夜汽車のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ乙女の本棚シリーズから、坂口安吾さんと夜汽車さんのコラボ作品「夜長姫と耳男」です。少女マンガのように可愛くて鮮やかな着物を纏う姫が印象的なんだけど、よく見ると骸骨とか蛇も描けれているし(;・∀・)
師匠からの推薦を受けヒダから夜長姫のもとを訪れた耳男…。依頼された仏像の制作には3年間を要し、夜長姫の無邪気な笑顔の裏にある残虐性に対抗すべく、耳男は蛇の生き血を飲み残りは制作した仏像に浴びさせ、亡骸を天井から吊るす…狂気じみた期間を過ごす。その後も、夜長姫の仏像制作の依頼を受けこの地に逗留していたが、村に疫病が流行り村人が次々と命を落とす…。その様子を高楼から見ては楽しむ夜長姫…耳男は夜長姫の狂気を目の当たりにし、夜長姫を刺す…。夜長姫は最期に「好きなものは呪うか殺すか、争うかしなければならないのよ…」と言い残す…。
怖い怖いお話でした!なんとも表紙からはここまでは想像もできてませんでした…。ある意味、怪談?オカルト??でも、文字だけの原作なら読み切れなかったかな…とても、きれいなイラストなんです。夜長姫の纏う着物の鮮やかさ、でも妖しさを秘めてる…。逆に最後のイラストは真っ白な装いなのが印象的…狂気から解放されての清々しさを感じさせてくれました。 -
Posted by ブクログ
文豪の名作と人気イラストレーターがコラボしたという、乙女の本棚シリーズ。
魅惑のラインナップの中で、ちょうど谷崎の刺青が発刊されたばかりだったのでこちらから読んでみました。
清吉という凄腕の若き彫物師は、理想とする美しい女に自分の魂を彫りたいと切に願っている。
そして漸くその娘に出会え、眠らせて背中に女郎蜘蛛を彫ってしまう。
激しい苦痛に耐えて目覚めた娘は、臆病な心を捨ててすっかり妖艶に生まれ変わっており、清吉は真っ先に娘の肥料(こやし)となっていたのであった、という話。
いかにも谷崎らしい耽美さ。女の美しさを描写する際の、圧倒的美を前に屈服するかのような丹念な文章表現は、何度繰り返して読んでもうっとりしてしまう。
清吉が、駕籠から僅かに見えただけの娘の生足に一目惚れするシーンとか凄まじい。
《その女の足は、彼に取っては貴き肉の宝玉であった。拇指から起って小指に終る繊細な五本の指の整い方、絵の島の海辺で獲れるうすべに色の貝にも劣らぬ爪の色合い、珠のような踵のまる味、清冽な岩間の水が絶えず足下を洗うかと疑われる皮膚の潤沢。この足こそは、やがて男の生血に肥え太り、男のむくろを踏みつける足であった。この足を持つ女こそは、彼が永年たずねあぐんだ、女の中の女であろうと思われた。》 -
Posted by ブクログ
"それはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。"
という書き出しが抜群に好きです。
谷崎特有の狂気じみたエロス、フェティシズムが、蝋燭の火のようにゆらゆらと妖しくゆれる。作中にも記されるように、美しきものが強者、醜きものが弱者、まさしく耽美主義を宣言するような作品である。
ただし本書のレビューとしては純粋に谷崎の刺青についてではなく、夜汽車さんのイラストとのコラボレーションとして論じなければならない。イラストは間違いなく美しい。個人的には、朱色の帯と、和紙の巻物が絡み合うところに、一条の光が射す、そのページが特に美しいと思った。淡く溶けていくような、それでいて緻密な描写が素晴らしい。
しかし、こと谷崎潤一郎の作品においては、同氏のイラストはミスマッチと言わざるを得ない。他の文学作品ならよいが、谷崎ほど人間のビジュアル面の描写に適格性を判断しなければならない作家はいないであろう。それくらい谷崎作品においては人物の造形が肝であり、なぜならそこには悪魔的に執着されたフェティシズムがあるからである。どう考えても、谷崎の筆から連想される妖艶さは、非常に何か限定的であり、現代的ポップカルチャーを象徴するロリータ造形を受け入れる余地はないように思われる。人生の酸いも甘いも刻まれていて、どこかに一抹の恐ろしさも仄見える、そんな妖しい陰のある美しさは、幼児的プロポーションと空想的顔面造形によって象られる”kawaii”では決してない。ゴスロリと言ってしまえば谷崎の耽美主義と共通点が生まれてしまうが、こと谷崎の、この作品においては、最後の一ページまで両者が交わることは私の中ではなかった。