山中恒のレビュー一覧
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購入済み
一生かけて読んでいます
昭和40年代の作品で、還暦過ぎた私が小学5年生の時に初めて学級文庫で読んだ。すぐにPTAから禁書扱いになった。こんなお馬鹿な6年生男子がボーイフレンドなどまっぴら、とか思いながらもその内容に心打たれた。読書して腹の底に応えたのは、幼稚園の時に読んで大泣きした、泣いた赤鬼以来かと。そして姉のトシミと同じ中学生となり、長男の大学生になって、と人生の節目にずっと読み返してきた。そして自分自身が母親となって自分の子供にプレッシャーをかけるようになって、子供に読ませた。面白がっていた。今、お爺さんの年齢となり、自分の人生にある澱を感じている。夏代はそんな私に「そんなの昔のことは夏代には関係ない」と言ってくれるだろうか。半世紀ですよ。時代も何も変わって昭和はどこにもないのに、これだけ一生かけて読ませる児童文学。お勧めです。
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Posted by ブクログ
1969年に刊行され、その後出版社が変わりながらも版を重ねている名作。
婿養子に入り母親の尻に敷かれっぱなしの父親。
兄弟4人は全員優等生なのにただ1人出来が悪いと秀一(ひでかず)をいつも叱り、抑圧する母親。
学校での秀一の素行をとことん調べあげ母親に密告する妹のマユミ。
母親に押さえつけられ、妹に見張られて、自分のやりたいことがすべて否定され、奪われている様子に胸が苦しくなります。
自分だけが勉強ができない、他の兄弟のようになれないことにもがき苦しみ、ある日、抑圧に耐えらえなくなった秀一は家出を決行します。
その途中、ひき逃げを目撃したり、転がり込んだ山中の家が武田信玄の隠された財宝に関係する家で、住人のおじいさんと少女は何か事情をもっていそう。
色んな冒険や事件が待ち構えています。
学校と家という狭い世界で暮らしていた少年がおじいさんと少女に出会うことで新たな世界が見え、影響され、少年の心の中が少しずつ変化し、整理されていきます。
一見、母親の敷いたレールを素直に走っているかのように思えた兄や姉も、きちんと自分の考え、主張を心の中で持っていたことも秀一は知ることができました。
子どもだって親の庇護は必要ではあるけれど、親の所有物ではなく、いつまでも思い通りにはならない、ひとりの人間、一個人なのだ、ということを最後には教えてくれます。
大人である自分も胸が苦しくなったりハラハラさせられたのです。
子どもが読んだら…子どもの心にも激しい化学反応が起こるでしょうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ家出少年が運命の悪戯により国際貨物輸送船を舞台にした事件に巻き込まれた結果、ある理由で生きる意味を見失っていた大人に改めて人生を見つめ直させ、自らも生きる上での真の反省とは何か?を知るに至る海洋サスペンス物語です。
貨物船「海栄丸」、そして物語の鍵を握る人物との針路は「地獄行き」の筈でしたが、主人公の家出少年達の闖入により運命は劇的に変化します。件の人物が最後に、どんなことがあっても地に足をつけて前を向いて人生を続けることの大事さを少年に説いた言葉は、恐らく自分自身にも向けられたものであったに違いありません。
若苗のような少年の成長と、一度業火に焼かれた老木が再び芽吹いたような海の男の再生がまぶしくて爽やかなお話でした。
なお、この物語は40年近く前の古典児童文学ですが、巻末注記によるとつばさ文庫収録に当たり現代に合わせ改稿してあるようです。オリジナル版を未読なので具体的な改稿箇所は不明ですが、恐らく事件の発端となった家電類や、子供達が持ち込んだ飲み物に関する描写の部分であると推測しています。
