宇野常寛のレビュー一覧

  • 庭の話

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    今年1,2を争う濃密な読書体験ができた一冊だった。一言でも気軽な感想をうまく書けないのが悔しいが、自分の中で咀嚼して再読してから追記したいと思う。

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    2025年12月03日
  • ラーメンと瞑想

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    宇野さんとTさんとの対話は何か点と点を繋んでいくたしかなやりとり。一見難しそうな話をしているようで、まじめなテイストからふいに面白くなったりもする。新しい扉の先で始まるのは何か。個人的にはとん太と松石のエピソードが良かった。特に立ち食い蕎麦こそ自分と向き合う貴重な時間に違いないと思う。とん太はなんだか心温まる。

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    2025年11月30日
  • 庭の話

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    現代社会では、SNS上の発信と反応の連鎖が世論形成に大きく影響している。だれもが受け手であり発信者でもあるため、他者からの反応を求める気持ちが自然に生まれる。問題は、発信の目的が内容そのものではなく、反応を得ることへとずれていく点にある。

    著者は、この相互承認の流れから距離を置くための考え方として「庭」を提示する。「庭」とは、人と人の関係ではなく、人と事物との関わりに没頭できる場とされる。事物同士が関係し合う場に人が関わることで、人と事物のやり取りが生まれ、結果として偶然その場にいる人同士の関係が生まれることもある、という構造を指している。

    庭の条件のひとつに「攻略できないこと」が挙げられ

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    2025年11月17日
  • ラーメンと瞑想

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    神の世界と動物の世界との往復。朝活の中でおこなう"瞑想"と、朝活後の"食事"(ラーメン等)の記録。思索と無我。このフォーマットを発見した時点で勝ち。面白いエッセイ集であった。

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    2025年11月16日
  • 砂漠と異人たち

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    相互評価ゲームから自立するためにはどうしたらよいか提案かつ啓蒙。ロレンスの失敗、村上春樹の暗礁ととてもスリリングな展開だった。村上春樹論は唸った。僕も遅く走りたくなったし何か制作したくなった。

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    2025年09月13日
  • 庭の話

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    情報社会論に分類される本らしいですが、色々な読み方が出来てめちゃくちゃ面白かったです。 
    この本における著者、宇野常寛の認識の妥当性とか前提を批判することは簡単ですが、そういうことではなく、自分自身の在り方を考えるエッセイ(試論)として示唆的で、対話的に読めるという意味でも素晴らしい読書体験でした。
    また、(比喩的な意味での)庭の話の本なのに、終盤になってその限界を自ら論じ始めるところも含めて(わざわざ損をしに行くスタイル笑)、すごく正直な著作です。 
    * * *
    ところで、本書中にはほとんど登場しませんが、社会学者?、宮台真司のかつての著作と比較して読めたのも面白かったです。
    例えば、宮台は

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    2025年09月06日
  • 庭の話

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    ネタバレ

    庭を喩えに、

    社会と個人のかかわり方について思索されていて、新しい考え方が学べてとてもよかったです。

    共同体に属さなくても社会とかかわれる、そして自分自身の生きがいを担保できる、そう考えさせられる本でした。

    コモンズやコミュニタリアン的な議論は、共感するところもありつつ、でもなんだか理想主義的になってしまいがちなところがあって、やっぱり何らかの形で内と外の境界線を作っていくので、固定的なところや排外性を抑えて実際にうまく機能するのは現実的ではないところがあったりと、

    でも庭の話では、そんな人間関係自体をいったん相対化して、個人が事物と対峙する関係性を採り入れていた。人間関係から快楽や生

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    2025年08月30日
  • ラーメンと瞑想

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    ・ラーメンと瞑想という「縛りプレイ」

    この本は「縛りプレイ」なのではないか。

    読み終わって数日経ち、この本のエッセイともグルメレポートとも中年男性の2人の対話篇ともネット文化批評とも庭思想のマニフェストともつかない内容、それでも一貫したまとまりを感じる新しさはなんなんだ...!!!と悶々と考えあぐねて思い至ったのがこの「縛りプレイ」だ。

