グレッグ・ベアのレビュー一覧
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ネタバレp.387 "人類の全情報を質量とエネルギーの上位メモリにいれられる日がくる。そうなったら、空間をだまして、それが物質やエネルギーだと信じこませることができる。"
アークナイツに通じるものを感じる。
p.409 "マジュムダーは、マザー・シストのこと、そして二十年のあいだにマザーがじつにさまざまな仔を生んでくれたことを熱心に語った。そのうちのクルマムシヒツジやツツムシ、チリイヌなどは実際に外の庭園で育ち、重々しく動いていた。"
オリジムシを思わせる。
活性ナノが機能している時はイースト菌が発酵するような匂いがするという。ナノマシンDTが合成している時は、糠臭い匂いがすると描写されていた。
イナゴ。敵拠点に打ち込まれるナノマシン工場。兵力を敵地に輸送するのではなく、敵地で兵力を生産する。
p.289 本作品独自の概念「記述子」。これを言語と見なす描写がある。
プリースティスは言語学者というが、それは文系に属する学問ではないのかもしれない。
QL思考体=量子論理思考体。AIの一種。
現実のAIが起こすハルシネーションを予言している。
『七人のイブ』にも感じたことだが、予定調和的ではある。設計された物語であるがゆえ、と受け止めよう。
本書についてポリコレ小説という評を見かけたが、ポリティカル・フィクションと誤認しているのではなかろうか。だいぶ印象が変わるので気をつけてもらいたいものだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレp.124 ”「それも大地が語ってくれるさ」”
ファンタジーに耽溺した日々、『無限コンチェルト』と『蛇の魔術師』はバイブルのひとつだった。グレッグ・ベア作品はそれらを再読するばかりだった。
2011年に『天空の劫火』を読んだが、残念ながら合わないと感じられた。
上巻ではなにを語る物語なのか、まだ充分に明かされていない。構造上の弱点が幾つか見えるが、説明語りではなくちゃんと物語っており、下巻も期待できる。
数あるグレッグ・ベア作品の中からピックアップした理由はタイトル。そのイメージからナデシコと関連があるのかもしれないと思いこんでいた。原著の出版年は先、日本語訳の出版年はナデシコ放映年よりもあと。
QLや思考体という名詞から、ゼーガペインは影響を受けたのではないかという印象を得た。
二重生化学機能。火星出身者が地球に対応するためのなんらかの人工的な措置。明言されてはイないがナノ医療なのかもしれない。
地球の重力の1/3しかない星で生まれ、1G適応のために特別な措置を取ることなく成長した者が、数カ月のトレーニングで地球の重力に対応できるものだろうか。火星に生まれ育ったという理由で、心肺機能や骨の組成などに克服不可能な弱さを持ってしまうのではないだろうか。
それらを超克する手段には、説得力よりも魔法的ご都合だと感じることを禁じ得ない。
1993年時点でYoutube廃人を予見している。
物語中には「シム」にはまっている地球人がいる。現代では始終Youtubeを見ているといわれる人々がいる。 -
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ネタバレいやー面白かった。読みやすさでいえば鏖戦<凍月なのだが、両作品ともなんとも違う魅力があって、うなってしまった。(三体を読んだ時のエッセンスも感じた)
特大級のネタバレ以下
鏖戦/酒井昭伸訳
何がすごいってまずは、訳!絶対原典の方が簡単に書いてあるんでは?!と思いました(誉め言葉)。好みは分かれるかもしれませんが、私は結構好きでした。人vs異種族の戦いにおいて、異種族がいかに「読者含めた人」から離れた存在であるか、を示すべくの漢字も多用の訳…狙った効果の一つはそれかと考えているのですが、私は最初からやはり仏教感を感じてしまいまして、それは異端ではないので、なんだか最初から親しみが(?)ありました笑。本当はぜんっぜん読めない文字にルビで意味が振ってある、とかが正しいんだと思いますが、それだと読者途中離脱するでしょうしね…。
