米川正夫のレビュー一覧

  • イワン・イリッチの死

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    最近死についてよく考える。そこで遥か昔に読んだこの本を再び手に取ってみた。ある裁判官が不治の病に罹り、死に至るまでの過程が極めて鋭く描かれている。
    文庫でほぼ100ページの短い作品なのだが、さすがはトルストイ、様々なことを深く考える機会を与えてくれた。以下、特に印象に残ったテーマを列挙し、考察してみよう。

    すべての人は人間が必ず死ぬことを理解しているはずだ。だが『自分も必ず死ぬ』ことまでしっかり認識している人が、果たしてどれくらいいるだろうか。
    トルストイの提示はこうだ。
    それぞれの人は、人間が死ぬことを理解していながら、その『人間』の範囲から自分をこっそり外している。それゆえ自分だけは死ぬ

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    2025年07月03日
  • イワン・イリッチの死

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    苦しい。ひたすらに苦しい。不治の病に身体と精神が蝕まれていく苦痛。死へと確実に向かっていく恐怖。そしてそれを誰も理解してくれないという孤独。これらが刻銘に描かれているだけの物語。トルストイは、なぜこんなに苦しい物語を書いたのか。
    というより、なぜこれを私は読んだのか。本はほかにいくらでもある。どうせ読むなら、心が躍るような、知らなかったことが知れるような、仕事の役に立つような、そんな本を読んだほうが、客観的に、有意義ではないか。それにもかかわらず、この本を選び、時間を掛けて、私は読んだのだ。このことがとても大事なことのように思える。
    自分のものでない苦しみを読むのはなぜか。この問いはペンディン

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    2025年02月09日
  • 罪と罰 上

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    三島由紀夫、小林秀雄、村上春樹、平野啓一郎、…
    ドストエフスキーを読んで人生が変わった、影響を受けた、と随筆などで書いている作家や著名人を今に至るまで、本当に多く見かけてきた。
    時代に関わらず普遍的なメッセージがあるんだろうなぁ、とは思いつつ、これまで何度もトライしては挫折している。
    まず、本筋から外れるエピソードが多い。今時のストーリーを追うものではないと分かってはいるが、それにしても話が進まない。
    また、登場人物の名前が分かりにくく、同じ人が複数の呼び名で登場する。
    齋藤孝氏は、登場人物の個性的なところにも注目すると良い、などと著作の中で触れていたので、今回はそういうところを含めてじっくり

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    2024年10月03日
  • イワン・イリッチの死

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    金持ちで地位の高いイワンイリイッチが死ぬまでの過程を描いた話。
    序盤は退屈だったけど、後半からはイワンイリイッチの心理描写にのめり込めて面白かった。
    別に心の中では悪い事しようとしてる訳じゃないのに、周りの家族から蔑まれるのが辛いね。最後の力が出なくて「許してくれ」って言えないシーンが悲しい。
    最後は死の恐怖を克服し、幸せな気分で消える事が出来て良かった。
    あとイライラとかだんだんとかの単語を、「むらむら」って表現するのがちょっと気になった。

    主人公は今までの人生振り返り、歳をとるにつれ、加速度的に辛くなる事に気が付いた。そこそこ楽しいと感じていたこれまでの人生だけど、振り返ってみると、無意

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    2023年05月07日
  • イワン・イリッチの死

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    病気のうちの孤独をおぞましいほど描いている。イワン・イリッチの心うちがよく分かる9章が特に心に残った。
    奥さんをあまり大切にしていない以外は順調だった分、なぜ自分が精神的に孤独に死なないといけないのかに煩悶する彼の姿は、今にも私自身もそうなりそうなようで共感できる。そのなかで人間誰しも死ぬということを隠さないゲラーシムは救いだったろう。

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    2022年12月19日
  • カラマーゾフの兄弟 2

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    ゾシマ長老の長逝に関する騒動は、現代でもSNSにおける炎上がそれっぽいよなと思った。
    アンチが何事かで勝ち誇って騒ぎ出すと、疑念を抱いていたファンとよく知らない部外者がその騒ぎに乗る、弁護の声は届かない…。こういうのって普遍的なのかもしれないな。

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    2022年07月04日
  • カラマーゾフの兄弟 4

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    長いし、人間関係が複雑だし、随分前に端役だと思っていた人物が突然現れるし、キリスト教の倫理観と歴史が理解しづらいし、唐突に愛称で呼ぶし…というなかなかハードな本だった。人物一覧表を作りながら読んだ。
    ただ、名作と呼ばれるだけあって人間の心理描写力が非常に優れていると感じた。
    カチェリーナの、ミーチャやグルージェンカへの愛憎渦巻く複雑な心境。コーリャ少年の背伸びと自尊心。ラキーチンの世の中を小馬鹿にしたような皮肉。スメルヂャコフの嫉妬など…枚挙にいとまがない。
    また、(当時の)キリスト教の考え方と倫理観について、微量ながら理解することができたと思う。
    本書で取り上げられている問題はキリスト教だけ

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    2022年07月04日
  • カラマーゾフの兄弟 2

