宇野常寛のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
非常に心地よく読み進められた。宇野常寛氏の著書は初めてだったが、私の課題感=研究テーマに近いことを考えていた。しかし、アーレントの「人間の三条件」をアップデートし「制作」に至るとは。思っても見なかった。いや、しかし自分の中では実は分かっていたのか彼の最後の決断は心にスンと落ちてきた。
本書は、プラットフォーム資本主義に対抗するための共同体主義に対して警鐘を鳴らし、共同体になり得ない別のオルタナティブを求める。「庭」は評価や承認を目的とせず、事物と人間との自律的なコミュニケーションが行われる場でないといけない、、、と順に条件を発見していくが、最後に、「戦争」が「庭」的であることを考察し、そして、 -
Posted by ブクログ
読めているか分からないけれど、考えることのなかった視点で貴重な読書体験でした。
現在はプラットフォーム上で展開される情報環境。
発信による相互評価の連鎖と世論形成への懸念。
著書は「庭」というメタファーでの在り方で「孤独」を提案、そして「制作」することの必要性を説いています。
「共同体」の中にいることで起こる不都合なことを知ると、「孤独」を強調される意味が理解できます。
ここで言う孤独とは、心落ち着いて自分と向き合う、というふうに私は解釈しました。
多くの文献を紹介しながら意見を述べられてる中で、
國分功一郎さん著の『暇と退屈の倫理学』がありました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書は、画一的で高速な社会構造(プラットフォーム)から、多様で個別性を尊重する柔軟な社会構造(庭)への転換を提唱する。社会や環境との関係性を再定義し、「庭」を媒介として、持続可能で創造的なコミュニティ形成を目指す。
「庭」とは単なる空間を超えて、人間と環境、人間と非人間の新たな関係を築く概念であり、消費から制作へ、強い自立から弱い自立へ、プラットフォームから多元的共生へと社会全体を変革する思想的枠組みである。
著者は、これを通じて人間の条件そのものをアップデートし、21世紀の持続可能で豊かな社会を実現するための哲学を提示している。
本書の限界:
「庭」の概念は抽象的であり、具体的な社会 -
Posted by ブクログ
プラットフォーム相互承認の快楽に溺れててええんかい、という宇野さんがよく言っている問題設定から、庭のメタファーを用いてどういった場、機会が社会に必要か考える。と言いつつ、場があるだけではダメで、人間が何かを作ることで世界と関わる「制作」的な営みによって、新しい視点を得ていくことが前提として大事なのだ、ということを述べる。
いくつか事例は紹介されるが、どれも論の途中での参照という感じなので、なかなか具体的、実践的なイメージまでいきつかない部分もある。
超絶に雑に解釈してみれば、宇野さんがサブカル批評からキャリアをスタートしたように、自分の好きなものに没頭して価値観が変わる(消費者からその先にいく -
Posted by ブクログ
暫く積ん読になっていた。NHKの放送後に纏められたテキストらしい。
子供の頃、サイボーグ009は映画やテレビアニメで観ていた。最初のモノクロ版。サラサラっと描いたような描線が好きだった。
小学生の時に読んだ「漫画の描き方」の竜神沼の解説で、暗い森の中のカブトムシの背光で少年の孤独感、白い百合で不思議な少女の気高さを現わしているとあり、マンガの表現手法にビックリしたことを覚えている。
さるとびエっちゃんの編で、主人公の内面が見えない、善悪を等価に俯瞰しているの記述に納得。サイボーグ009の編でも善悪を混然一体としているとの記述もある。
サイボーグ009が神との戦いの前で長い休載となり、その -
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ネタバレSNS上で潮目を読んでそれっぽいことをつぶやくことで安易に承認欲求が満たせることで、承認欲求中毒となってプラットフォーム上で踊らされてることへの警鐘。他者世界との関係性の中で無意識下にもある自己承認欲求を拗らせずにどうあるべきか。庭を例えに場と個人という観点で深掘りされてる。随所に著者のアナキズムというか偏屈さを感じるけどだからこそ生まれてくる問い、見方が新鮮。
地域のつながりがーコミュニティがーと言ってるうちは、共同体に参加しない自由がないというか、排除的な要素が含まれてしまってるなとハッとさせられた。
デモでも選挙でもなく、日々の自分の選択が社会を作るっていう実感を持つ上で、デジタルプ -
Posted by ブクログ
知見、教養豊富な知識人が深い思索と広範な知識を用いてプラットフォーム資本主義社会の構造や見方を言語化してくれたものを本として享受させてもらえるのはありがたいなーと思いながら読みました。
頭フル回転で読まないと全然入ってこないので毎晩新生児の寝かしつけしながら1章ずつ読むのが限界だった。
前半10章くらいまでは面白く読めて理解も捗ったのですが11章の文学批評みたいなところで一気に振り落とされました笑
これはもうしょうがないのですが、問題提起や進むべき方向性の抽象概念まではなんとなく見えるんだけど、その先の具体的な解やアイディアが無いところは自分のような一般的ビジネスピーポー視点では物足りないなと -
Posted by ブクログ
__しかし、もはや読者/観客の多くは、作品そのもの(虚構)ではなく、作品についてのコミニュケーション(現実)に関心の重心がある。作品の表現よりも、作家の人生に関心があるし、他のみんなが褒めている/貶しているものに、自分がのるかそるか、どちらにすればポイントが稼げるかという現実に興味がある。
__私たちは、虚構だからこそ描き出せるものに触れることで、はじめて現実に対して適切に対抗(対応)し得る。その確信がなければ、虚構とはただのサプリメントに過ぎない。しかしそうではない、と信じる力が虚構の側に立ち、ものを書くことを可能にしているのだ。
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虚構をサプリメントで終わらせないために、虚