好きポイントその① 施彌倶支(セネクシ)・蔵識曩との会話
「汝、人種の記憶装置を調査せしや」蔵識曩がたずねた。
「はい」
「可なるか、是れ人形との意思疎通」
「すでに人種の機械を操作する界面(インターフェース)を開発しました。意思の疎通は可能と思われます」
「既往の先賢、人種との永き闘争に於て、還た意思疎通を為すの底有りや。汝また作麼生」(p17)
…
「この任務完遂ののちは、判明せる事実を余に伝え、須臾のうちに空滅せよ」(p19)
好きポイントその② 原題Hardfoughtの訳
戦いに赴く際に合言葉的に使う言葉としてHardfought!が出てきますが、それはそれでかっこいいし、ここで「鏖戦!」と日本語で語感を味わってもそれはそれでかっこいい…
好きポイントその③ だんだんと結末に収束する構成とスピード感
後半出てくる初代プルーフラックスとクリーヴォの会話、魅力的である。
「しかし、みずからの心を荒廃させてまで勝利すべき戦いなどーそれほど重要な戦いなど、ありはしない」(クリーヴォ、p89)
「連中はリスクのない成功を好んでくりかえす。新しい個性は危険なんだ。だから、過去の成功例を複製しようとする。いずれは同じような人間ばかりになって、個性はどんどんなくなっていくだろう。きみやぼくが増えて、ほかの者たちは減っていく。個人差がなくなれば、語るべき物語もなくなる。歴史もなくなる。われわれは死んだ歴史の一部になるのさ」(p96)
「あなた…クリーヴォね…」(p106)
「…そのとき…裸体の女が宙に浮かび、自分そっくりのミニチュアたちに囲まれて室内に入ってきた。妖精をしたがえた天使の図だった。体格はまるで蛇のようにほっそりしている。…天使の大群は飛翔をつづける。いったい何百万体いるのだろうか、濃い霧のごとくに群れをなし、星々を隔てた空間を飛翔する天使たち。その唯一の主人は現実の優越性だ。それ以外の主人は必要ない。彼らが異常をきたす恐れもない。」(p106-107)
ここの疾走感、文字を読む目に、情報の理解が追いついたときの体の震え…これこれ至上のSFでしか体験できない震え…シーンとあたりは静まりかえり、私は冷や汗をかいていた。グロテスク度合でいうと、貴志祐介の『新世界より』を彷彿とさせた。
そして追い打ちとばかりにプルーフラックス最後の詩。
なんと明るい炎の輝き! 平和はうつろい
記憶は消える、ただのひとつも残さずに
なぜだかいつも、同じ扉を見失っては
輪廻のうちに、われらは滅ぶ。
灰から星へ、虚偽から魂へ、
まわれ何度も、窪みと孔を。
善きを殺して、若きを喰らう
永遠に、とこしえに
あなたとわたしは滅ぶことなく。(p108)
そして最後の二文…
凍月/小野田和子訳
鏖戦の後だと、読みやすってなります。
こちらも別の話だと思っていたいろいろなレベル感の話が、うまく一つになっていくので読んでいて気持ちがいい。
途中ミッキーが欺かれ、失意に沈み、そこから一つ賢さを身に着けて顔を上げる…というエンタメ要素に気を捕らわれていたから、最後えっえっってなり、そういえば序文が不穏だったじゃん…ってなりました。
「…わたしが死んだら、姉やウィリアムといっしょの<氷穴>にいれてほしい。…ほかの頭たちといっしょの<氷穴>に…。<静寂>のなかに。」(p264)
この最後を読んで、HEADSという現代を凍月と訳したこと、それがこの最後のシーンとうまく重なって、すごくジーンときてしまった…。 -
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ネタバレヴァージルが主人公の間の展開は身震いする恐ろしさで、細胞が学習していくのが脅威だった。全て学習し尽くされたら乗っ取られるという恐怖に追い立てられる。
パンデミック要素も、コロナ禍を経験している今は身に迫ってくる。ワクチンの注射だってそう。ウイルスはあっという間に国境を越えてしまうものだし、意志を持ったヌーサイトならより簡単に全てをやってのけられる。
