綺麗にまとまった話でした。
読み終わって、今となりますが感想があまり出てきません。
いろんな映画や本、歌を聴いて感想を言えるのはやはり当事者意識がないから、作者を通して世界を見えるのだと思います。
つまり、何が言いたいかと言うと、没入しすぎて客観的な感想が出てこないのです。
もちろん違和感のないキャ
...続きを読むラ構成や、キャラクターを縁取るパーツや設定は大衆芸能そのものでした。漫画家の原作という存在にこの本の作者の輪郭を観たことがあったのも確かです。
でもそれ以上に、心地よくて、正直この本を読み切った後でもキャラクターの顔や外見はあんまりピンときてないです。
どんな髪の長さだとか、好きな食べ物はなんだとか。
でも、この人がどんな人間なのか。その質問にはきっとすぐに答えられます。そんな本でした。
また、読んでいて感じたことといえば、前半と後半の書きたいことの落差ですかね。
前半は映画のような場面を切り取った感情描写がとても多かったように感じます。例えば、海辺で揺らす足を自分自身の心に例えたりその表現はいわゆる映画表現のようで、表現でしかなかったように思えます。
だが、後半はこの本の主題である。自由とは何か、生きるとは何か、愛とは何か。
それを書いています。そこに表現はいらない、散りばめられたパーツをはめていき、描きたいことを描く小説を読んだと思います。
出てくるキャラクターに輪郭があり、ここまで長い人生を、継続して描き続ける作者の胆力にあっぱれです。
金星、それはジュピターとも呼ばれる愛の星です。それが東京でも、瀬戸内海でも変わらない。それはきっと二人の心の底を表す星なのでしょう。
汝、星の如く きっと櫂にとってあきみは金星のようにどこでも光り輝いていたのであろうと。
追記
また、メタ的なことを言えば、自立を促し母を奪った彼女は僕らに話を読みやすくするキーマンだったのだろう。そのような存在の違和感を憧れという形で最後まで違和感なく残らせた作者に違和感と技量を感じた。
彼女こそが、作者だったのであろうか...