筒井淳也のレビュー一覧
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社会学ではなく、「社会」に関する本は珍しい。そしてその出発点は「社会は理解できる」ではなく、「社会は理解できない」であることも面白い。感じていたモヤモヤ感を吹っ飛ばしてくれるような本だった。「なぜ日本は〇〇なのか」「なぜ少子化は止まらないのか」と言った疑問の裏には、明確な意図があり、それを変えてしまえば解決するだろうという楽観的な考えがある。そしてそれは大抵裏切られ「なぜ変わらないんだ!」と喚かざるを得ない。
そもそもの前提が間違っており、確かに人間が作ったのだけど、複雑化しすぎてもう誰にも理解できなくなっているというのが正しい。これを飲み込めたことはかなり大きな財産になっただろう。 -
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中高生レベルの読者をターゲットとしながら、大人でも十分に楽しめる本質をシンプルに突いた良書が楽しめるというのがちくまプリマー新書のイメージであるが、本書はそのイメージを体現するかのような良書である。
気鋭の社会学者である著者が本書で伝えようとするメッセージは、「私たちは自分たちでもよくわからない世界の上で生きている。そして様々な出来事は相互に緩いつながりを持っており、その緩さゆえに、余計にわからなさを増す」というものである。
第一の含意、「自分たちでもよくわからない世界」という点は、勧善懲悪・二元論・陰謀論のように、一見わかりやすいように見える叙述が実はデタラメである、ということを示すだろ -
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◯合計特殊出生率は上がることなく、むしろ下がりつつあり、一番重要な出生数は90万人を切るかもといった報道がされている現代日本においては、まさしく他国の真似ではない、実態に即した少子化対策が必要であると感じた。
◯また、今までの施策は、やはり海外の模倣であり、日本という社会に合っていない上に、場当たり的な施策が続いており、グランドデザインを描いた上で、速やかに対応する必要性を感じる。
◯本書では結婚に関する個々人の理由を詳細に分析し、働き方改革が声高に叫ばれる前から働き方に関する視点が盛り込まれ、家族内での家事分担に至るなど、着眼点が新しく、面白い。
◯最終章が、本書の要約として大変分かりや -
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ネタバレ前半では、家族や結婚のかたちの歴史を公平な立場で紐解いていく。「男は仕事、女は家事」という性別分業は、伝統でもなんでもなく、経済環境によってたまたま形成されたものに過ぎないと知って驚いた。
後半は共働き社会がもたらす問題点について提示する。共働き化が格差社会を助長するという話は俄かに信じがたかった。また、家族への過剰な依存は、セーフティネットとして家庭を維持しなければならないという「家庭の職場化」に繋がるとのことだった。逆に家族を必要としない社会でこそ、人々は家族を求めるという考えは斬新ながら説得力があった。
最初は人生設計の指南本だと勘違いして本書を手に取ったのだが、実際には個人というより -
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社会学の専門家による家族についての本。結婚や家族について、歴史的な経緯をはじめ、海外との比較など詳細な分析が行われている。ただし、著者のリベラリスト的な主張は受け入れられない。政府等の力によって結婚や家族のあり方など、人間の本質に関わることをコントロールすることは困難であり、社会の流れに任せ、制約をすることなく自然に自由にさせることが大事だと考える。ダーウィンの考え方に人間といえども逆らうことは難しいと考える。
「日本の古代社会の対偶婚は複婚に近く、結婚している男性が他の女性と関係を持つこと、また、結婚している女性が他の男性と関係を持つことが厳しく禁止されることはありませんでした」p22
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ファッション雑誌STORYでオススメされていたので読んでみました。
社会学、特に家庭や結婚といった身近なテーマの歴史的変遷を知ったのは初めてだったし、現代の世界における様々な家庭の分析も興味深いことばかり。
雇用・家事育児・所得格差なども社会学的な視点でみるとどうなのか、などとても勉強になりました。
備忘録、たっぷり書いちゃいます☆
まずは歴史から。
古代日本の婚姻はゆる~いものだったそうです。
というのも日本は農耕民族なので村落共同体に所属していれば特に夫に頼らなくても妻は食べていけるし、強いリーダーがいなくても労働力さえ確保できれば(子供が増えれば)村は栄えることが出来たからです。なの -
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仕事と家族。
働きづらく、産みづらい。
テーマとして、どちらも大きく人の人生に関わるものでもあり、そのどちらも「しづらい」状況にある今は、とても生きづらいのだろうか。
少子化の要因は、これまでの研究のなかでもいくつか分析されていて、主に以下の3つに分けられる。
・機会費用
・両立困難
・希望水準
女性が出産育児にかかる際に、一時的なキャリア中断が起こることにより、所得が減少するなどの機会コストがかかるため、出産を躊躇する、という説。
共働きフルタイムでの出産育児において、女性が育児休業から復職するにあたって、育児と仕事との両立が困難である、あるいは困難であると予見できるから躊躇する、 -
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結婚の条件がよく整理されていた。
(必須条件・・・共同生活をし、互いに助け合うこと
必須ではない条件・・・性愛関係、生殖)
著者はおそらく同性婚や選択的夫婦別姓には賛成なのだろうが、
これらを法制化する上で解決すべき課題について
その責任の所在が当事者にあるかのような書き方がなされていて
そこが引っかかった。
例えば同性愛者の子供は差別されるかもしれないといった課題は、当事者ではなく社会に非があり、当事者に責任はないと思う。
同じように「選択的夫婦別姓を解決しても子供の名前をどうするかという新たな課題が生じる」と書かれてていた。しかし、"子供の名前をどうするか悩むという問題&qu