バーナードが他人の記憶を見て、ヌーサイトの思考宇宙を知るシーンが衝撃だった。壮大すぎて胸がザワザワする。全ての記憶が内包される一つの生命体のような、その混じり合った様々な経験や記憶が共有されてずっと続いていく事実が胸を締め付けて、わけもなく涙が出そうになる。消滅しない、というだけでこんな気持ちになるのか。
感染した人間の身体が変わっていくのが面白かった。肌の白い隆起は震えるほど気持ち悪いけど、人間の形態への執着を捨てれば安寧が待っている。細胞を弄ったことによる進化を受け入れるのか、もし私が選択を迫られたらどうするだろうと考える。たぶん迷わず捨てるだろうと思う。 -
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全然古臭くなくて面白かった。どきどきした。バイオテクノロジーで生まれた知性ある細胞群が、人体を、世界を侵食していく。
初めは人体を自分のたちの住む世界としか考えていない彼らは、住処である人体を調べながら都合よく改変していく。このあたりはかなりグロテスクで怖く緊迫感がある。
やがて人という存在を認識し、人とコミュニケーションを取り始める彼らだが、その辺りからストーリーは全く予想つかない領域に突入していく。人とは異なるミクロの世界を観測する彼らの影響力は凄まじく、人体のみならず世界法則にまで影響しはじめる。彼らは人を、世界をとう変えていってしまうのか。
全く価値観の異なる知性体どうしの出会いと共生の物語は寄生獣を思い起こさせたが、寄生獣が個の変化や個と個のつながりを描いたのに対し、この作品は容赦ない世界のダイナミックな変化を描いているのかなぁと思う。
人間がもし爆発的に宇宙に広がり始めて、星の意識や宇宙の意識を発見し、認識し、コミュニケーションを取り始めたら、なんて妄想も広がる。
細胞内の反応をこんなに詩的に美しくリズミカルに表現できるんだなぁというところも見所の一つ。 -
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「凍月」より先に書かれているが、「凍月」より後の世界を描いている作品。
22世紀の火星は、地球から半分独立、半分依存している形で存在している。その火星で、政治家を目指すキャシーアが大学を追い出されかけるところから、火星の運命が回り始める。
大学内でも、反学長派とみなされた学生たちが一斉に退学させられることになる。それに反対した学生たちの反乱は、あっけなく終結するが…。
キャシーアの回顧録というかたちをとっている作品だが、なぜ「回顧録」なのかというのが最後にわかり、彼女の人生に圧倒されること間違いなし。
そして第1部で描かれる、キャシーアとリチャードの淡い恋愛話は、その辺の恋愛小説など風で飛ばされるほどせつなく胸にくる青春ストーリーとなっている。
上・下巻のうち、上巻はどちらかというとキャシーアの成長物語として楽しめる。下巻になると、怒涛のように変化していくキャシーアの政治家人生と火星の行く末にはらはらする。
そしてラストシーン、キャシーアが回顧録を閉じるその最後の一行に不覚にも涙する。
自分の人生だけでなく火星と火星人の人生も決断していくキャシーアの強さ、それを支えたリチャードの優しさが心に染みる。
新しい技術やアイデアといったSF理論はもとより、物語性も優れた作品。 -
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バイオ工学がもたらす壊滅的な宇宙の崩壊!SFならではの壮大な展開
人生の50冊 SF編 ベスト1
ヒューゴー&ネビュラのダブルクラウンですが、
今では知る人ぞ知る傑作で、
SF史上初めてバイオハザードが取り上げられた作品です。
「考える細胞」というワン・アイディアを良くぞここまで論理的に展開させた!
とSFの持つ底力や可能性を実感しました。
印象的なのは「考える細胞」が増殖して行く中で、
彼らの「観察」や「思考」のエネルギーの総量が、
不可避的に増大し、
それによって世界が崩壊して行く過程が
とてもSF的で、いっそ爽快なこと。
そのあり得ない位の飛翔感こそ、SFの醍醐味なのです。