫理観について、微量ながら理解することができたと思う。
本書で取り上げられている問題はキリスト教だけ -
Posted by ブクログ
岩波文庫赤
トルストイ 「 イワンイリッチの死 」
死をテーマとした良書。哲学や宗教を用いずに 死の境地を表現。
一人の男性の人生を通して、生の自己満足→死の恐怖→死の喜びを 追体験できる凄い本。死顔の表現力に驚く
「アンナカレーニナ」は よくわからなかったが、これは面白い
「死とはなんだ〜恐怖はまるでなかった。なぜなら 死がなかったから〜死の代わりに光があった〜何という喜びだろう」
死顔
*在世の時より美しく、もっともらしかった
*その顔は 必要なことはしてしまった、しかも立派にしてのけた とでもいうような表情
*この表情には 生きている者への非難、注意が感じられた