ただラストで主人公が使う小道具だけはどうしても変えられなかったのでしょう。読み終えると、やはりあれは変えなくて正解であったと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ児童文学の最高傑作。何度でも読みたい。私が大人になってから理解した「私は私であること」がこんなにも分かるように描かれている。
5人兄弟の中で一人だけ出来が悪いと毎日小言を聞かされている秀一が、夏休みの十数日間の家出を経て「僕」の自由は誰にも侵せないことを知り、教育ママの城が崩壊するまでの話。読み始めは、母にガミガミ叱りつけられ妹に告げ口され、学校では廊下に立たされと萎縮してしまいそうな主人公・秀一に共感した。成績が悪いと言っては一時間も小言を聞かされ、隠したテストを見つけられては他の兄弟と比較され、兄弟にはバカにされ、母親の行き過ぎた教育ママぶりに友達もできない。本当に秀一を勉強ができるようにさせたいのなら、誰かが勉強を見るようにさせたり他の兄弟と比べることをやめて彼が前進したら褒めたり、秀一のペースに合わせて行動を起こすべきだろう。なのに一方的に叱りつけ感情をぶつけるだけで、これでは秀一がくさるのも当たり前だ。
そんな秀一も夏休みにどことも知れない田舎の家に泊まることで変わってくる。いや、変わったのでなく、元々の秀一の性が出てきたのだろう。嘘をつきたくない、お礼はきちんとする、これらは秀一から自然に出てきたものだ。
そうして清涼になり自宅に戻った秀一を待っていたのはいつもの母と、世界の見方の変わった自分だった。そう、母は理不尽である。誰も自分の自由を縛ることはできない。あれだけ疎ましく感じていた妹も動物園のサルのように感じる。母は哀れだ。
他の兄弟も母を疎んでいることが分かり、母の牙城は崩壊する。本当に家出から戻ってからの世界の見え方の移り変わりが見事。環境は何も変わっていない。ただひとつ、「僕が僕であること」。昔の出来事は関係ない。子供にとっては今が全てなのだ。大人だからと言って子供を好きなようにしていい訳ではない。私は私、あなたはあなた、私とあなたは違う。そんな当たり前だけどはまってしまうと抜け出すのが難しいことを秀一と夏代は知る、知っている。同じ人間ではないからしたいことも違うし、衝突するかもしれない。でもそれがごくごく当たり前のことなのだ。
本との出会いは縁である。この本に出会えて良かった。解説で紹介されていた本を次は読みたいと思う。
本当にこの本は心が洗われる。子供の頃に出会い繰り返し読みたかった。今読んでも遅いという意味ではなく、それだけ確かなものを残す本だから。 -
Posted by ブクログ
ネタバレフランケンシュタイン=モンスターって思ってた
でも実はフランケンシュタインはモンスターを作った博士の名前っていうのを初めて知り衝撃でした。
作った博士、作られたモンスター
ある意味、親と子
切っても切れない絆
この物語の深いテーマなのかな?
博士とモンスター、似てるようで似てない、けどどこか通じ合ってる。
愛と憎しみが入り混じった関係って、すごく人間くさくて切ない。
しかも作者のメアリー・シェリーがこれを書いたのって、まだ10代だったってのも驚き…
「人はどこまで神の領域に踏み込んでいいのか」とか、「責任ってなに?」とか、めっちゃ考えさせられる作品。
クローンの羊を思い出した。
あれ、どこいった??
作者自身の喪失と孤独、そして愛と死が入り混じった過酷な人生から生まれた作品
母(フェミニズムの先駆者メアリー・ウルストンクラフト)を出産直後に亡くし、
父とは距離があり、10代で詩人パーシー・シェリーと恋に落ちて、彼は既婚者。
世間に背を向け、駆け落ち。略奪婚。
愛を手に入れたようで、その代償はやはり重く、、、
子どもを4人産んで、3人を失うという心の砕けるような経験。
スイスのレマン湖のそばで
「誰が一番怖い物語を書けるか」というゲームから始まった、
『フランケンシュタイン』の執筆
ただのホラーじゃなく
命を生み出すとは何か?愛されなかった存在は何を思うのか?作った側の責任とは?
