藤木稟のレビュー一覧
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奇妙な粗雑感
相当雑駁ではあれ時代背景の設定と掌握は、小説としては悪くはない。
だが肝腎のホラーのほうが。雑というかこじつけというか、末尾部分のタネ明かしにつながる伏線の設定が乱雑すぎる。
そのために通奏低音としての猟奇の浮き上がりが弱い。 もともとは短編向けの着装だったものを、乱暴に膨らませすぎた結果だろうか。
登場人物を三分の二程度にして、場面も三割方削って、丁寧に書き込んでいけばホラーとしての仕上がりも良くなっただろうに。
出来の悪い大正昭和の極彩色浮世絵の覗きからくりを見せられただけに終わった気分。著者好みの「おどろおどろ」がたたみ掛けて来すぎて、却って味が単調になってる、という感じかな。