あらすじ
街は女、秋は死の季節。闇は彼の親友、獲物は女だった――通り魔は夜の闇を身にまとい、女を襲った。「クリフォードはお礼を申します、マダム」これが彼の口ぐせだった。刑事たちの追求もむなしく、ついに殺人事件は起った……大都会の犯罪を追う警察官の悲哀をみごとに浮き彫りにした作品。
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初々しい
87分署シリーズ2作目。1作目で結婚し新婚旅行に出かけたキャレラは不在。主役が不在の中、初々しいサブキャラが登場する。2つの事件が並行する面白みがいい。
Posted by ブクログ
翻訳者の田中小実昌は、今から85年前の1925年4月29日に東京で生まれて10年前の2000年に74歳で亡くなった小説家・エッセイスト、そしてミステリー翻訳家。
一応、直木三十五賞作家でもありますが、そんなことなどまったく知らなくて、または、その存在すら全然知らなくとも、早川書房のポケミスや文庫を中心に、本書のエド・マクベインをはじめとして『死体置場は花ざかり』のカーター・ブラウンや『死の第三ラウンド』のウィリアム・アイリッシュ、そして『銃弾の日』のミッキー・スピレインや『猫は夜中に散歩する』のA・A・フェア、それに『血の収穫』のダシール・ハメットや『湖中の女』のレイモンド・チャンドラー、さらに『憂愁の町』のロス・マクドナルドや『霧の壁』のフレドリック・ブラウンなどなど、おそらく100冊近い主にハードボイルドの翻訳本がありますから、その内の一冊でも手に取ったことがある人は、きっといらっしゃるはずだと思います。
私は、幸か不幸か、リチャード・マシスンの『地球最後の男・・人類SOS』というハヤカワ・ノヴェルズの一冊をSFとして読んだ小4の時が田中小実昌との最初の出会いだったのですが、まさかこれが、13年後の2007年にウィル・スミス主演で『アイ・アム・レジェンド』として3度目の映画化がなされるとは夢にも思っていませんでした。
それから、中学生になってポケミスから早川・創元文庫をはじめミステリーの魔境、いや桃源郷に入り込んで、気がつけば彼には随分とその翻訳にお世話になったことを自覚しているとき、同時に映画関連の本も手当たり次第に読むうちに、映画に関するエッセイ『ぼくのシネマ・グラフィティ』や『コミマサ・シネマ・ツアー』にも出会い、両方で田中小実昌という名前を発見して驚き、そして、高校生になってから『ポロポロ』や『アメン父』や『イザベラね』などという、今までの小説観を吹き飛ばされるほどの軽いノリ、もしくは身辺雑記・私小説ふうの記述の奥にある深遠な思惟小説と、まさに正面衝突して、また衝撃を受けるのでした。
Posted by ブクログ
アメリカの作家エド・マクベインの長篇ミステリ作品『通り魔 87分署シリーズ(原題:The Mugger)』を読みました。
『警官嫌い 87分署シリーズ』に続き、エド・マクベインの作品です。
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通り魔はマントのように漆黒の闇を身にまとい、路地の暗がりに立っていた。
闇は男の親友、そして獲物は女だった。
が、この通り魔は変わっていた。女を襲ったあと被害者にこう言うのだ。
「クリフォードはお礼をもうします、マダム」捜査を開始した87分署の刑事たちを嘲笑うかのように不可解な通り魔は犯行を重ね、やがて事件は殺人へと発展した!