最終的に夫も失い、彼女は一人で息子を育てながら、作家として生きていく。
影には思い過去が詰まった話。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ何かで書評を見て、面白そうだな、と小5の息子用に購入。タイトルからしても、自我が育っていく今の時期にちょうど良いのではないかと思い、一緒に読みました。
1974年くらいに初版が出ていて、少し時代が古い。主人公の秀一の兄たちは、どうやら学生運動に少し足を踏み入れたりもしている。それを親が心配する場面などが出てくるので、「学生運動」や「反体制」について少し、息子に説明してあげる必要があった。主人公の秀一が親に反発して自立しようとする過程と、兄たちも学校や国の制度に疑問を持ち始めるということをリンクさせているのだろう。兄たちは家では母に従順で、いつも秀一は兄や妹と比べられ、叱られてばかりいる、という設定なのだが、そんな兄たちだって、何もかもに従順なわけではないのだ。
さて、怒られてばかりの秀一は、ついに家出を決意する。で、軽トラックの荷台に飛び乗ってしまうんだけど、なんとそのトラックがひき逃げ事件を起こす。このあたりから息子も、えー!どうなるの?と、物語に引き込まれました!
たどり着いた先はかなり田舎の、おじいちゃんと同世代の孫が暮らす家。両親はおらず、訳ありの家庭のようだ。そこの孫娘「夏代ちゃん」は、秀一と違って、自分のこと(宿題やそれ以外の勉強)だけでなく、家事も農作業も、何でもテキパキと自分でこなしている。自分がいかに甘ったれだったか気づく秀一。夏休みの間、その家で過ごした秀一は、少しずつ精神的に成長していく。
さて、夏休みの終わりに家に帰った秀一には、家族(母)との対決が待っている。母は、秀一がついに家出までしたというのに、まだまだ全然改心していなくて、相変わらず秀一を支配しようとする。大切な夏代ちゃんとの手紙のやりとりにまで干渉してくる。それについては息子もかなり立腹していた笑。さすが令和の子ども(平成生まれやけどね)。人権感覚が育ってますね。
秀一と母との激しいやりとりに、きょうだいも入ってきて家は大変なことになる。また、夏代ちゃんの家も、財産を狙う(しかもひき逃げもしている)正直(まさなお)が、夏代ちゃんを騙そうとしていて大変。
最後までドキドキハラハラしながら読めて、面白かった。そして、家でも学校でも「ダメな子」と思われていた秀一が、自分のこと、大切な友達の夏代ちゃんを守ること、学校でも自分で問題を解決しようとすること、など、どんどんたくましく成長していき、少し大人に近づいていくのが読み取れた。
10歳くらいの子どもがこれを読むことで、大人だからってみんながみんな正しいわけじゃないとか、表面的に言うことを聞いて、うまく受け流す技もあるとか、母親だって弱い部分があるんだとか、いろんなことが気づけると思う。 -
Posted by ブクログ
教育に熱心すぎる母親と、母親の理想像から外れ問題児のレッテルを貼られた小学校6年生の主人公。
強く叱責されても、抗えず別のところでストレスをはく、その結果、また叱られるという悪循環。
あるとき、「こんな家出て行ってやる。」というと、母親から「家出すら出来ない。」とこき下ろされ、感情的に家出を敢行。それをきっかけに様々な出会いが少年を成長に導いた。
家出をしたことで世界が広がった少年には、これまでの強権的な母親とは違う姿が見えるようになっていた。視点が変わると、物事が違って見える事をいろいろなエピソードから教えてもらえる。
古い書籍なので、戦争の話しやら学生闘争やら昔の言葉が多い。
めがねをかけたつり目の教育ママなんて流行らないとも思ったが、大人の浅さやエゴをうまく表現していて面白かった。現代でも通じるかな?
雪崩のように災難が落ちてくる母親に同情的になったのだが、「それは自業自得だ」と他人事のように話しを締めくくる主人公たちの親子関係にも寂しさを感じた。。
夏休みの読書感想文にいかがでしょうか。