    本書で宇野さんが縛りプレイに関してこんな洞察を披露していた

    >>>

    『縛りプレイ』とはゲームそのものを『つくる』行為に等しいということです。僕たちはゲームを『縛る』ことで、同じゲームを用いた別のゲームを自ら作り出します。〜そうするこ

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    2025年08月29日
  • ラーメンと瞑想

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    高田馬場周辺の美味しいお店の紹介と、哲学や文芸や社会問題に対する二人の人物の対話の記録。ラーメン=獣の世界、瞑想=神の世界。両者を往復することで「人間を超える存在に肉薄する」試み。

    中年になって太ったのをきっかけに食事制限とランニングをするようになった著者。ちょうどこの本を読んでいるとき受け取った健康診断の結果がよくなかったのもあり、自分も改善のための節制を始めた。本書は、そうしようと決意するきっかけと指標になった。俺はラーメンも控えるが…。

    著者の対話相手T氏のキャラクターがいい。浮世離れした存在感。印象的な発言の数々。
    「恐れと悲しみの中を生きる者」
    「個体として強くなりつつある」

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    2025年08月25日
  • ラーメンと瞑想

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     ラーメンと瞑想、ラーメンとは獣の世界であり、瞑想とは神の世界である。二人の中年男性が様々な事柄を議論しながら2つの世界への接近を試みる。書いてて何がなんやらという感じだが、実情この本は、「Tさん」という強烈な人物の行動や思想を知らしめるための手段になっている。こんな人物が本当にいるのだろうか?と疑いたくなるようなエピソードの数。私は2000年代にネットミーム化された「寺生まれのTさん」を自ずと思い出していた。
     しかしこのTさんとの出会いと対話が、著者である宇野氏に「庭の話」を書かせる結果となったのだろう。日々中年男性は変化する。中年男性を救うのは物語ではなく、創作である。

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    2025年08月22日
  • 庭の話

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    書き方によって、一部の人を見下しているように読めるところもあり、必ずしも耳触りの良い中身ではない。しかし、だからこそ?あまり人が踏み込まない矛盾にも突っ込んでいけるのかもしれない。

    右派も左派も文脈は違えど共同体の回帰を目指す。孤立を防ぐために、普段からのつながりな共感を持った「暖かい」互助の世界。しかし、そもそも孤立化する人がその共同体の中で周辺でなく真ん中に自然と入れるものか?そもそも共同体は強いものがより搾取しやすい状況だと。村八分者が何も売ってもらえない贈与経済化より、村八分者でも100円を持っていけばパンが買える方が余程自由で平等な社会なのではないか?

    という指摘は一定の検討余地

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    2025年08月06日
  • 庭の話

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    2025年度印象の残るNo.1候補。最後にあとがきがないのはこれを読んでそしてどうするかと問いかけられているかのよう。今まで読んできた民藝やパターンランゲージに関することや、同じ著者の『遅いインターネット』のほか、『暇と退屈の倫理学』や『中動態の世界』を通じて「庭」とは何でなぜ今必要なのか、孤独について、そしてハンナ・アーレントの『人間の条件』に回帰してきたこの流れを読み終わったもののあらためて追って整理したい。特に『人間の条件』はまだ読み切れていないので読まねばと思う。

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    2025年06月26日
  • 母性のディストピア

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    本書(母性のディストピア)で主題となる虚構の時代、これは言ってみれば現在を変えられないのだから虚構で満足しようじゃないかというメンタリティが席巻した時代であり、その様相は宮台の「自己の時代」に重なる部分がある。戦後日本社会は、「虚構」のイメージを代表する「アニメーション」が代名詞的存在になったことが示しているように「虚構の時代」に極めて親和的であったわけだが、この土台には敗戦とその後の日米安保体制が規定した、俺たちは決して「父」になれない、つまり真に「成熟」した国家にはなり得ないという現実が引き起こす絶望と鬱屈があったと言える。