大都会の犯罪を追う警官たちの悲哀を見事に浮き彫りにしたシリーズ第2弾
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1956年(昭和31年)に刊行された、87分署シリーズの第2作です。
街は女、秋は死の季節……闇は彼の親友、獲物は女だった――通り魔は夜の闇を身にまとい、女を襲った。「クリフォードはお礼を申します、マダム」これが彼の口ぐせだった、、、
刑事たちの追求もむなしく、ついに殺人事件は起った……大都会の犯罪を追う警察官の悲哀をみごとに浮き彫りにした作品。
アイソラの町で繰り返される通り魔事件……しかも、その犯人が一風変わっており、女性から金品を奪ったあとで「クリフォードはお礼を申します、マダム」と言いながら一礼して去っていくもの、、、
やがて通り魔事件は殺人へと発展……87分署の面々は犯人逮捕に向けて懸命な捜査を続けるが という展開。
真相は何となく予測できたかな……とは思いましたが、本シリーズは雰囲気が大好きなので、最後までしっかり愉しめました、、、
前作の『警官嫌い』で主人公役だったスティーヴ・キャレラ刑事は、テディと結婚して新婚旅行に行ってしまっており、本作では前作の『警官嫌い』で銃弾を受けて負傷したパトロール警官のバート・クリングが主人公役となり、友人ピーター・ベルの義妹ジェニイ・ペイジが殺害された事件の真相をピーターの妻でジェニイの姉であるモリイからの依頼を断われず不本意ながらも個人的に捜査する展開……謎解きよりも、87分署の面々が活躍する群雄劇として愉しめますね。
できれば、このまま順番に87分署シリーズを読みたいところですが……古い作品なので古書店でも入手困難で、飛び飛びでしか購入できていないんですよねー 在庫の中から、なるべく初期の作品から読もうと思います。
Posted by ブクログ
87分署シリーズ第二作。クリフォードと自称する通り魔事件が多発する。また、前作、警官嫌いで負傷したパトロール警官のバート・クリングには昔の知人から妻の妹の様子がおかしいので会って欲しいと依頼される。バートはピーターの妻の妹ジェニイと会うが、その後、ジェニイは殺される。クリフォードの犯行はエスカレートし、ジェニイ殺害の容疑もかかった。
ピーターの妻であり、ジェニイの姉であるモリイの頼みから事件の捜査をしていたバートは、刑事の邪魔をしているとして叱責を受ける。
一方、通り魔事件を追うハル・ウィリスは女性刑事アイリーン・バークを囮に犯人を追う。そして、通り魔がアイリーンを襲う。そこに駆けつけるウィリス。犯人には逃げられるが遺留物から逮捕に繋がる。
通り魔クリフォードはジェニイ殺害とは関係がなかった。バートは真相に気付き、ジェニイとピーターが愛人関係であり、子供ができたことをモリイに話すと言われたため殺したのだった。
ウィリスとアイリーンと通り魔の行動が続けて描かれる部分が最も良い部分だった。囮とそれを追う者、そして囮を守る者それぞれが描かれサスペンスが高まる。
Posted by ブクログ
マクベイン『87分署シリーズ』の第二作目の主人公は、バート・クリング。
一作目の『警官嫌い』では少年に肩を撃ち抜かれて病院送りになったクリングが、今回は大活躍をしてみせます。
タイトル『通り魔』とあるように、今回の事件は不可解な連続通り魔事件---犯行後、「クリフォードはお礼をもうします、マダム」と被害者に言い残し、立ち去る犯人『クリフォード』。そして、捜査を進める中、発生した一件の殺人事件。
一作目ではスティーブ・キャレラに付いて回っていただけの駆け出し警官だったクリングの成長を、足を使った地道な捜査の足取りと彼の人情深さを伺わせる交流の描写など、見所たっぷりの作品でした。
今回、作者のマクベインの主眼は、本来の軸である事件の解明というよりも、クリングという人間を描くことにあったのでは…と思えるほど、クリングの性格を巧みな筆致で描写しています。
物語の途中で出会うクレアという女性。彼はクレアとのデートに備えて、ごく普通の男子がするように身なりを整えます。
しかし彼は、「彼女はこれから、自分にとってますます大事な人になるだろう。」と考え、靴まで磨こうとする男なのです。
そして、未だ昔の恋人を忘れられないでいる彼女・クレアが、自分とともに前に進めるようになるまで「ぼくは、ただ暇をつぶしていよう。」と言えるような男なのです。
バート・クリングというのは、なんと面白い男なのだろう…と思ったものです。
マイヤー・マイヤー、アイリーン・バーク、ハル・ウィリス。本作より登場する刑事はみな個性的で、愛らしい人ばかりです。
そして、勿論。
バート・クリングという人間もその一人なのです。