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    大審問説話に人間の神に対する信仰の強さと、信じきれない弱さ、そして信じた上での細やかな見返りを求める読者のこころ。疲れるが、人間はどう生きれば良いか?悪魔は優しい言葉を囁きながら弱い人間に近づいて来る。悪魔の3つの問を一つ一つ解き明かして行く。
    この掘り下げにドストエフスキーの凄さを感じる。でも、読んでいて楽に読める部分がほとんどないのと、難しいのとで疲れる。ロシア人の心の違いを感じる。

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    2022年07月02日
  • カラマーゾフの兄弟 1

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    米川訳は明治時代の小説を読んでいるみたいで面白い。ところどころに旧かなづかいが残っているので直してほしいなぁ…岩波さん。。

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    2022年04月21日
  • カラマーゾフの兄弟 2

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    長老様の一生が明らかになる巻です。私自身もアリョーシャに大きな影響を与えた彼がとても気になっていました。しかし、読んでいる途中で「長老」の話か物語での「現実」か分かりにくくなっているところがあるのでご注意下さい。

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    2021年08月22日
  • 罪と罰 下

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    2020.12.18
    想像していたよりずっとおもしろかったです。翻訳本特有の言い回しにはじめの100頁で慣れれば、あとは集中して読めます。伏線回収がすごい。

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    2020年12月19日
  • イワン・イリッチの死

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    ネタバレ

    思った以上に現代的、というか、通ずるところがやけにリアルに感じた。

    死ぬ前まで、いや、死んでまでも、分からないこと、気づかない小尾、たくさんあるんあろなー。いろんな本読んで、少しでもいろんな大事なことに気付きたいと思う。すぐ忘れるけど。

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    2020年07月05日
  • イワン・イリッチの死

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    ネタバレ

    難しそうだなあと思いつつ、一気に読みきってしまった。
    読んでいて胸の詰まるような、苦しい気持ちになりながら。
    死ぬ間際の、今までの生活、価値観全てを否定する気づきに虚しさを感じた。
    が、現代に生きるわたしたちはどうだろう。
    ずっと昔に書かれた本だけれど、今の自分の生活、間違っていないだろうか。
    間違いって?
    SNSに翻弄されながら、寂しい夜を過ごしたり、
    いったい何が本当の幸せなのか。
    やはり本当の幸せは、生から解放される瞬間にしかないのでしょうか。

    疑心にまみれる人生は苦しい。

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    2019年05月19日
  • イワン・イリッチの死

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    岩波文庫赤

    トルストイ 「 イワンイリッチの死 」

    死をテーマとした良書。哲学や宗教を用いずに 死の境地を表現。
    一人の男性の人生を通して、生の自己満足→死の恐怖→死の喜びを 追体験できる凄い本。死顔の表現力に驚く


    「アンナカレーニナ」は よくわからなかったが、これは面白い

    「死とはなんだ〜恐怖はまるでなかった。なぜなら 死がなかったから〜死の代わりに光があった〜何という喜びだろう」


    死顔
    *在世の時より美しく、もっともらしかった
    *その顔は 必要なことはしてしまった、しかも立派にしてのけた とでもいうような表情
    *この表情には 生きている者への非難、注意が感じられた




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    2019年03月08日
  • イワン・イリッチの死

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    死に対して、何の小細工も弄せず、愚直にまっすぐ向き合った作品だと思う。いろんな形で、いろんな方向から死にアプローチすることだってできるはずが、真っ正面から対象を見据え、無駄なものを一切排除して描き切ったところが、トルストイらしい。イワンの死に対する価値観の変容が、身体の容態とリンクしている様が、本当に真に迫っている。理解しきることはないが、それでも分かる分かるとうなづいてしまうようなリアリティがある。聖人君子でもなければ、イワンと同じ心境に陥ることはあるだろう。どうでもいいけど、トルストイと言えばイワンだな…。

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    2018年01月04日
  • イワン・イリッチの死

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    諸行無常。と一言で言ってしまうことを小説にした感じ。一見、順調に見える人生を歩んできた表題人物の死と生涯。苦しみはどこから来るのか、救いはあるのか幸せはどこに存在するのかそんなことを考えさせられる作品だった。

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    2017年12月18日
  • 罪と罰 上

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    難解な小説の代名詞として語られることが多い本作だが、思ったよりもエンターテイメント成分が多く読みやすかった。後半の畳み掛けるような展開は圧巻。

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    2017年06月04日
  • 罪と罰 下

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    とても面白く読めた。ラストは感動した。現代日本にはこの物語の主人公のような利己主義の塊みたいな人が多いと感じる。作者の”信仰”という結論に納得行かない人は多いだろうが、現代でも一読の価値があると思う。

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    2016年12月06日
  • 罪と罰 上

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    上巻はあまり思想的・哲学的なテーマは出てこない。終盤でようやく主だった登場人物が出揃って「さあ、これから」というところで切れる感じだ。下巻が非常に楽しみである。

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    2016年10月25日
  • 罪と罰 下

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    最後50ページくらいで怒涛の展開。逆に言うと、それまでがえらく長かった。必要だったんだろうとは思うけど。
    でもその最後の50ページがすごく面白かったし、これは名作なんだなあと納得。読み返したらまた面白そう。でもしばらくはいいかな。疲れるね。

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    2013年06月26日