田中小実昌のレビュー一覧
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田中小実昌(1925-2000)。牧師の子として東京に生まれる。戦後しばらくは、東大哲学科に籍をおきながら、進駐軍の仕事で生活。
やはり翻訳家としてのエピソードがおもしろい。米軍基地には兵隊用のペーパーバック本がたくさんあって、それを読んでいた。不明のところは、いつでもネイティブに聞けた。しかし、「アメリカの小説ならば、アメリカ人のインテリにたずねれば、たいていわかるとおもうのは、大きなまちがいで、翻訳のためのいい先生を見つけるのは、なかなかむつかし」かったそうな。(「翻訳あれこれ」)
ある時、「女」がコミマサを「このひと、翻訳をやりたいんだって」と中村能三の家に連れていった。ノウゾーは、これ -
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翻訳者の田中小実昌は、今から85年前の1925年4月29日に東京で生まれて10年前の2000年に74歳で亡くなった小説家・エッセイスト、そしてミステリー翻訳家。
一応、直木三十五賞作家でもありますが、そんなことなどまったく知らなくて、または、その存在すら全然知らなくとも、早川書房のポケミスや文庫を中心に、本書のエド・マクベインをはじめとして『死体置場は花ざかり』のカーター・ブラウンや『死の第三ラウンド』のウィリアム・アイリッシュ、そして『銃弾の日』のミッキー・スピレインや『猫は夜中に散歩する』のA・A・フェア、それに『血の収穫』のダシール・ハメットや『湖中の女』のレイモンド・チャンドラー、さ -
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アメリカの作家エド・マクベインの長篇ミステリ作品『通り魔 87分署シリーズ(原題:The Mugger)』を読みました。
『警官嫌い 87分署シリーズ』に続き、エド・マクベインの作品です。
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通り魔はマントのように漆黒の闇を身にまとい、路地の暗がりに立っていた。
闇は男の親友、そして獲物は女だった。
が、この通り魔は変わっていた。女を襲ったあと被害者にこう言うのだ。
「クリフォードはお礼をもうします、マダム」捜査を開始した87分署の刑事たちを嘲笑うかのように不可解な通り魔は犯行を重ね、やがて事件は殺人へと発展した!
大都会の犯罪を追う警官たちの -
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犬も猫も好きだけどちょっとだけ犬に軍配が上がるかつて犬と暮らしていた私ですので、どのエッセイも愉しく、胸に沁みました。
好きな作家さんも多く、以前に読んだことがある文にまた出会えて嬉しい。
このシリーズは他にも猫、珈琲、酒、おやつ…とまだまだあるようなので少しずつ読みたいな。
以下好きなエッセイ覚え書き。(一部です)
犬の生まれ変わりに違いないと熱烈に思っている押井守氏、ノラの犬猫を見かけたら放ってはおけない愛情深い米原万里氏、手塚治虫氏による犬が人間のそばにいる理由を描いた漫画、坂口安吾氏がわがまま檀一雄氏のために秋田犬を無心するお手紙、椎名誠氏の犬の系譜と怒りと悲しみの別れ、深沢七 -
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最近流行?路線バスの旅のハシリ。東京から鹿児島まで20年かけて乗り継いだ旅。飲み屋とストリップと諸々の取り留めのない独特の世界。
テレ東の路線バスの旅が好きなので迷わず購入。1996年の単行本の文庫化。最近中公文庫やちくま文庫、再版本が面白い。
計画なくふらっとバスに乗り西を目指す。関ヶ原を超えて挫折し名古屋に引き返したり、行き当たりばったりの旅。飲み屋で知り合った女性と同行したり筆者のストリップ関連の仕事の思い出などとりとめのない回想と、メモ書きのような看板名、地名の羅列が独特である。
バスが起伏の多い道を走りながら、チラッと見える海。そんな情景が旅情を誘う。
バス旅そのものより、飲 -
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ネタバレ87分署シリーズ第二作。クリフォードと自称する通り魔事件が多発する。また、前作、警官嫌いで負傷したパトロール警官のバート・クリングには昔の知人から妻の妹の様子がおかしいので会って欲しいと依頼される。バートはピーターの妻の妹ジェニイと会うが、その後、ジェニイは殺される。クリフォードの犯行はエスカレートし、ジェニイ殺害の容疑もかかった。
ピーターの妻であり、ジェニイの姉であるモリイの頼みから事件の捜査をしていたバートは、刑事の邪魔をしているとして叱責を受ける。
一方、通り魔事件を追うハル・ウィリスは女性刑事アイリーン・バークを囮に犯人を追う。そして、通り魔がアイリーンを襲う。そこに駆けつけるウ -
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マクベイン『87分署シリーズ』の第二作目の主人公は、バート・クリング。
一作目の『警官嫌い』では少年に肩を撃ち抜かれて病院送りになったクリングが、今回は大活躍をしてみせます。
タイトル『通り魔』とあるように、今回の事件は不可解な連続通り魔事件---犯行後、「クリフォードはお礼をもうします、マダム」と被害者に言い残し、立ち去る犯人『クリフォード』。そして、捜査を進める中、発生した一件の殺人事件。
一作目ではスティーブ・キャレラに付いて回っていただけの駆け出し警官だったクリングの成長を、足を使った地道な捜査の足取りと彼の人情深さを伺わせる交流の描写など、見所たっぷりの作品でした。
今回、作者 -
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独特の小説を執筆する著者の田中小実昌氏は、1979年に『ミミのこと』と『浪曲師朝日丸の話』の2作で直木賞を受賞する。
この2作は、1979年に発行された『香具師の旅』に収められた作品なのだが、実は雑誌に発表したのは1971年のことで、遡っての受賞は珍しいとのことだ。
今回の『ミミのこと』には受賞作の短編が2作、中編が1作が収められている。
⚫︎ミミのこと(短編・直木賞受賞作)
ぼくが一人で場末の狭い酒場で飲んでいる時、店に女が駆け込んできて、ぼくの後ろを通る時に乳房の先で背中を押してカウンターの奥に座った。
ぼくは彼女を見て、あのミミだとわかった。
⚫︎浪曲師朝日丸の話(短編・直木賞受賞作 -
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作家や著名人の犬エッセイショートショート。
著名な作家を中心に、漫画家、イラストレーター、映画監督など、著名人が犬について書いたエッセイ集です。犬との出会い、犬との思い出、別れなど、テーマ別にまとまっていて読みやすかったです。が、それぞれが短いということもあってなかなか頭に残りませんでした。印象的なエピソードは、椎名誠のお母さんのトラウマ級の非道で、そんなことされたら僕も一生恨むだろうなあ、と思いました。あとは彫刻家の舟越保武さんの章や、寺山修司の話もよかったです。いせひでこさんのイラストエッセイはほんわかしました。うんうんそうだよね、犬ってそういうヤツだよね。
しかし全体的には昭和が中心の