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    2025年05月13日
  • 庭の話

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    いわゆる社会の価値交換活動から少し離れて没入できる場をここ数年特に趣味方面のクリエイティブに求めてきたのは、本書でいうところの「庭」での営みだったのだなと腹落ちして、またとないちょうど良いタイミングで出会えた一冊でした。

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    2025年04月01日
  • 庭の話

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    久しぶりで評論を読んだ。こういうのしばらくさぼっていたというか遠ざかっていた。なんでだろう。自分が参加するが自分ではどうにもならない自然としての庭が必要、というのはすごく説得力がある。戦争論も。ここで災害論じゃなくて戦争論なのはウクライナかなあ。AnywhereなひととSomewhereなひと、地元ヤンキーの人的資本論、される側としての自己の話とかあたりはちょっと違和感あるがまだ言語化できない。庭がプラットフォームになれない/しないのあたりも。共同体怖いし共同体回帰はやめてくれにはとても共感する。生物多様性の豊富さのために人手を入れる話も。時間とってクレマン読んでみよう。制作するだけの時間の取

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    2025年03月27日
  • 庭の話

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    國分功一郎がかつて『暇と退屈の倫理学』や『中動態の世界』で提示した生き方(世界から別の世界へ飛び移ることで自分が変わること。それに備えて訓練を積む楽しさ)は、情報社会によってすっかり過去に、あるいは既に達成されてしまっていた。

    「庭」という概念を持ち出すことにより、共同体を強化するために承認を交換することからも、社会からの評価に依存することからも解放され、人間らしく生きられる社会が提示される。

    ぼくはまた、ほんとうの意味で「生きる」とは何なのかを、考え直さないわけにはいかなかった。

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    2025年02月16日
  • 庭の話

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    ここで登場する「庭」とはメタファーであり、半分閉じて半分開放された空間を指す。そこでは独自の生態系がそこに棲む生き物たちの共進化によって成り立っており、「庭」の主たる人間の思惑や思想を超越した偶発性が発生することで人生をより豊かにしていく機会となる。

    果たして、科学技術の発展は私たちの暮らしを本当に豊かにしているのだろうか。とくにインターネットの登場は、Web2.0⇒Web3.0とバージョンアップが図られるとともに、誰もが発信者たり得ると無邪気に信奉されてきた。その結果がFacebookやXのプラットフォーマーによる寡占と、フェイクや陰謀論に扇動・動員される民主主義の危機である。

    筆者はこ

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    2025年01月14日
  • 庭の話

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    めちゃおもしろかった。が、最後の方理解が追いつかなかった。

    個人的には、仕事、家族以外のコミュニティにゆるくかかかわっていたい、それが自分の助けになると思っている。
    でも、元来の飲みニケーションや、自治会みたいなもの、、、昔ながらの場を考えるとちょっと違うなぁそのままではなと思っていて

    この本の庭の概念、条件が、よりよい場のヒントになるのではと思ったし、生きていくうえでの選択の参考になるのではと。
    この本は、社会への提案だが。。


    孤食より共食、でなく縁食という話
    からのやっぱり孤独が必要という展開も面白かった。
    縁食論にしっくりきて好きな考え方だったから、
    そこからこうきたかという。

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    2024年12月31日
  • 遅いインターネット

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    遅いインターネットってタイトルの人だけど、スマホを5Gにしてたらちょっと笑う。
    内容的には、オリンピック批判とか。走りながら考えたこと。村上春樹のエッセイにもちょっと似る。成田祐輔の解説付き。

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    2024年08月06日
  • チーム・オルタナティブの冒険

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    最後の最後に「変身!」なんて言われて笑ったが、それまでのストーリーテリングがおもしろいから、最後にぶっ飛んでもいい感じでした。いや、傑作です。

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    2024年03月18日