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Posted by ブクログ
「天空の劫火」(上/下)「天界の殺戮」(上/下)2部作(4冊)まとめての感想。
とにかくいろいろな要素を盛り込んだ、スケールの大きな話だった。
以下、内容に関するネタバレあり。
第一作「天空の劫火」では、次々に発生する謎のイベント、(多少くどいけれども)キャラクターの立った登場人物により、海外SFには珍しく、冒頭からストーリーに引き込まれていく。次々と謎が深まっていく中、ある時点で謎が見えてきたとたんに、取り返しのつかない(言葉通り)大惨事が始まる。終盤の、惑星破壊装置による破壊、それに否応なく巻き込まれていく人々の運命、これらを延々と大きなスケールで描いていく様は、読者を救いのない思いへと叩き込む。その中でわずかに残った救いが、続編への希望をつないでいく。
第二作「展開の殺戮」では、うって変わって、宇宙的には広いスケール、しかし非常に限定された狭い空間(宇宙船内)でのドラマ。前半は、閉鎖空間の中での人間関係を丁寧に描き込み(ここは海外SFの例に漏れず読みづらいのだが)、復讐対象との小競り合いと敗北、異種文明との合流・協力を経て、ストーリーは加速していく。ミステリー仕立ての人間関係、犯人捜しのストーリーの中で、登場人物たちは、答えの見つからないまま、法の執行を行うかどうかの決断を迫られていく。
ファーストコンタクト、終末もの、宇宙戦争、ミステリー、星間旅行、異種文明との邂逅、高次文明同士の星間戦争、政治、ロボット、軍隊、科学、家族の愛、…。スケールの大きな話、小さな話、とにかくいろんなものを詰め込み、それを破綻なくストーリーとしてまとめ上げた作者の力量には恐れ入るばかり。本当に、「SFらしいSF」を求めている方(ただし、長くても読める方!)にお勧めできる本であった。