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小説・文芸
Posted by ブクログ
田中小実昌(1925-2000)。牧師の子として東京に生まれる。戦後しばらくは、東大哲学科に籍をおきながら、進駐軍の仕事で生活。
やはり翻訳家としてのエピソードがおもしろい。米軍基地には兵隊用のペーパーバック本がたくさんあって、それを読んでいた。不明のところは、いつでもネイティブに聞けた。しかし、「アメリカの小説ならば、アメリカ人のインテリにたずねれば、たいていわかるとおもうのは、大きなまちがいで、翻訳のためのいい先生を見つけるのは、なかなかむつかし」かったそうな。(「翻訳あれこれ」)
ある時、「女」がコミマサを「このひと、翻訳をやりたいんだって」と中村能三の家に連れていった。ノウゾーは、これを試訳してみろとO・ヘンリーの短篇を手渡した。訳してみたが、漢字が上手く書けないもんだから、中国文学をやっている先輩に清書してもらった。その漢字だらけの原稿を見て、師匠は言う、「名詞だけ漢字にしろ、あとは、みんな仮名でよろしい」。というわけで、それがコミマサの文体になってしまったそうな。「女」はのちの奥さん。(「ぼくのお師匠さん」)
この「女」は画家の野見山暁治の妹でもあった。つまり、野見山暁治はコミマサのアニキになってしまった。